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個別株を5年以上保有、案外難しい…


NISAは恒久化するも、生涯保有は高い壁

 今年から新NISAが始まり、旧NISAのハイブリッド的な制度で恒久化されたことで、つみたて投資枠と成長投資枠の両方が使えるようになった。

 私はこれまで年間非課税枠の大きさから、一般NISAしか使って来なかったため、もちろん個別株にも手を出しているし、非課税期間を過ぎた銘柄は、課税口座に移管される。

 ただ、振り返ってみると、実際に5年間保有し続けて、NISA口座から課税口座に移管された銘柄は、現時点で3銘柄しか残っていない。暦年の非課税枠でコンスタントに買い付け、これまで少なくとも十数銘柄を保有してきたにも関わらずだ。

 投資コミュニティ界隈では昨今、NISAの拡充で長期・分散・積立の三拍子が持て囃されている。これは、投資対象が広く分散されたインデックスファンドを長期で(15年以上)保有すれば、統計上、元本割れを起こしたことはないデータから来るのだろう。

 しかし、投資信託の平均保有年数が3年そこらとなっている現状からも、理屈では長期保有が正しいと理解していても、多くの人は旧NISA(一般)の5年間は愚か、3年間の保有すら儘ならないのが正直なところだろう。

 とはいえ、NISA損切り民のような、半年足らずで売却に至る人間が、母数に相当数含まれることで、保有期間の平均を著しく押し下げている可能性も否めないのは、平均年収が一握りの高年収エリートが平均を押し上げることで、実態と乖離するのと同じロジックだろう。

 だからこそ、この手のデータは中央値で見たいところだが、私の拙い情報リテラシーでは、エビデンスが明確な中央値を、ネット検索の範囲内で、サクッと得られなかったのは残念な部分でもある。

 そのため、あくまでも一個人の感想の域を出ないが、肌感覚として、長期保有が思っている以上に難しく、株価を追えば追うほど、生涯保有の障壁となる現象は、多くの投資家のあるあるネタとして、共感していただけるのではないだろうか。

直近5年が特殊だった可能性も否めない

 それでも、言い訳をさせて頂く形で、自己の行いを正当化するならば、直近5年間は、2020年の疫病、2022年の戦争を含んでいる。

 バブル崩壊以降の失われた30年の、好景気を知らない世代とはいえ、生まれてこのかた、平和の配当を享受できていた時代を過ごしてきた身として、勝手ながら人類が克服したものと思い込んでいた、疫病と戦争の恐怖に、21世紀にもなって直面するとは思ってもいなかった。

 疫病と戦争により、21世紀に築き上げたであろう、グローバル社会を前提とした経済活動の根幹が覆されてしまった結果、サプライチェーンは崩壊。米中対立と相まって、ブロック経済に逆行している訳で、結果として、その変化に対応できたり、影響を受けなかった企業だけが、直近5年間で手仕舞いすることなく、今もなお保有し続けているとも捉えられる。

 それらを踏まえた上で、5年前当時の自身と比較すると、銘柄選定の基準は確実にシビアになっているため、これから長期保有を見込んで、結果として手仕舞いした銘柄数は、着実に減りそうな気がする。

 運用効率だけを鑑みれば、裁量を持たないインデックスファンドを積み立てて放置が、手段としてはコスパが良く、最善なのかもしれない。

 それでも、リターン爆発力がある(代わりにリスクも相応にある)個別株を、若いうちから扱い試行回数を増やしていくことにより、早期に運用方針が確立されれば、余命の分だけ、運用期間が長く取れる見込みがある。

 だからこそ、自分自身の成長とセットであれば、時には損切りや手仕舞い売りを経験して、何かを学び取ることができる個別株の方が、短期的なリターンは非裁量のパッシブ運用に劣るかも知れないが、上達して投資センスが磨かれるならば、晩年に敏腕投資家としてパッシブ運用を凌駕する可能性がある意味で、夢がある運用手法だと考える。

 そのため、昨今のパッシブ運用一強的な風潮のアンチテーゼとして記している節もある。

道を極めるとは…

 そう考えると、生涯保有云々を抜かす前に、まずは5年後にも保有し続けているような、長期投資に適した個別銘柄を本気で選定し、5年後に結果や心境変化を検証することは、長期投資をする上で最重要と言える。

 これは単なる気絶投資法とは異なる。あくまでも毎日の値動きを観察する中で、途中どれだけの含み損が生じても、自身で思い描いたシナリオから乖離していなければ、己を信じて持ち続けなければならない。

 逆に、途中どれだけの爆上げがあっても、10年、20年後にテンバガー(10倍)を凌駕するリターンを見据えて、目先で利確したくなる誘惑を堪えて、持ち続けなければならない。

 そうして個別株を長期に渡り観察、検証することで、その銘柄の特性や、己の心境変化、自身のクセや価値観が、最初は朧げかも知れないが、徐々に浮かび上がる。

 それにより、「彼を知り己を知れば百戦殆からず」と、自ずと孫子の兵法を体現し、株式投資で勝つべくして勝てる、カリスマトレーダーの高みが垣間見える日が来るのかも知れない。道を極めるとは、そういうことだと思っている。


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