「価値はデザインの先にある」常に成果ドリブンなreynato.tokyoの根底にあるもの
reynato.tokyoは、クリエイティブカンパニーでもデザイン会社でもなく、自らを「ブランドスタイラー」と名乗ります。
代表・鈴木謙輔が2014年に創業して以来、これまでデザインを手がけたWebサイトが、世界最大級のデザインアワード「Awwwards」「CSS Design Awards」「CSS WINNER」にて、その日世界で最も優れたWEB サイトに送られる「Sites of the Day(SOTD)」を含む11の賞を受賞してきました。
世界的な賞を受賞しても、大手企業との制作実績が並んでも、これまでreynato.tokyoが何を想い、何にこだわってクライアントと向き合っているのかを、明かすことはありませんでした。
想いを語る場がないということは、コーポレートサイトから受ける印象が「すべて」になってしまう。サイトは言わば、彼らの主戦場です。創造性や技術力を最優先すべき面では、心の柔らかい部分までは、見せるのがなかなか難しい。
公式note1本目となる「自己紹介」を目的とした当記事では、青く光る背景のもっと奥にある、reynato.tokyoの強さも弱さも含めた人間臭さや、純粋に人を想う心まで深く届けたいと思い、筆を取りました。
【interview / writing:ほしゆき】
大きい会社よりも、
“強い会社”であるために
──コーポレートサイトにもありましたが、reynatoさんは「ブランドスタイラー」と名乗っていますよね。あまり聞かない言葉ですが、どういう意味を込めているのでしょうか?
スタイリストが、モデルの個性や特徴を理解して魅力を引き出すのと同じように、僕たちはクライアントをよく知り、独自性・キャラクター・市場におけるポジションなど、深く理解をすることから始めています。
大前提としてブランドの“らしさ”を尊重し、世の中に届く独自のスタイルを見つけて、ブランドの印象をスタイリングするのが僕たちの仕事。その意味を込めて、「ブランドスタイラー」と名乗っています。
──自分たちが何を表現したいか、どうありたいかよりも、「お客さまファースト」な姿勢を感じますね。
reynatoは常に、「成果ドリブン」です。
極論、僕らのしていることはサービス業だと思っていて。一番したくないのは、お客さまにいただいた仕事で「俺らってこんなにかっこいいんだぜ」を表現すること。
かっこいいのは当たり前の基準です。そのうえで、お客さまの求めている成果に繋がらなかったら、僕らの価値ってないですよね。
──鈴木さん自身が、その考え方をずっと大事にされてきたんですか?
そうですね。reynatoがこの姿勢を貫くのは、もともと僕が、ものすごくインサイド・アウト(※)な人間だから。
お客さまや仲間を幸せにできない会社が、「社会を良くする」なんて無理だと思っているんです。
目の前のお客さまに、どれだけいいものを届けられるかが全て。
reynatoは創業から今まで2回の解散を経ているんですが、2019年に今のCOOと会社を組み直すときに、「大きい会社」じゃなくて「強い会社」にしようと決めました。
僕らと関わってくれる人を幸せにしたいと思うとき、必要なのは会社の規模じゃなくて、技術力・影響力・資本力あらゆる力を備えた「強さ」だと思うから。
──どうしてそんなに、「何を表現するか」よりも「何を与えられるか」にこだわるんでしょうか…?
うーん……単純に、これまで本当にたくさんの人に助けられて、存続してきた会社だからですかね。
助けてもらって、与えてもらってここまできたから、今度は僕らがお客さまの成果をつくる、与えられる組織でありたいんです。
学生時代に起業をして、これまで経営を続けてきましたが、事業がうまくいかなくて「もうどうしたらいいかわからない」って場面が……本当に何度もありました。
事業を拡大したい、もっと世の中に届けたい、もっと出来るはず。このステージの一歩先へ行きたい!という一心で、僕自身がなけなしの資金を叩いてリブランディングにお金をかけたり、デザインを一新する決断をしてきました。
もちろん、お客さまが当時の僕らと同じというわけではありませんが、皆さん何かしら打破したい現状があったり、解決したい課題や到達したい未来があって、声をかけてくださっている。
僕らは絶対に、その期待に応えなきゃいけないんです。
自分たちの思う「かっこいい」を主張してどうする?お客さまにとって、reynatoのアウトプットが、消費ではなく投資でなければ意味がない。
いろんな想いがあって、依頼をしてくださってるはずだから。
国内外問わず、さまざまなパートナーとの連携を大事にしているのも、ひとえにお客さまに最適なソリューションを提供するため。多才なクリエイターさんと繋がり続けて、もっと価値を最大化していきたいですね。
大きな失敗と2回の解散を経て、
今のreynato.tokyoがある
──「reynatoは2回解散している」ということですが、事業内容もこれまで大きく変わってきたのでしょうか?
創業当時とは、事業内容はまったく違います。
もともとは、学生イベントのプロデュースをする組織として生まれたんです。その後エンタメ事業を展開していくなかで、動かす人や金額も大きくなり、「reynato.entertainment」という社名で法人化したのが始まりです。2014年かな。
その後、縁があってエンタメ業界から飲食業へもシフトしていて。都内で飲食店を何店舗か運営していました。デジタル領域に参入して、Webデザインやブランディングを主軸にしようと舵を切ったのは、2016年前後。
──飲食もされていたんですね。なぜそこからデジタル領域に?
運営していた都内某所の寿司屋で、大損失を出してしまったのがきっかけです。赤字を補填するために自分の生活費も会社のお金も失い、とにかく皆の労力がすべて返済に流れてしまう状況……それでも足りずに先輩方からお金を借りるようなこともありました。
もう一度やり直そうと思い、寿司屋を売却して飲食業界を離れることにしたんです。このタイミングで、社名も「reynato.tokyo」に変更しました。
もともと僕はデザインが好きで、イベントのフライヤーやお店のロゴを作ったりもしていたので、「まずは自分が稼げる領域で会社を成長させていこう」と考えて、Webデザインの仕事に舵を切りました。
──なるほど。大きな軌道修正だったと思いますが、その後は……
始めてみたら、全っ然稼げなかったですね!(笑)いやぁ、びっくりしました。僕が業界のことを何も知らなかったので、そもそも価格設定を低くしすぎていたり、とにかく頼まれた仕事はなんでも受けていたり、目先のことに囚われてばかりだったので、メンバーも疲弊してしまって……。
うまくいかない要因のひとつには、事業や社名を変えても、先輩や身内から仕事を紹介してもらう“コミュニティービジネス”から抜け出せていないこともありました。
蓋を開けてみたら、売るものが「食」から「ウェブサイト」に変わっただけというか。
──でも最初は業界の知識もコネクションもないですし、コミュニティービジネスから抜け出すのも難しくないですか?
ものすごく難しいですね。当時のreynatoは、会社のメンバーも僕の後輩や友人、身内で構成されていたので特に。
なのでその壁を越えるために、2度目の解散を決めました。COO以外のメンバーとは離れて、各役職で専門性の高い今のメンバーを集めて、会社を組み立て直したんです。今のreynatoがはじまったのは、ここから。
今のメンバーになってから、僕が心から仲間のことを信頼できずにいて、ワンマンで進めていたから会社の成長が止まってしまっていたことを痛感しました。経験と知識不足だったのは、もちろんですが。
創業してから2019年までは、「鈴木商店」のままだったように思います。
──編成後の今は、「日々全員で成長している」という感覚はありますか?
圧倒的にありますね!
僕ひとりではできないことばかりなので、毎日みんなに支えられていますし、僕が間違っていたり、みんなが納得できない時には「それは違うんじゃないの」と、対等に意見を交わすことができます。
「俺が全部やらなきゃ」「この仕事はみんなには頼めない」なんて思うことは、本当にないです。全員が、各々の道でプロフェッショナル。
今では、「個人の可能性を大事にする」というのがreynatoのアイデンティティになっています。
飲食もサイト制作も何もわからなかった、なんの価値も出せなかった僕の面倒を見てくださり、学ばせてくださり、仕事を依頼してくださった方々のおかげで、今もこうして存続できています。
だから次は多くの人に与えられるようになりたいし、そのために会社を諦めず、みんなで強くしてきました。reynatoの原動力は、常にここにあります。
提供したいのは、
デザインの先にある「Wow! moment」
──お客さまファーストであることの他に、reynatoさんが大事にしている思いや、哲学はありますか?
これは、僕が大学生の頃からずっと思っていることなんですが、「Wow! moment(ワオモーメント)」を生み出したいんです。
──Wow! moment…というと?
生活の中での「あれかわいい!」「かっこいい!」っていう、心がときめく瞬間。不意に訪れるその「わお!」を日常に散りばめたいと思っていて。
reynatoは創業当時から、それをどうやって届けていくかをずっと考えているんです。イベントを、飲食を、デザインを通して。
とくに新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからは、あらゆるものがオンラインで完結するようになって、個人の好みに合わせた最適化が加速したことによって、「予想の範疇を超えるときめき」との出会いが減ってしまったように思います。
──たしかに、そうとも言えますね。自分でも気づいていなかった「自分の好み」と出会える瞬間は、減ってしまったのかも。
予想外、偶発的な「わお!」の心の揺れが与えてくれるエネルギーって、すごく人生を豊かにしてくれるものだと思いませんか。新しい何かに触れて、胸が躍る感覚。
それが消費者とクライアントが出会うキッカケになったり、少し主語を大きくすると、日本により良いものが生まれて、増えていくムーブメントの起点になったりする。
僕たちが届けたいのはデザインではなくて、その体験です。つくるものが変わっても、reynato.tokyoの提供価値は、常に体験にある。
まだ具体的にはお話できませんが、今後は東京からより多くの「Wow! moment」を世界に発信していくために、企業にとって最適なソリューションを、ブランディングだけではないビジネスモデルで提供していきたいと考えています。
【reynato.tokyo Corporate website】
Voice:KENSUKE SUZUKI (reynato.tokyo CEO)
Interview / Writing:YUKI HOSHI
Photo:reynato.tokyo
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