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【新人日本語教師の一人反省会】#1え、何で不機嫌?!

私が最初に担当した授業は、まったく日本語を知らないゼロ初級者向けの、サバイバルジャパニーズのクラスでした。

そのコースでは文法よりも、日常生活で使える便利なフレーズや単語をたくさん覚えてもらいます。

生徒はオーストラリア人の男性とドイツ人の女性で、ふたりとも日本語はまだ話せないので、教師は少し英語も使いながらリードします。

初めの頃はふたりともたくさん質問をして、楽しそうに授業に参加していました。しかし、2週目に入る頃から、少しずつ様子が変わってきたのです。

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というのは、オーストラリア人の男性の方が、例文をリピートしてくれなくなり、単語を覚える練習も退屈そうで、これまたリピートしてくれない。ついには授業中にパソコンを開きはじめ、私の顔も見ない…ということまで。

ひ、ひどい…。私の授業が退屈だから?下手だから?

でも、もうひとりのドイツ人の生徒はちゃんと参加してくれています。彼女の邪魔にならないように、笑顔で彼をたしなめつつ、授業が終わると張っていた気が抜けてヘロヘロになっていました。

しかし、他の曜日を担当している先生の授業レポートを見ると、彼のその態度はどうやら私の授業のときだけではなかったのです。

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ある日のこと。その日は授業が始まる前から彼はかなり不機嫌でした。

そして、日本の美術館では写真を撮らせてくれないよね、という話しになったとき、彼は早口な英語で私に、「違う!外人だからダメなんだ!」と言って怒りはじめてしまいました。(早口過ぎて全部は聞き取れなかったですが…)

もしかしたら、その日、学校に来る前に何か、自分が外国人だからという理由でダメと言われて断られたり、差別された!と思ってしまうようなことがあったのかもしれません。

しかし、授業は始まったばかり。その日にやるべきことはやらなきゃいけない。雰囲気を必死で変えて、なんとかその日の授業を進め、授業後にそのことを報告してみました。

すると、教務担当の先生から、「不機嫌な理由を、休み時間とかに聞いてみるといいですよ。授業のせいなのか、そうじゃないのか聞いてみましょう。」とアドバイスが。

私は不機嫌な理由には触れてはいけないと思っていたので、そうか、聞いてもいいんだと知り、次の授業のときに思い切って聞いてみることにしました。

しかし、たまたま翌日はその教務の先生が担当する日だったので、直接その先生が彼と、もうひとりのドイツ人の学生と話してくれました。

彼が言うには、

「教えられる日本語のフレーズの構造や文法にたくさん疑問があるのに、その疑問が解決しないままフレーズを覚えなくてはいけないのが難しいし、僕にはできない。」

ということだったそうです。

なるほど…。外国語を習うとき、初級者はどうしても外国語をそのまま母国語に訳そうとしてしまいます。

でも、英語と日本語のような、まったく違う言語の場合は毎回すっきりとは訳せません。だから、疑問ばかりが増えていったようです。

そして教える側の私も、英語との対訳を見せて、ほら、簡単でしょ?という印象を残そうとしていたので、余計に彼らを混乱させてしまったのかもしれません。

しかし、びっくりしたのは、その日を境に、彼の態度が激変したのです。モヤモヤを吐き出せてすっきりしたのか、レッスン中はずっとご機嫌で、最初の頃のようにたくさん質問もしてくれるようになりました。

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外国人として日本に暮らす彼らの日常には、私たち日本人が気づかないところで、些細な言葉や態度で傷つけられたり、自分の国ではうまくいくことがうまく行かなかったりと、ストレスフルなことで溢れているんだと思います。

そんな日常のストレスと、レッスンのモヤモヤが相まって、態度に出てしまっていたようです。でも、それが彼からのアラートというか、SOSだったんです。(ちょっとやり方は子供っぽいとは思うけど)

結果的には先輩が解決してくれましたが、教師の仕事はただ教えるだけじゃなくて、生徒の生活や気持ちも想像して寄り添ってあげながら、安心して授業を受けてもらえるようにすることも仕事なのだ、ということを彼から学んだのでした。

ちなみに、問題児?だったこの学生さん、今も(苦戦しつつも)文法が学べるコースで勉強を続けています。

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