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【投書】「休校策に見る自治体の心」(2021-06-23 山形新聞)

 昨年春の安倍政権による「一斉休校ショック」から一年余りが経った。
 大多数の自治体が無理を押して国の要請どおりに休校した一方で、茨城県つくば市をはじめとした一部自治体は、子どもたちと家庭の実情に基づき、児童・生徒の学校での受け入れを続け、希望に応じ給食を提供するなどの策を講じた。この差はなぜ生じたのか。改めて考えたい。

 つくば市長は、40代で子育て中の父親である。加えてつくば市は、宅地開発と子育て支援政策などの充実により、都心から移住する現役世代が多い。常に子育てや教育の当事者を考慮した自治体経営を行ってきたからこそ、家庭の実情に沿った策をとれたものと思う。
 他方、多くの自治体の首長は高齢者である。支持するのも高齢者で、取り巻く幹部も60歳に近いはずだ。休校が現代の親子に及ぼす影響がピンとこなかったのではないか。普段は「子育て支援」をうたいながら、ろくに段取りも踏まず休校して家庭に無理を強いたというのは、ご都合主義に他ならない。

 この一件で、各自治体が真に住民の暮らしを考慮しているか、そうでなく役所の都合や感覚を住民に押し付けるかが明らかになった。もはや過去のこと、当時は仕方なかった、などとして水に流さず、各自治体は、あのとき本来どうすべきだったのか冷静に検証し反省しなければならない。

〔2021年6月23日〕

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