生活と投資の心理会計。
証券口座の現金残高はゲーム内通貨?
ここ数日、3月決算の会社の中間決算が公表されるタイミングで、世界情勢が不安定で為替がここ20年位の感覚からすると異常値であることも相まって、先行指数で期待やリスク回避などを織り込んでいる株価が、予想外の決算内容でプラスやマイナス方向に大きく動く時期となっている。
私は幸いなことに、現時点ではサプライズ決算によって続伸した銘柄のみ保有していて、マイナスインパクトで大きく売られるような銘柄には当たっていないことから、相場全体が弱気で微減している大多数の銘柄の減少分よりも、特別気配で上昇した分の貢献度合いが大きく、ポートフォリオ全体で見れば、含み益が微増で推移している。
とは言え、ボラティリティが高い状態で推移している、比較的神経質な展開であることに変わりはなく、米国株の煽りを受けて無限ヨコヨコでお馴染みの日本株でも、大した材料がない日に2~3%の変動を伴う日は珍しくない。
そうなると、仮に1,000万円を運用しているなら、2%変動するだけでも時価総額で20万円増減する訳で、周辺的正社員と揶揄されてもぐうの音も出ないような、人生史上で月給の手取り賃金が20万円を超えた試しが片手で数えられる程度しかない身としては、1日で月給以上の時価総額が変動するような状況に、逐一反応しているようでは身がもたないのは、誰の目から見ても明白である。
私が以前から何回にもわたって、少額から徐々に投資を始めて経験を積むことが、目先の損得以上の価値を持つと伝えているのは、投資に慣れることで生活費として使用する日本円と、証券口座の現金残高に表示されている日本円が、全く別物として区別する心理会計が無意識のうちに形成されて、ゲーム内通貨が増減した程度の感覚で受け止められるようになった経験があるからである。
動揺する時点で投資ではなく博打。
サンプル数が自分ひとりのため、再現性があるかは定かでないが、億トレーダーのインフルエンサー方が似たような感覚で、平然と億単位の取引であっても、数%増減は誤差の範囲で動じなくなり、狼狽売りとは無縁であることからも、冷静さを保つために心理会計の分離が必要な要素であるのは間違いないだろう。
少なくとも、カイジの世界観の様な極限の心理状態でフルベットするよりも期待値は高いだろうし、退職金を元手にいきなり大金を運用し始める人が高確率で失敗に終わり、せっかくの退職金を目減りさせてしまうのは、カイジの状態に近いからだと推察している。
これは行動経済学のプロスペクト理論によって、人は感情によって、非合理的な行動を取ることが証明されている。
確実な利益が手にできる場合、期待値以下の割引率であってもリスクを回避する一方で、損失を回避する為なら期待値以上にリスクテイクする傾向にあり、本来であれば利益を最大化するためにリスクテイクを行なって、損失を最小化する為に確実性を取らなければ損小利大にならない。
個人投資家の9割が負けると揶揄されるのも、証券口座の時価総額を、生活のお財布感覚で考えてしまい、感情が揺さぶられることで、非合理的な選択を取ってしまうからではないだろうか。
多少の増減でも動揺するような金額を、元本が保証されない資産で運用している時点で、感覚としては博打と変わらないのだから、一日中時価総額の変動が気になる状態であれば、自身のリスク許容度に見合わない運用をしている何よりの証拠である。
心理会計を制した者が、複利の恩恵を受ける。
私は同世代比でリスク許容度が高いのは、何としてでも億万長者になると言った、ギラギラ感とは無縁な性格から、短期で一攫千金を狙うのではなく、長期で経済成長と複利の恩恵に預かれれば、凡人な自分には十分過ぎるリターンだと思っており、急いでお金を増やすつもりがないこと。
安定した低空飛行とはいえ給与所得があり、少ない支出で生活できるスキルを持ち合わせていることから、平均的な年収にも関わらず、同じ属性の他人と比べて証券口座への入金力が高いこと。単身者で負債なしと、何ひとつ責任が伴う足枷がない社会的属性も多いに関係していると思う。
そして何より、最初に3万円から運用を開始して、30万円、100万円、300万円、500万円…と何年もの時間をかけて、運用規模を徐々に大きくして、歴史的な下落局面も何度か経験したことで、リスク資産を運用するための心理会計が身についた影響が最も大きい。
だからこそ、家賃込みで月6万円ほどの生活費用の、何百倍もの資産を運用するようになったところで、変わらずのローテンションで、保有している有価証券は昨日と同じなのに、今日は数十万単位で数値が増減したらしい。時価ってなんていい加減な情報なんだとボヤいては、毎月カードで上限の5万円を淡々と積み立てたり、気になる個別銘柄をゲーム感覚でスポット買いして、数十万円単位の現金を有価証券に変えては実利を得ている。
一方で、スーパーの目玉商品やクーポン、割引シールを活用して、1円たりとも損をしないようにしたり、定期的に決まった額が引き落とされる携帯電話、インフラ、保険、サブスクなどの固定費は、必要最小限で無駄のない契約を心掛け、何にいくら使っているかも1円単位で把握している。
価格以上の価値を感じないものには、どれほど安くても身銭を切らない人間が、有価証券での売買では頭と尻尾はくれてやれと、天井や底値での売買に拘らずに、数千円単位で妥協するのだから、一見矛盾しているようにも感じられるが、心の財布が違うだけである。
日常の外食費はお金を掛けても何も残らないため、少しでも費用を切り詰めたい心理が働くが、特別な日や旅行先、娯楽施設での外食費は予算が普段の何倍も違ったり、割高なオプションも気前よく頼める現象と本質的には同じであり、心理会計を制した者が、たとえ大金を動かす状況でも冷静さを保ち、合理的な判断を下せるようになり、複利の恩恵を受けるのだろう。
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