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愛くるしい関西弁と薄っぺらなラブソング。


明日は晴れなのかって 気になってしょうがなくて。

当時は”ゆず”や、福岡だと”唄人はね”が人気で
その影響もあり、アコギを片手に朝まで路上ライブをしている男女が
そこかしこに溢れかえっていた。

仕事帰り、地下鉄に向かうコンコースにも
当然何人もの歌い人が、カバーやオリジナルらしき曲を披露していた。

以前書いたように、アパレル最初の職場に馴染めなかった私は
帰宅途中たまに立ち止まっては
歌い手たちが音楽に打ち込む一生懸命な雰囲気を
ぼんやりと眺めていた。


*****


ある日の帰宅途中、路上ライブに聴き入っているお洒落な女性が目に入った。

「へー、何か雰囲気あるなぁ。アパレル業なのかな。」

専門学生で、スタイリスト志望のその女性とはその後仲良くなった。
以前インスタ?で簡単に書いたが、熱量高めで
公衆電話にあった分厚い電話帳で片っ端からスタイリストに電話をかけまくっていた人だ。

そういった理由で、たまたまこの場所に立ち止まったわけだが
今回の主人公は彼女ではない。


話を戻し、その女性がきっかけで
今回の主人公に視線を向ける(知り合う)事となった。

目を向けた先は男女の二人組だった。
女性は私と同い年。ファッションやメイクだけでなくキャラも濃いめで
思った事が直ぐに口に出るタイプ。
椎名林檎をリスペクトしていて、よくカバーしていた。
声量に迫力を感じたのは、この人が初めてだった。

男性のほうは、関西から進学で福岡に来ていたTさん。今回の主人公だ。
華奢でツイストヘアーのゲラゲラ笑う優しい男性だった。
(暫くしてコンビは解散し、Tさん一人で活動を始めた。)

その後Tさんとは意気投合し、ちょこちょこ飯にも連れて行ってくれた。

『ここの玉子焼きがほんま美味いんねん、食べてみ。』
『でもな、本題は玉子焼きやない。この前TVの取材が来てな、撮影後この人(店長)、タレントの〇〇に逆ナンされたんやで。』
『その話めっちゃうけんで。聞きたぁない?』

別日にはお洒落な居酒屋に連れていってくれ、そこで紹介された男女は
『この人ら、見た事ない?』
『あい〇りで、カップルになって帰国した二人やで、○○さんや。』

飯に行くと、かなりの頻度で何かのネタを準備していて
急な振りに「えっ?」と少し戸惑う私を、いつも笑わせてくれた気がする。




「いつものとこで歌ってるわ。」
「今日はあそこで歌ってんで。」
「さっき中州で歌ってたらな、意地汚いおっさんがおってな。。。。」

そんな会話で合流する、普段は意識する事なくスタスタと通り過ぎる場所。
そんな路上が、ライブ中は特別席のように思えてくるから不思議だった。

歌い始めは大半の人が素通りだが
当時だと尾崎豊や、斉藤和義、ゆずなど
多くの人が共感するであろうアーティストの曲をカバーすると
立ち止まり、少し耳を傾ける人も多かった。

なかには自身が思い入れのある曲をリクエストし、お礼を言って帰る人。
「あなたのオリジナル曲を聞かせて欲しい」と興味を持つ人。

歩道に突っ立ったままの人、壁に背をもたれる人。
その場に中腰や、座り込む人。
しかめっ面もいれば、優しい顔をした人、無表情の人。
たまに泣き出しそうな人。

各々が心の隙間を埋めるように
自分への労いや、明日への糧を求めて
その場に立ち止まっていたのだろうか。

色んな人間が立ち止まり、時に会話が生まれる。
そんな様子を眺めるのが好きだった。

夏は心地良い夜風に解放感も高まり
居合わせた聞き手達が持ち寄った
ビールの空き缶や空き瓶で、コンビニの袋はすぐに一杯になった。
あっという間に朝日が昇り始め、夜が短く感じたが
祭りの後に感じる、あの余韻のような感覚に浸りながら帰路についた。

冬の夜は座り込むと、ひんやりと冷たく
コンビニで買ってきたおでんで暖をとった。
肌を刺すような冷たい風には抗わず、澄んだ夜空を見上げながら
 星をください - YouTube を歌いながら、早めに帰路についた。

仕事に追われていた私が現実逃避のように
ただぼーっと眺めていた帰宅途中の風景。
そこは色も匂いもなく、無機質な風景だった。

いつの間にか
いつもの場所となったそこに座り込み臨んだ風景には
しっかりと色も匂いもあった。


*****


いつの頃からか、疎遠になり
最後に会ったのがどんな時で、何を話したのかすら覚えていない。

でもそれはそれで、良いのではないかと思う。

偶然出会い、濃い時間を過ごし
時間の経過と共に、互いに過ぎ去る。

出会いにも別れにも意味があり
案外、別れがもたらす意味のほうが
人生において、何かのきっかけとなる事が多いのかもしれない。
そしてきっとその繰り返しが、人生の醍醐味だと思う。

私にとっては特別な時間だったと実感でき
最後に書くが、影響を受けたと思える事もある。
それだけできっと十分なのだろう。
(縁があればまた出会えるだろうし。)


路上で駆け抜けた時間、その風景から生まれた曲。

『 明日は晴れなのかって、気になってしょうがなくて 』

刹那的だった時間のなか、何曲かあったオリジナル曲のなかで
このワンフレーズだけが心に残っている。
たしかラブソングだった。

Tさんはこの曲をまだ覚えているのか、覚えていないのか。
もしかしたら製作した本人よりも
私のほうが思い入れがあるのかもしれない。

音源も何もなく
当時、何度も聞かせてもらったこの曲を
今はもう聞く術はない。

聞く側の私も10代だったし、Tさんも確か2歳年上くらいだったので
それまでに経験した事を曲にしていたとしても
大人になった今の感覚で聞くと、きっと薄ぺらな曲だ。

しかし、期待や不安を抱えていたあの頃に生まれた
若さ溢れる薄ぺらな曲は、等身大そのもので
もう二度と生まれてこない特別なモノだ。

何かに共感し、どこかに特別感を感じていた無名の曲。
記憶に残るワンフレーズを
懐かしさを感じながら、今もたまに口ずさむ。
うろ覚えなメロディーはあってるのかわからないが
それだけ時間が流れたということだろう。


チェキで撮った写真が1枚だけある
Tさんの家に遊びに行った際に撮ったその写真。
トランクスにTシャツ姿、手にはアコギ。

きっとあの頃以降、活動していないであろう名もなきミュージシャン。

「オシャレはせなあかん。もてたいやん。」

よくそんな事を言ってけど
残ってる写真がこれだけとは。。。




前回に続き、私が影響を受けた人物について書いてみました。

何ていうんですかね、ガチガチにお洒落をしようって感じではなくて
バランス良く雰囲気がある。んー表現が難しいですが
「歌う事に洋服たちが共感している」って感じだったんですよね。

私が服屋の店員という事もあり
ファッション性が第一にくる事が常識だったわけですが

Tさんに関してはファッション性も大事だが
第一にくるのは音楽なので

流行、ブランド、生産地
ディティールや生地感、高い安いではなく

ファッション目線とは違う基準だったんですよね。
ほんと、まんまリアルクローズ、ナチュラルな感じ。

たまに居るでしょ、普通の作業着でもめちゃカッコ良い人。
ざっと言うと、あんな感じです。
(ん、何か違うか。まぁ何となくでも感じとってもらえたら嬉しいです。)

ルールが無い、そのユルイ、ラフな感覚的な部分は
実際に感じとらないと表現が出来ないんですが

この時の経験が、今私が古着で提案する「ダサカッコ良い」にも
影響を与えている、ひとつの要素なのかもしれないです。

さてさて、音楽系でいうとこの頃はHIPHOPが流行り、その後Reggae。
元々好きだったバンド系にプラスされ、色んな事がありました。
親不孝通り、QSやKieth、DRUM系列。
要望があれば、この事かまた別の話を書かせて頂こうと思います。

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駄文を最後まで読んで頂きありがとうございました。

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