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気になる箱根駅伝③ ラスト3kmの絞り出し

もうだいぶ時間が経過してしまったが、今年の箱根駅伝についてはもう一つ書きたかったことがある。それはラスト3kmの絞り出しについてだ。1区間20km以上を走る箱根駅伝で、ラストにペースを上げることは容易でない。そもそもラストを上げられるくらい余裕のあるペースでそれまで走っていないはずだ。①で紹介した青山学院の高橋選手はそうだが、ラスト3kmをものすごいペースで駆け抜けた選手が他にもいた。

1人目は太田蒼生選手(青山学院1年)である。3区のラスト3.3kmをキロ2'46"平均で走破している。それまでもずっと3分を切るペース(最初の7.6kmは下り基調とはいえキロ2'46"平均である)で押してきているのに、最後もこれだけのペースで来ている。ほとんどの選手がその前の定点間よりもペースを上げているため絞り出しやすいところなのかもしれないが、キロ2'50"を切っているのは太田選手ただ一人である。18km地点であれだけ笑みを浮かべていたのは、本当に調子が良くて余裕があったからなのであろう。

3区区間タイムと湘南大橋~平塚中継所(3.3km)のタイム

2人目は中村唯翔選手(青山学院3年)である。こちらは9区の記録を塗り替えてMVPを獲得したのだが、それに違わぬ走りであった。ラスト3.0kmがキロ2'51"平均である。9区は2区同様、全区間で最長距離である。中村選手の凄かったところは、すべての定点間でキロ3分を切り、さらにラスト3kmが最も速いラップを刻んだ点である。前半からかなり攻めた走りをしているなとは思って観ていたが、本当に攻めていたのはTVカメラにあまり映ることのなかったラスト3kmだったのである。ちなみにラスト3kmをキロ2'55"以下のペースで走ったのは他に、湯浅選手(中央2年)、田尻選手(駿河台4年)、山野選手(駒澤3年)の3名である。すべての選手が紙一重のところにいるが、なんとも分厚い紙一重なのだなと記録を見てみると改めて実感する。

9区区間タイムと生麦~鶴見中継所(3.0km)のタイム

こうしてみると、青山学院の選手たちの安定感、いや安定を超えた好走が目立つ。20㎞をトータルで戦える選手を10人揃えたからこそ、あれほど大差での優勝があったのだろう。終盤までブレないフォームは、新生青トレの効果が最も出たところなのかと推察する。

ラストの絞り出しは、日々の練習の賜物である。1年間じっくりと準備してきたからこそ成せる業であり、選手たちの努力には本当に頭の下がる思いだ。今回、思い通り走れなかった選手も来年はリベンジがあるかもしれない。その時は1年でどれくらい変わったのかを眺めてみるのもファンとしては面白いことだろう。

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