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気になる箱根駅伝② 後半を制す者、2区を制す

前回は6区について取り上げたが、今日は2区の話をすることにする。タイムをまとめていくと、2区の選手たちのハイレベルさが改めてよくわかる。如何せん、ほとんどの選手がキロ3分を切って23.1kmを走り切っている。権太坂、戸塚の壁、ラストの上りがある難コースなのに、このスピード感である。エース区間では特にごまかしが利かない。

最終的には、田澤選手(駒澤3)が区間賞を獲得した。1:06'13で歴代4位の好タイムだった。競った展開ではなく、ほとんど一人で走ってこのタイムである。1区で区間賞を獲得した吉居選手(中央2)と同様、相当力がないとできない。来年、留学生と競れば、ヴィンセント選手の出した記録の更新も夢ではないかもしれない。

今回注目したいのは権太坂(15.2km地点)~戸塚中継所(23.1km地点)にかけての7.9kmである。2区の名所は権太坂だが、ある意味、2区はここから始まるといってもよい。多くの選手は権太坂まではハイペースで飛ばしても何とかなっている。しかし、ここからの8キロ弱でペースを維持できる選手、落とす選手が分かれてくる。この7.9km間で比べた順位は以下の通りである。上から、ライモイ・ヴィンセント選手(国士館4)、中村選手(帝京4)、ムルワ選手(創価3)である。3人ともペースとしては1キロ2分55秒平均でこの区間を駆け抜けている。

この3人に共通すること、それは、この前の定点である横浜駅前(8.2km)地点から、ペースが全く変わっていないのである。中村選手に至っては2分53秒(0~8.2km)→2分55秒(8.2~15.2km)→2分55秒(15.2~23.1km)と、最初からペースを守って走っていたのだ。横浜駅からのペースが変わっていないのは、他に松山選手(東洋2)と伊地知選手(國學院2)がいる。もっとも、イエゴン・ヴィンセント選手(東京国際3)は逆にペースが上がっているのだが…。終盤までペースを落とさずにキロ2分55秒程度で走ると区間順位が上位に来るということになる。ラスト3kmの坂を考えるとペースを維持するというよりペースアップしているといっていい。それくらいの走りをしないと2区では戦えないということになるのだ。

権太坂~戸塚中継所間のタイム及びペース一覧

もちろんトータルで見れば区間賞の田澤選手の走りはすごいのだが、後半に(実質)ペースアップした選手は2区についてしっかり対策を練ってきたのだと思う。留学生の間に割って入った中村選手は、持ちタイム以上の価値ある走りをした。この走りが帝京の往路2位にかなり貢献しただろう。星選手が卒業して帝京は2区をどうするんだろうなと思っていたが、その星選手以上に走れる選手を育成した中野監督の手腕は本当にすごい。

また、個人的にはオニエゴ選手(山梨学院4)の健闘ぶりも称えたい。高校生にも負けるくらいのタイムだったオニエゴ選手が4年間かけて、ついに6分台で2区を走ったのだ。山梨学院の2区としては最強留学生といわれたモグス選手に次ぐタイムである。最弱の留学生が、エース区間で貯金を作れる選手に成長した。誰でもやればできるんだということを教えてくれる。

田澤選手、ムルワ選手、イエゴン・ヴィンセント選手は3年生で来年もある。特にヴィンセント選手は今年田澤選手に負けたので、来年はチャレンジャーのつもりで来るだろう。そうすると、来年の2区は今年以上にヒートアップしそうである。6分台ですごいと、もて囃された時代から、5分台の戦いへと時代は転換している。駅伝レース高速化の流れを感じた今年の2区であった。

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