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足の引っ張り合いの先にあるもの。

嫉妬心が本筋を見失う。

 先日、子育て政策で絶大な支持を得ている某自治体の市長が、過去の暴言の責任を取るために今年度いっぱいで辞任する意向を示したことが話題となった。

 もちろん、権力者だから暴言が許される訳ではないが、これまで日本の未来を真剣に考えた結果、役人の利害相反となるような政策を打ち出し続けていたのも事実で、周囲の妬みからいくつかの失態を掘り返されて、引き摺り下ろされた感も否めない。

 サッチャー元首相の「お金持ちを貧乏にしても、貧乏な人はお金持ちにはならない。」の名言を借りるなら、有能な人を引き摺り下ろしても、無能が有能にはならないのだから、今回の辞任は某自治体に居住する方からしても、あまり良い結果が生まれるようには思えないのが個人的な感想である。

 この国は村社会特有の嫉妬心が強すぎるあまり、本筋を見失う傾向にある。カルロス・ゴーンさんを追い出した後の日産のその後や、大塚家具の経営方針をめぐる対立の末路など、例を挙げればキリがない。

 そういった光景を目にする度、ワケガワカラナイヨ。どうして日本人は他人の足を引っ張り、私怨を晴らすことにエネルギーを注ぐんだい?と、某魔法少女アニメに出てくる、ウサギみたいな見た目のマスコットキャラクター染みた感想しか出てこない自身に、底なしの腹黒さを感じている。

歴史は繰り返す。

 思い返せば、労使のしがらみが強い鉄道業界で、リベラルな立ち位置で居続けることに相当な労力が費やされた。会社側のコストカット施作に対して、無条件で首を縦に振るイエスマンに成り下がりたくない天邪鬼さが労働組合に買われていた側面がありながらも、保守的で昭和90年代を地で行く労組のスタンスにも疑問を投げかけていた。

 合理化提案で、利益を守るためにやむを得ないと説明する会社側と、雇用を守るために断じて許容できないと主張する組合側の、平行線的状況はよく見た光景だったが、利用者のためにやるべきか否かと言う観点が欠如していたのは言うまでもない。

 会社は株主のため、組合は雇用を守るために闘うが、ひとつの企業が1世紀にも渡り存続し続けることが出来ているのは、日々の利用者のお陰であることを忘れてしまっては、商売人として失格ではないだろうか。

 そんなことから、ダイヤ改正原案の意見集約で、看板列車を新設することで、日常利用者の利便性を損なっているため、修正すべきと青二才が忖度せず、至極真っ当な意見を述べたところ、既に新設をプレス発表してしまった営業課や、恩恵を受ける乗務職場など多方から非難を食らった。

 結果として、日常利用者の利便性を損なう形のダイヤ改正が行われ、現場では苦情の嵐に。会社も労組も根負けする形で、次のダイヤ改正でしれっと修正されていた。

 しかし、当時、「新設の速達列車に喜ぶのは鉄道マニアと、リピートするかも定かでない遠方からの一見さんだけで、沿線の利用者の利便性を損なうだけのメリットがない」と私の意見を素直に受け入れてさえいれば、大ごとにならなかった可能性が高かった。

 このことからも、いかに自分たちの利権を脅かす敵を設定して、そいつを袋叩きにすることが不毛であるかは明白である。それにも関わらず、歴史は繰り返すのが人間の愚かさでもある。

利口な人ほど早期離脱する泥舟社会。

 そうして倫理観が強く、広い視野で全体最適を考える人ほど、既得権にしがみ付いている連中とは利害が相反するため、少数派として争いに巻き込まれ、社会正義の観点から正しいことをやっているにも関わらず、報われることなく、結果としてバカを見たり、恩を仇で返されることが往々にしてある。

 それでも最初のうちは反骨精神で抗おうとするが、次第にあまりの不毛さに諦めるようになり、社会の枠組みを変えようと争うのではなく、社会の枠組みから外れて、悠々自適に暮らす道を選ぶ方向に有能な人ほどシフトしていく。そうして利口な人ほど一般社会から早期に離脱していき、残った愚者で舵取りをして泥舟化していくのが日本社会の常である。

 日系企業で行われる早期希望退職もこの傾向が強く、他所でもやっていけるだけの実力がある優秀な人ほど、会社に見切りをつけて手を挙げ、割りの良い退職金を受け取って居なくなり、残ったぶら下がり社員で舵取りをする結果、ゾンビ企業と化す。

 それで良いのかと思う反面、シルバーデモクラシー故に、少数派である若者が引っ掻き回した程度で、何かが変わるような状況ですらないのが実情だろう。何事も諦めが肝心である。

 恐らくこれからの時代に重宝するのは、良い学校に行けるだけの学力や、良い企業で出世するための能力ではなく、金融リテラシーとそれを活かせるだけの、そこそこな資産なのかも知れない。

 所得が調整可能な小金持ちポジションで、表向き低所得者として、社会の落ちこぼれ感を演出しつつ、情けによる税金や社会保険料の免除や軽減で重税から逃れつつも、社会的弱者を装うが故に行政の手厚い支援が受けられる。しかし、資産を持っているため支援がなくとも、割合良いものを食べて生活している。

 そんな、資産家と低所得者の二枚舌的な生き方が、世間体を気にしなければ何気に良いポジションだとつくづく思いながら、その境地にたどり着くXデーを指折り数えている今日この頃である。


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