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久々にリスクテイクを誤ったの巻。


楽に成果を上げたい下心がリスクを見誤る。

 ある日のこと、普段は引きこもり陰キャのくせして、無性に絶景を見たい衝動に駆られたため、何かの間違いで山登りをするに至った。日頃からアウトドアウェアを愛用しているため、登山に関しては素人ながら装備は一丁前である。

 それに地方は高い建物が皆無であることから、50mも登ればそれっぽい絶景が眺められることから、ガチ登山せずともこの衝動は満たせると思い、あまり深く考えずに登り始めた。

 無事に山頂まで登り、冬の強風に煽られながら絶景を堪能し写真を撮った後、下山することになったが、その際に魔が刺した。

 私の知的好奇心旺盛もとい飽き性かつ天邪鬼な性格上、行きと同じ経路ではつまらないと感じるため、使いたくない。おまけにものぐさだから、登りと同じだけ下るのは些か面倒くさい。

 山頂まで自力で登ったら、ヘリでもチャーターして帰れれば理想だが、残念ながら今の私にそこまでの財力はなく、見果てぬ夢である。

 そんなことを考えながら、慎重に下山している際に、角度にして45度は言い過ぎでも、40度程度のショートカットできそうな急坂を見つけた。

 これはもしかして行けるのか?頭の中で悪魔が囁いた。そもそも身の危険を感じるレベルならこの道を行こうとすら思わない。直感で行けるかも知れないと考えるということは、己の身体能力でギリギリショートカットできるのではないか。

 未開の地というよりは獣道で、先人が通ったらしき足跡もある。誰が通ったかは知らないが、山登りのマジョリティ層にできて、それよりは若いであろう20代の自分にできないものだろうか?

 着々と都合の良い方に考え始めた私は、登るよりも危険が伴う下りで、急坂でのショートカットを試みた。中盤位までは足場を探りながら慎重に降りていたが、途中から連日の寒波で地面が一部凍結していて、足のやり場がなくなった。

 しかし、後悔し始めた頃には、もはやリカバリー不能な所まで降りてしまい、登って戻るという選択肢が現実的ではないことに気付かされ、事実上、退路を断たれた。楽に成果を上げたいという下心が出たことで、完全にリスクを見誤ったのである。

 半ばヤケクソになって降り始めたところで、集中力が切れて右足が氷面に取られた。そこからバランスを取ろうとスニーカーにも関わらず、セルフスキージャンプみたいな状態で結構な勢いで降り始めたが、最後の2〜3mでバランスを崩して尻もちをついた。

 滑り台で降った距離が短かったことが幸いして、手袋とズボンの左ポケット部分だけが泥に塗れた。手袋は最寄りの銭湯で汗ばんだ身体を洗う際に使った手拭いで拭き取り、ズボンに関しては同じ要領で応急処置。後日コインランドリー行きとなった。

失敗が許されない風潮では挑戦を躊躇う。

 そんなことの顛末をコインランドリーの待ち時間で記しているが、実はこの過ちを犯したのは今回が初めてではなく、5年前の冬にも箱根で無理なショートカット下山で失敗して腕時計に傷をつけた。

 その点、今回はスキージャンプの要領で10m近く一気に下れたことで、手袋とズボン以外は汚していない奇跡のファインプレーだったため、腕を上げているとも捉えられる。

 しかし、過去の過ちを忘れて、5年前の失敗が活かされておらず、結果として同じ過ちを繰り返している時点で、失敗から学ベていないことになるため、決して褒められたものではない。

 つい最近、大学のリスクマネジメントに関する履修科目でA評価を貰ったばかりだったが、これではアクシデントのAである。

 かつて、ヒューマンエラーとは切っても切れない鉄道業界に籍を置いていた身としては、人はミスをする生き物であるという基本姿勢が植え付けられているため、パンピーほど自分自身の能力を過信しない傾向にはあるが、今回に関しては全く傾向と対策が出来ていないが故に起きたインシデントだ。

 株式投資であれば、こんな愚行は繰り返さないからこそ、実利が得られていると考えられるが、山登りに関しては愚行を繰り返したことで、銭湯代とコインランドリー代という余計なコストを支払う体たらくとなった。

 本来なら5年前の段階で、登りに体力の50%を配分してしまうと、ただでさえ危険が伴う下山中にキツくなって、ショートカットしたくなる性を理解した上で、そうならないための仕組みづくりを行うべきだったが、それをしなかった。ゆえに同じ過ちを繰り返した。

 投資に限った話ではなく普遍的なことではあるが、一度失敗した際に何かを学び取り、その後に傾向と対策を行える人だけが成長していき、みんなが陥りがちな失敗を避ける能力が身につくのだろう。

 失敗しない人になるためには、失敗を身を以て経験しなければならないという、禅問答みたいな結論になってしまうが、致命傷にならない程度の失敗を繰り返すことで得られる経験値(知)はバカに出来ない。

 だからこそ、まずは何事もやらない言い訳を探す前に、やってみてしまうことが重要であり、一度経験してしまえば、視野が広がることから、悩みの質が「やるかやらないか」から、「どう軌道修正していくか」に変わる。

 些か荒っぽい印象かも知れないが、机上の空論でああでもない、こうでもないと堂々巡りを繰り返すほど、人生は長くない。悩んでいる時間があるくらいなら、ぶっつけ本番であれこれ試行錯誤してみて、それっぽい方向に進める。

 そこで得た知見の方が、実学として今後の人生に活かされる可能性は高い。それにも関わらず、この社会は失敗が許されない風潮にあり、いつまでも日本が低成長な根源は、こうした挑戦を躊躇うような雰囲気にあると思うとやるせない気持ちになるため、みんなで失敗しまくれば怖くないのでは?と無責任な発言で締めくくることにする。


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