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源泉徴収票の見方から、給与の半分近くが税金と社会保険料の嘘を暴く。


リテラシーが低いと煽られる。

 先日、ツイッターに #給与の半分近く がトレンド入りしていたため、金融リテラシーの低い人たちの無知に漬け込み、年金や社会保障の増大を膨張表現することで、PVを稼ぎたいだけのクソ記事だろうと思いながらリンク先に飛んだら案の定だった。

 私の直感では、現代日本の一般的な会社員の所得であれば、税金と社会保険料を合わせてもせいぜい2割ほどで、現状が既に五公五民のネオ江戸時代と揶揄するのは暴論に思えてしまうが、これだけでは私はこう思うの文系の域を出ないため、理系っぽく数字で割合を求めていく。

年収400万円会社員の負担税額を算出。

単身者の場合。一部簡略化しています。
住宅ローン控除が税額控除のため、厳密には違います。

①源泉徴収票の支払い金額

 仮に月給25万円。ボーナスが年2回で計4ヶ月分が支給されている単身の会社員であれば年収は400万円で、源泉徴収票の給与・賞与欄の”支払い金額”に記載されている。

②給与所得控除後の金額

 そこからまず、給与所得控除として400万円の20%である80万円に44万円を足した124万円が年収から差し引かれた276万円が、”給与所得控除後の金額”となる。

③所得控除の額の合計額

 ”所得控除の額の合計額”は、基礎控除の48万円と、下段に記載されている社会保険料等の金額、生命保険料や地震保険料の控除額、人によっては扶養控除や配偶者控除を合計した数字となっている。

 今回の前提条件の場合、社会保険や年金保険の等級は、標準報酬月額26万円となり、保険料は東京都であれば会社と折半で年金が月23,790円、社会保険が介護保険込みで月15,132円。ボーナス2回分で14掛けすると、年金は年間で333,060円、社会保険料は年間で211,848円となるから、生命保険などの控除がなければ基礎控除と合計した1,024,908円と記載される計算になる。

④源泉徴収額

 ここまで来て、ようやく税金を確定させるための課税所得が求められる。可処分所得は左から二番目の数字から、左から三番目の数字を引くだけで求められるから、276万円から1,024,908円を差し引いた1,735,092円が課税所得となる。

 課税所得によって所得税は5〜45%と変動する。年収が400万円だから330万円より上〜695万円以下のレンジである20%と誤解されがちだが、実は年収400万円であっても課税所得は173万円と、5%ライン上限の195万円にすら届かない。

 よって1,735,092円に5%を乗じて86,754円の端数が切り捨てられた86,000円が"源泉徴収額"として記載される運びになる。

 ③で触れていない住宅ローン控除は税額控除のため厳密には、
(②−③)×所得税率−税額(住宅ローン)控除=④になるが、FP2級レベルの論点で説明が複雑怪奇となるため、住宅ローンを組んでいない前提で簡略化している。そのため厳密には冒頭の図は、自作しておきながら正確ではない。

住民税は別枠。

 源泉徴収票で課税所得を求め、所得税が割り出せたら、最後は住民税。住民税は一律で10%とされているから、1,735,092円に10%を乗じた173,509円の端数切り捨てで173,500円が年間納付額となるだろう。

結局、何%が税金や社会保険料?

 ここまでネチネチと役所が行うような計算を行ってきたが、ここまでしないと税率や社会保険料の納付額が確定できない仕組みになっているのだから、いかに無知から搾取するための複雑怪奇な構造となっているかが伝わると思う。

 税金は所得税が86,000円、住民税が173,500円。年金は333,060円。健康保険料は211,848円。合計804,408円。年収400万円に占める国民負担割合は20.1%となり、私の直感であるせいぜい2割が正しい結果となった。

 SNS上で税金などが半分以上取られていると嘆いている人は、きっと課税所得4,000万円超の国民の上位コンマ数%の超高所得者なのだろう。

 年収400万円のしがない会社員の感覚が、200万円の税金と社会保険料を負担している理屈ならば、天引きでまだ負担していない120万円を、可処分所得であるおよそ320万円で消費する範囲から徴収することになる。

 割合にして可処分所得の37.5%に相当するが、これを消費税、酒税、タバコ税、自動車税、ガソリン税、固定資産税などの諸々で、掠め取るのが現実的でないのは明らかだろう。

自分の頭で考える。

 手取りが増えない中、物価高や社会保険料が上昇し続けることで可処分所得が減少傾向にある点は、紛れもない事実であり共感する。

 しかし、金融リテラシーを持ち合わせていなければ、日本人は半分税金のために生きていて政府のATMであると言う根拠の乏しい誤った表現に煽られてしまう。

 その結論として愚痴ろう、自民公明には投票しないようにしようなどの、有権者の大多数が年金受給者で、シルバーデモクラシーな日本社会で、果たして選挙そのものが有用なのかすら怪しい中での対抗策を、鵜呑みにしてしまうのは危険だと思う。

 それよりも、個人的には年金保険料の料率改定に国会の議決が必要ない構造によって、国民年金の赤字補填のために厚生年金の財源が流用され、結果として厚生年金が払い損となる点や、我々の銀行預金が回り回って赤字国債の発行につながり、将来世代に借金を押し付けていることの方が問題だと感じる。後者は銀行預金を減らすことが、赤字国債の買い手を減らすことにつながると考えているため、私は決済用資金を除き、証券口座に現金を集約している。

 某政治アナリストが、「数字は嘘をつかないが、嘘つきは数字を使う」と名言を残しているように、給与の半分近くが税金や、国民負担率48%という数字に根拠はあるのか疑って然るべきだし、本記事も鵜呑みにはせず、ロジックが妥当かは自身で判断していただきたい。

 とはいえ、国民全員が私のように、経理や総務の担当でもないクセにガチガチに理詰めして、1円単位で正誤を確認するようになる社会は流石に阿鼻叫喚なので、細かく突き詰める必要性は感じていない。

 それでも大枠を掴み、分からない部分はクリティカルシンキングとフェルミ推定の合わせ技を駆使することで、相手の主張が妥当か否かを、即興で概算して判断することは十分可能で、やはり何事も自分の頭で考えた上で、物事を判断することが重要である。

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