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思考停止にさせる同調圧力。

沼らないために、最初が肝心。

 先日、昔の知り合いから某SNSアプリをやっているかと尋ねられた。恐らくKDDIを筆頭に3G回線が停波する過渡期で、ガラケーからスマホに変えたのだろう。

 だがしかし、私は日本で最も普及しているであろう某アプリを使った試しがないレアキャラ的存在であるため、某アプリを使っていないと答えると、高確率でどうやって連絡を取れば良いのか分からなくなる人間が大多数である。

 スマホネイティブ世代ならともかく、私と同じか、それよりも上の世代であれば、ガラケー全盛期やスマホに移行する過渡期を経験しているのだから、たかだかひとつのアプリを入れていない位で、なぜパニック同然の状態に陥るのか理解に苦しむ。

 別にそれを見て楽しむ悪趣味はないものの、セキュリティの懸念材料や、通知で集中力を阻害されたくなかったり、比較的どうでも良いようなやり取りに時間を浪費したり、人間関係を気にして神経をすり減らす位なら、初めからやらなければ良いだけだと思っており、自身を守るひとつの手段として、それを実行しているまでである。

 しかし、同調圧力の強い日本社会では、それができたら苦労しない人で溢れかえっている実情も理解はしている。

 これは、個人的にはサブスクリプションサービスと似たような性質を持っていると考えており、使ってみると確かに便利だが、一度契約してしまうとやめるにやめられないため、本音でやめようと思ってもダラダラと継続してしまう。

 サブスクと違い、支払う代償がお金なのか、時間と労力なのか、程度の差でしかなく、一度手を出してしまったら、相当な覚悟や決心がなければやめられない。だからこそ、最初の入り口で断固として拒否することが、沼に嵌らないために重要だと信じて、かれこれ干支が一周しそうな今になっても手を出していない。

 やってもいないし、やる意思もないと伝えれば、やれ協調性がないだ、迷惑だと心無い言葉を浴びせるような、器の小さい下劣な輩が勝手に距離を置いてくれるのだから、こちらとしては好都合である。

 新しく出会う人達には、あえて変な奴だと思わせることで、コミュニケーションのハードルを上げ、何人も生まれながらに平等に与えられる唯一の資源である時間を死守している。友達とは従前通りEメールや、他のメッセンジャーツールで連絡しているが、単にひとつのアプリケーション以上でも以下でもないため、それを入れていない位で日常生活に支障が出ることはない。

人生なんでもできるが、全てはできない。

 とはいえ、多くの人は既に某アプリを利用していることだろう。アクティブユーザー数は日本人の8割に迫る勢いで、利用者の割合が少なくなるのは高齢者層だけ。現役世代はあたかもやっているのが当たり前と言った風潮で、やっていない側が悪だと言わんばかりの同調圧力すらある。

 しかし、他人と違っているだけで同調圧力を掛けては、それに従わない人間を村八分にするような下劣な輩は、ある種の常識や固定観念に縛られ、自分はこれ以外のツールが使えない、思考停止人間であることをアピールしているようにも捉えられる。

 そういう類の人種と群れたところで、一瞬だけ寂しさを紛らわせることはできるかもしれないが、根本は解決しない。どんな人生を歩もうとも、人は最期はひとりでこの世を去る。

 その時に、内容も思い出せないような、取るに足らないやり取りをしていたことだけを思い出しては、良い人生だったと振り返るだろうか。それとも、もっと自分のやりたいことに時間を使っておけば良かったと後悔するだろうか。

 「人生なんでもできるが、全てはできない」これは四角大輔さんの著書「人生やらなくていいリスト」にある言葉である。せっかく何でもできる人生なのに、他人と同じことをして群れていては、自分が本当にやりたいことはできなくなってしまわないだろうか。

 そう考えると、いきなりアプリを断捨離までいかないにしても、仲の良い人との連絡だけなど、徐々にコンパクトにまとめてみようと思って頂ければ幸いである。

 また、「会社がなぜ消滅したか」の文庫版あとがきに掲載されている壺に石、砂利、砂、水と入れ、逆から入れることはできないことを説明し、人生は大きなものから取り組まなければ一生のうちに収まらない。若い時期に、どうでも良い砂や水で人生という名の壺を埋めるべきではないという話もこれに通じる部分がある。私からすれば某SNSアプリは砂や水に該当するため、端から使わないのである。

 この本自体は入手が難しいかもしれないが、ひろゆきさんが書いていないがひろゆき著の「1%の努力」にも同じニュアンスのネタが記されているため、気になる方はそちらを読んでみるのも良いかもしれない。少し営業妨害をすると、かつて賠償金を踏み倒した印象とは対照的に、至って現実的な内容ばかりが列挙されている。


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