白川 烈

物書き/コピーライター。著書に絵本『やさしいて』。「今日のうんち」というエッセイを、た…

白川 烈

物書き/コピーライター。著書に絵本『やさしいて』。「今日のうんち」というエッセイを、たぶん毎日書いています。

マガジン

  • 今日のうんち

    食べたら、でるもの。なにかを食べては、今日も出す。 2018年4月16日よりまいにち更新される、白川烈が書くエッセイです。 クサいときもあるかもしれませんが、それはご愛嬌で。 2020年9月17日以前の記事は、こちらからどうぞ。 https://library.y-pu.jp/kyo-no-unchi/

  • 「えっ」say

    エッセイをまとめてみました。名前はまだない。

  • 絵本『やさしいて』をめぐる旅。

  • 特集

    ぼくが聴き手となり、さまざまな人にインタビューをした特集たちです。不定期に更新されます。

最近の記事

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知らぬはホットケーキ。

「夏は頭上から暑いのに、冬は足元から寒いよね」 高校生だった彼女が、座ったまま唐突に口にした。あの頃、僕らはまだ高校生だった。もう高校生だったのかもしれないし、ちょうど高校生だったのかもしれない。 彼女と会う場所はいつも、彼女の家の下の公園だった。公園といっても、短いベンチとイチョウの木が何本かあるだけのがらんとした広場で、地域の余り物のような場所だった。僕の家から彼女の家が近いわけでもなく、いつも電車で十五分かけて彼女の家の下まで足を運ぶ。今思えば、彼女と彼女の家の下以

    • 平熱のままで

      *先日、久しぶりの友人と会った。彼女と会うのは一年以上ぶりかもしれない。なんだかんだ、21か22くらいからの付き合いになるので、もう8年ほどの月日が流れている。気の置けない、どーでもいい話をうかつに口走ることのできる、大切な友人だ。 彼女が運転する車に乗りながら、町中を走っていると、それはまあ運転の荒い車が現れた。それを見た彼女は「なんなん今の車?頭悪いん?」と独り言をつぶやく。もう8年もの付き合いになるのに、彼女の口の悪さ(好きなところですよ)に気づいたのは、本当に最近の

      • 日没から30分後に閉まる美術館

        *島根旅ですごく好きになった場所が、「島根県立美術館」だ。島根には大きな大きな「宍道湖」という湖があり、その湖に向かって美術館が建てられている。友人が「どこかで夕陽を見よう!」と言ってくれたので、おすすめの場所である島根県立美術館で見ることになった。美術館の敷地がちょうど湖と繋がっており、ちょうど夕陽が沈んでいく様を、館内からも湖からも観れるのだ。期間中の展示や、北斎をはじめとしたコレクション展示も良かったのだけれど、この夕陽にはかなわないくらいだった。 島根県立美術館のH

        • さいきん、怒ったことはなんですか?

          *質問フェチの僕は、メモにさまざまな質問をリストアップしている。会話に困ったりしたら、そこからいくつか引っ張り出して質問したり、ブームのようにハマっている質問を相手に投げかけてみることも多い。その中でも最近ハマっている質問があるのですが、これがおもしろくってね。 その質問とは「さいきん、どんなことに腹が立ちましたか?」だ。「怒りましたか?」でもいい。そんなもったいぶったくせに、全然ふつうの質問じゃねーかよ!って思うでしょうけど、ふつうの質問に行き着いちゃうほど、これは相手が

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        記事

          普通だとか、群れだとかいうこと

          *僕が何かを考えるときに大切にしているポイントのようなものを、ふと思い出した。それは吉本隆明さんがおっしゃっていた「全体のことを考えるときは、中間より少し下の人たちが、どんなふうに考えたり、どんな生活をしているかをきちんと知って考える」みたいなことだったと思う。それはつまり、自分を中心にして考えるのではなく、全体を考える上でのテクニックのようなことだったと思う。 サラリーマンのことを否定したり、働き方がとか、まだ会社に雇われてるの?みたいな、油をそそぐ言い方も一部では流行っ

          普通だとか、群れだとかいうこと

          出雲大社の砂

          *さて、島根県に来ています。たぶん、あるミュージシャンの荷物持ちをしていたころに、一度はライブで来たことあるとは思うんだけど、それにしたってちゃんと訪れるのは初めてじゃないかな、島根。こんにちは、島根。 ただびっくりしたのが、関西からのアクセスです。たしか車で4〜5時間くらいだろうから、電車に乗れば、まあ1〜2時間で着くだろう、とたかを括っていたら、電車でも同じくらい時間がかかるんですよね。でも値段は高くなっちゃうわけですから、渋々バスで(僕はバスが大の苦手なのです)5時間

          出雲大社の砂

          体感速度と年齢

          *よく「時間」というものを考えるための質問として「人生100年生きるとして、それを1日に置き換えたとしたら、今自分は何時ごろか?」みたいなものってありますよね。逆に「1日を人生に置き換えたとしたら、今の時間は何歳か?」というものもあります。なんかどこかで聞いたことのあるような質問でしょう、僕もこれを聞いたときは、考えたことがある気がするなぁ。 ぼくは今年で30歳になるので、24時間で換算すると、まだ朝の7時〜8時の間くらいなんですよね。そう考えるとすごいでしょう、もう30歳

          体感速度と年齢

          自分で掴んだものしか残らない

          *20歳前後の頃、当時お世話になっていた、全身タトゥーまみれのラッパーの先輩に口酸っぱく言われていたのは「自分で掴んだものしか残らない」という言葉だった。 本を読んだり、映画を見たり、話を聞いたり、何でもいいけれどその中で金言のようなものや、心に響くような考え方を見つけることはできる。できるが、それはあくまで「見つかった」だけで、つまり眼で見えているのだから自分ではない、自分の一部ではないのだと。それを自分の一部かのように扱ってしまうと、そりゃあおかしなことになるよ、と。借

          自分で掴んだものしか残らない

          ぬいぐるみが好きな人

          *昨日はあまがさきキューズモールという商業施設で、企画した「ぬいぐるみドリーム!」というぬいぐるみのイベントでした。人通りの多い商業施設の広場に、ぬいぐるみが数百もの数並んで、それはそれは眼福の光景。可愛いって、本当に幸せですよねえ。 数百ものぬいぐるみの展示販売だけでなく、ぬいぐるみ作家さんをお呼びして、ワークショップもいくつか行われてました。これが良かったし、ぬいぐるみ作家さん、みんな素敵な人だったなぁ。誰かが困っていたらスッとみんなボランティアのように助けに行って、人

          ぬいぐるみが好きな人

          顧客満足度は前提なのである

          *僕はボードゲームが好きで、月に二度ほど、友人たちと集まってはさまざまなゲームで遊んでいる。ゲームによっては脳みその使う部分が違ったり、メンツによっても面白さが変わってくるので、毎回新鮮な面白さがある。 ボードゲームをやったからといって頭が良くなるとは思わないが、柔らかくはなるだろうなぁと感じているし、何より慣れてくると、日常のさまざまなことに「ゲーム性」を付与して遊ぶことができるのにも気付く。ラグビー選手が、レスリングから相手の倒し方の教えを乞うように、違う体験をすること

          顧客満足度は前提なのである

          桜井家砂をかけた気持ち

          *手伝っている会社の後輩が、資料を改ざんしてあるのを目の前で見てしまった。クラウド化されている資料はリンクさえ知っていれば誰でも編集できる。極端なことを言ってしまえば、後から見積額を変更することだって可能だ(もちろん、ちゃんと調べればバレるのだが)。 ある会議で、言った言わないの水掛け論になっていたとき、資料を確認しようという流れになるのを見越したのか、後輩は水掛け論の最中にその資料を先んじて開き、言い合っている内容の一文を消した。僕も先んじて、そのファイルを確認しようとし

          桜井家砂をかけた気持ち

          朝の電車

          *朝、珍しく電車に乗っている。通勤ラッシュの時間は過ぎているので、車内はほどよく空いている。前には妙齢の女性が三人、横並びで座っている。ふたりがぺちゃくちゃとおしゃべりし、もうひとりは静かに目を閉じている。友人でこれからお茶でもしに行くのかな、などと考えながらふと足元を見ると、三人ともスニーカーが一緒で、色違いのものを履いていた。三姉妹だろうか、と思う。久しぶりに三姉妹集まってお茶でも、などと考えていたところ、目を瞑っていた女性がサッと立ち上がり降りた。 ちょうどその女性と

          朝の電車

          写真を撮ること

          *どうやら世間では黄金週間なるものが始まっているらしい。フリーランスとは名ばかりの万年社畜のような自分には関係のない出来事すぎて、ついさっきまで忘れていた。町に出ると、どこもかしこも人で溢れている。空高くから見下ろすまでもない、人がゴミのようだ。蠢く大量のゴミたちだ。そして自分もその一部である。 夕方ごろからは中之島美術館で行われている「モネ展」へと向かった。スケジュール的に今日しか行ける日がなかったからだが、美術館に来てようやく、その人の多さに気付く。恐るべし黄金週間。閉

          写真を撮ること

          自分が自覚してない感情には気付けない

          *「自分が自覚していない感情には気付けない」と、会議中に誰かが言った言葉がものすごく印象に残っている。いや、本当にそうだよなぁと思うんですよ。「自分が自覚していない感情」、つまり知らない言葉は話せないようなことだよね。「怒り」という感情を知らなければ、その人が「怒っている」ことに気付けない、みたいなことだよなぁ。 「自分が自覚していない感情には気付けない」、この言葉は何も他人に対して気付けるかどうかだけでなく、そもそも「自分」に対しても言えるわけでさ。自分の抱えている、感じ

          自分が自覚してない感情には気付けない

          いつだって若い人たちが

          *大人ってそんな偉いもんかね。学生に「これが大人の社会だ!」て言ってくる大人って、俺たちが学生の頃いちばんウザかった大人じゃなかったかね。経験や知識ってそんな偉いもんかね。それでしかマウント取れない大人って、大人のネガティブキャンペーンじゃないのかね。僕はいつだって先輩からより後輩から「おもしろいことしません?」て誘われたい。新しい時代とか、新しいものをつくるのは、いつだって若い人たちだからだ。その積み重ねが、歴史なはずなんだもん。 …とまあ、愚痴みたいに書いてしまいました

          いつだって若い人たちが

          半袖着る人着ない人

          *そろそろ夏に向けて気温が上がってくると、人々の衣服がだんだん薄くなってきて、だんだん布面積が減ってきます。肌の露出が増えると、心の露出も比例して増えると思ってるんだけど、これはどうなのかなぁ。そーゆー研究、ありそうだよなぁ。夏ほど恋の多い季節はないような気もするし、その果てが「裸の付き合い」という、お風呂を共にする行為のようにも思うのです。 いや、そんなことが書きたかったわけではない。夏が近付くと、きっと君の周りで、こんなことを言うやつが増えます。「世の中には2種類いる。

          半袖着る人着ない人