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気になる箱根駅伝① 青山学院・髙橋選手の走りから学ぶこと

箱根駅伝をテレビで観戦しているとわかることだが、日本テレビは各定点での記録を取っている。その数は区間によって異なるが、このデータを眺めていくと面白いことがわかる。区間記録は最終的なものであるが、そこに至るまでのプロセスというか、走った軌跡がわかるのである。

これらのデータを使って、各定点間のタイムをExcelでまとめ直した。このデータを作っておくと、来年以降の観戦がぐっと面白くなるので、ここ数年はガリガリとExcelに打ち込んでいる。気になった順に紹介していくこととするので、今日は6区を見ていくことにする。

どうして6区が気になったかというと、青山学院の髙橋選手(4年)が走り終わった後、そして優勝インタビューの時に涙ぐんでいたからだ。優勝したからいいじゃないかと多くの人は思っただろうが、区間8位の走りで、区間賞を取って優勝に向けて勢いづけようと思った本人からしたら、チームに迷惑を掛けたという思いが込み上げてきて、どうしようもなくなってしまったのだろう。

しかし、自分はテレビを見ていて思った。途中、区間下位に沈んでいたことから比べると、最終的に区間8位まで戻している。そして、箱根山中で詰められた差が小田原中継所ではほとんど消えているではないか、と。では、実際のタイムの変遷はどうだったのだろうか。

最初に示すのは下りが終わった時点、函嶺洞門(17.0km)での成績である。髙橋選手はこの時点で区間14位。区間トップの牧瀬選手(順天堂4)には1分18秒、佃選手(駒澤4)には40秒、芦ノ湖スタートから差を詰められている。このまま残り3kmに突入してしまうと、この差がさらに詰められるのではないかと思ってしまう。

函嶺洞門(17.0km)通過時点での走行タイム一覧

では、ラスト3.8kmで何が起こったかを見てみよう。一目瞭然、この定点間で髙橋選手はぶっちぎりトップのタイム(10分34秒)で走破している。しかも、そのペースは2'47"/kmなのである。普通ならば山から下りてきたダメージが蓄積し、緩やかに下っているにも関わらず、登りのように感じるという路である。それを1キロ2分50秒を切って走ったのだから、恐れ入る。ちなみに髙橋選手は前回もこの定点間を区間トップで走っており、10分32秒である。調子が出なかった今回とあまり変わらない。この定点間の2位は九嶋選手(東洋2)だが、3.8kmで18秒の差を付けている。1キロ5秒もペースが違うとなると全く異なるスピード感であることが想像付く。ちなみに先ほど挙げた牧瀬選手には37秒、佃選手には30秒の差を逆に付けた。借金返済をこの3.8kmで成し遂げたのだ。ちなみに最終的に区間3位に入った小泉選手(駿河台3)は、この定点間でも非常によく振り絞ったことがわかる。初めての箱根で山対策も難しかっただろうが、この走りにはとても驚くばかりだ。

函嶺洞門~小田原中継所間(3.8km)の走行タイム一覧

こうした視点を持って最終的な区間順位を眺めてみると、また違ったように見えるのではないか。上に挙げた選手以外にも、杉本選手(明治3)も良く絞り出したんだなとか、最初良かった選手も辛くてラストで力尽きたんだなとか、色々と思うことがある。

6区区間成績

スポーツなので結果が全てかもしれないが、そこに至るまでのプロセスは非常に大切であると個人的には思う。殊、学生スポーツでは尚更。自分自身が期待した・周りに期待された、そういった走りではなかったかもしれない。しかし、ラスト3.8kmでの絞り出しが無かったら、7区以降の展開は全く変わったものになった可能性だってある。あのスピードで襷を渡された7区の岸本選手にその勢いが伝わったと思うのだ。それだけに非常に大切なラスト3.8kmだったのである。

優勝に貢献したメンバーを責める人など誰もいないと思うが、どうか髙橋選手には胸を張って卒業してほしいと、一人の陸上競技ファンとして思う。どんな状況下に置かれても、その時に出来るベストを尽くす。今回の髙橋選手の走りから、そんなことを学べるのではないだろうか。

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