見出し画像

自立すること

著者は、大丸の改革を行った経営者である。オーストラリア勤務、大丸改革、札幌への出店。本のボリュームからして、相当に色んなことをやっている。

大丸というのは昔から人事や組織の改革が好きで、頻繁に人事制度を変えたり、組織を変えたりしていたのです。けれど、どんなにいろいろな工夫をしても当時はまったく根づきませんでした。それは社員が自分の持ち場でどんな仕事をすべきかという職務分担ができていなかったためです。(中略)その点、今回の人事制度改革ではそれぞれの職場で職務記述書を作成し、その仕事に求められる人物像や能力、スキルを明確に示しました。(中略)これに合わせるように人事の処遇や規定、組織や制度も変えないと矛盾が出てしまいます。

何かを変えるにもどこから変えたらよいか、最初の一手は難しいものである。この場合は、職務記述書の作成がその後の流れを決めたのだろう。まずは、現状を明確に表現する。何かを変えるのは、それができてからだ。

日本が従来掲げてきた「メンバーシップ型」から脱却し、「ジョブ型」に移行した例がこの先で出てくる。最終的には売上高人件費比率が11%から7%台まで減らしたのだから、いかに上のほうで人件費が高止まっていたかがわかる。客観的な書き方をしているが「仕事をしていないものは去れ」と、暗に言われているのであろう。

こうした改革は、かなりの反発を生むはずだ。今までと同じことをしているはずなのに、急にあなたの仕事は価値がないと言われているようなものだ。誰しもに言い分はある。しかし、本当に仕事を行っている人を評価するような仕組みにしなければならないので、人事制度の改革にはトップの意思が必須である。だから「言い続けること」の価値も説いている。少し言ったくらいでは、組織は変われない。一人の人間ですら、同じだろう。大事なことは何度でも言い続ける。

本の最後に、企業改革で著者が社員に求めているのは「社員一人ひとりが自立すること」だと言っている。資本主義の基本は自主自立。今までは自分の将来のルートは会社が決めるものだったが、変化の激しい現代はそうでない。

ワークマンの経営者も同じようなことを言っていた。いかに社員全員を経営に巻き込むか。上の人に従っていればいいやという時代はとっくに終わっているのである。

#読書感想文

この記事が参加している募集

よろしければサポートをお願い致します。頂いたサポートは新しいことを生み出すための活動に使用させていただきます。