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#6 喧嘩上等!(前半)

私が教えている学校は、日本人が通う英会話スクールのようなイメージで、朝から夜まで、いろいろなカリキュラムのレッスンがあります。

通ってくる学生も、時間帯によって、年齢層や性別、職業などの傾向も変わります。例えば、夜は20〜30代くらいの、仕事帰りの人が多く、週に2回ペースのグループレッスンがメインです。

夜のクラスの学生は皆、朝から仕事をしてきた後にも関わらず、まじめに通ってくる人が多くて、本当に尊敬します。(私は、週1回の英会話だって面倒だなと思ってたよ…)

私は、夜は初級の2クラスを担当しているのですが、ある時、その2クラスが人数調整のため、1クラスに合併することになりました。

少人数のグループクラスで心配なのは、学生の日本語レベルのギャップはもちろんなのですが、なんと言っても、学生同士の「相性」です。

やっぱり人間ですから、合う・合わないは必ずあって、会話練習のときに、この二人はペアにしないようにとか、気を遣うこともよくあります。

とは言え、基本的には社会人で大人対応できる人たちなので、私はあまり緊張することはなくなり、クラスを回せるようになっていました。

なので、1つに合併したそのクラスでも、心配するようなことはなさそうだなと安心していました。

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そのクラスには5人くらいの学生がいたのですが、その中に、スイス人の女性・Kさんと、ドイツ人の男性・Aさんがいました。

彼らは英語よりもドイツ語のほうが楽なので、2人で話すときはよくドイツ語を使っていました。

このスイス人のKさんという女性は、なかなかユニークな人で、スイスに住んでいた時からずっと合気道を習っていて、かれこれ10年くらいのキャリアがあるそうです。

「え?10年もやっているんですか!長いですね!」と彼女に言ったら、「いいえ、長くないです。私の師匠は30年です。」とお手本のような答えが返ってきました。

栗毛のお団子、デニムにブルーのボーダーカットソーが似合うパリジェンヌのようなかわいい女性なのですが、彼女の歩き方や姿勢、話し方からは、合気道歴10年の、隠しきれない「押忍感」が漂っていました。

Kさんのキャラを一言で言うなら、「義理人情」とか、「江戸っ子」という言葉がぴったりです。

さて、人数が増えてにぎやかになったのはいいのですが、このクラスは話しが盛り上がると、つい、みんな英語になってしまいます。

でも、英語だったら、私もなんとなく何を話しているのかが理解できるのですが、KさんとAさんの場合は、いつもドイツ語で何やら白熱していました。

さすがにドイツ語となると、2人が何を言っているのか、さっぱりわかりません。でも、Kさんは「江戸っ子」だけに、日本語もクラスの中で一番よくできる人です。Aさんも大人だから、と私はあまり心配していませんでした。

しかし、ある時、この2人の白熱したドイツ語の会話が、ただの議論ではなかったことが分かったのです。

(後半へ続く…)



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