見出し画像

神去なあなあ夜話

前作を読んでからだいぶ時間が経ってしまったが、続編を読み終えた。横浜から半ば強制的に就職させられた主人公が仕事である林業や共に生きる神去村の住人によって成長していく話。

本作はずっと主人公の一人称で、つまり主人公の視点で語られる。だから、読者は主人公を体験を追随できるようになっているのだが、おそらくこのやり方は結構難しい。なにせ、主人公が魅力的でないといけない。

それに加えて神去村という閉じられた地域で起こっていることである。目新しいことが起こっているわけでなく、どちらかというと村の過去からの伝承をもとに話が作られているのだが、日本古来から伝わる話をちゃんと交えている。その辺の種明かしは、巻末の解説でわかるのだが、三浦しをんさんのカバー範囲の凄さを否が応でも感じてしまう。

話は変わるが、最近「ジョジョシリーズ」にハマっている。なにをいまさら…という感じだが、今年はアニメが始まって10周年の年なのだ。それはたまたまなのだが、Netflixで見始めて以来、ハマってしまったのだ。作者の荒木飛呂彦さんは、キャラクターの細部の設定をよく考えている。だから、キャラクターが勝手に動いていくタイプの漫画家と思われるが、たまに設定した敵が強すぎて、「どうやって倒すんだ、これ・・・」という状態になるらしい。

この神去なあなあ日常シリーズでも、各キャラクター設定がしっかりしている。きっと、小説に書かれていないことまで丁寧に設定が考えられているのだろう。だからこそ、キャラクターが生き生きとしているし、魅力的に映る。その下準備があればこその、各話の展開なのかなと思う。

そして人の魅力というのは短所があって初めて成り立つ。長所ばかりの人間には共感もしにくい。実はこれって、小説の中だけじゃなくて現実社会も一緒なのでは?そんなことを思わせてくれる、神去シリーズである。

この記事が参加している募集

#読書感想文

191,457件

よろしければサポートをお願い致します。頂いたサポートは新しいことを生み出すための活動に使用させていただきます。