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【入門】フリーランスにとってのバランスシート(BS)を考えよう - あなたの"のれん代"は?

こんにちは。re:shineギグパートナーの青木(@hirofumi_aoki)です。

この記事では、主に、エンジニアやデザイナーとして働くフリーランスの方々が、仕事の依頼をたくさん獲得したり、案件の単価を上げたりするために必要な考え方をご紹介します。

つまり、この記事は、フリーランスとして稼げるようになるための解説記事になります。

なお、この記事では、便宜的にフリーランスと言いますが、副業の方も、対象になります。

僕は、事業責任者や経営者として、フリーランスに仕事を依頼する立場と、フリーランスとして仕事を受ける立場の両方を経験してきました。

この記事で紹介する考え方は、仕事の発注側と受注側、両方の視点から培ったものになります。

フリーランスもバランスシート(BS)を意識すべき

フリーランスに限った話ではありませんが、事業で稼ぐためには、バランスシートを意識する必要があります。

会社経営や経理業務に関わりのない方は、「バランスシートなんて無縁のもの」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

しかし、フリーランスとは、個人事業主です。

つまり、自ら独立して事業を行っており、個人事業の経営者なのです。

事業を経営する人として、バランスシートを理解することは必須とも言えます。

とはいえ、この記事では、小難しい話は抜きにして、簡略化して説明しますので、ご安心ください。

バランスシート(BS)とは

バランスシートとは、決算で作成される財務諸表のひとつで、日本語では貸借対照表と言います。

ざっくりと用途を表すと、会社の財産(資産)の状態を把握するためのものになります。

少し簡略化したものになりますが、バランスシートは、こんな感じの資料になります。

バランスシートのイメージ

このイメージを見て、拒否反応が出た方もいらっしゃると思いますが、ご安心ください。

この記事では、バランスシートの細かい項目を理解する必要はありません。

バランスシートは、概念図として、このような図で表されます。

バランスシートの概念図

この記事では、この粒度でご理解いただければ大丈夫です。

概念図の各項目が表している内容はこんな感じです。

バランスシートの概念図2

つまり、

資産 = 負債 + 純資産

となり、資産会社・個人が持っている財産・資本の総量を表します。

そして、負債は、他人資本とも呼ばれ、借入金など、返さなければならないお金を表します。また、どこからどのような手段で資本を調達したかも表し、資産の元となったお金の調達方法がわかります。

一方で、純資産は、自己資本とも呼ばれ、資本金・利益余剰金など、資金や利益の積み上げを表します。つまり、返済不要な資本(お金等)を表します。

事業で稼ぐために自己資本を増やすべき

フリーランスが事業で稼ぐためには、バランスシートの純資産、つまり、自己資本を増やすべきだと思います。

と言っても、「資金を増やしましょう」という話ではありません。

資本とは、事業でお金を稼ぐための元手のことです。

一般的には、お金を稼ぐための資金などをイメージすることが多いと思いますが、「体が資本」とよく言われるように、資金に限ったものではありません。

そして、実際のバランスシートでも、資本金や利益余剰金といった、いわゆるお金だけでなく、「のれん代」というお金以外の価値を金額に換算して、純資産に計上することがあります。

のれん代

「のれん代」は、企業のブランド力や技術力、社員の能力など、目に見えない資産を表したものです。

つまり、将来、企業がお金を稼ぐ力を資産価値に換算したものが「のれん代」であり、企業の「超過収益力」と言われることもあります。

そして、フリーランスでお金を稼げるようになるためにも、この「のれん代」に相当する資産を個人で増やし、自己資本を増やすことが重要です。

フリーランスの自己資本(のれん代)とは

それでは、フリーランスにとっての「自己資本(のれん代)」とは何か?

企業におけるブランド力や技術力、社員の能力を、フリーランスに置き換えて考えてみます。

この記事では、主に、企業から依頼を受けてお仕事をする、フリーランスのエンジニアとデザイナーを対象に説明していきます。

ブランド = 信頼・評判

まず、フリーランスにとって、ブランド力に相当するものは、信頼・評判だと思います。

ブランドとは、企業や商品などに対して、「顧客が持つイメージ」だと言えます。

そして、ブランド力が高い企業の商品は、競合商品より高い値段で売れたり、多くの人に買ってもらいやすかったりします。

ブランド力

つまり、ブランド力があり、高い値段で、多くの商品が売れることで、企業は大きな売上を得ることができるのです。

AppleのiPhoneなどが代表的な例だと思います。

iPhoneは、他のスマホよりもかなり高いのに、飛ぶように売れます。

フリーランスにとっての商品は、自分自身と捉えると、企業から自分への信頼評判が、ブランドに相当します。

そして、フリーランスは、企業や同業者(エンジニアやデザイナーなど)から高い信頼と良い評判があることで、多くの企業から良い単価で仕事を受けることができます。

例えば、フリーランスのデザイナーが、コーポレートサイトのデザインを依頼されたとします。

そして、依頼主(企業)の担当者が

「◯◯さんがデザインしたコーポレートサイトは、周りからの評判がよかった。

そして、〇〇さんは、私たちの会社の要望を正しくスムーズに理解して、期限通りにデザインを仕上げてくれた。

安心して、仕事をお願いできるから、またデザインが必要な時は、◯◯さんに依頼したい」

と、感じたとします。

これが信頼です。

そして、色々な企業から仕事を受ける度に、このような信頼を増やしていったとします。

一旦は、仕事が終わり、契約が終了したとしても、再び仕事の依頼をしてくれる見込み客(企業)が増えるわけですから、将来的にはたくさんの依頼を受けられる状態になっていきます。

特に、Web系のベンチャー企業だと、企業同士の繋がりが多く、転職も活発なため、信頼関係のある企業(実際にはその企業で働く社員)が増えていくと、自分の評判が取引実績のない企業にも広まることがあります。

信頼と評判

つまり、信頼関係を増やすことが、自分の評判を広げることにもなりうるのです。

さらに、依頼元の企業では、他のフリーランス(エンジニアやデザイナー)が働いていることもあるので、同業者の信頼を築き、同業者間で評判が広がることもあります。

また、仕事の依頼が増えれば、条件の良い仕事を選びやすくなるため、良い単価の仕事を選んだり、価格交渉をすることができます。

信頼関係や良い評判があれば、企業側も納得感を持って、良い価格を受け入れてもらいやすくなるので、そういった点でも、単価を上げやすくなります。

技術力と能力

あえて説明するまでもありませんが、企業の技術力や社員の能力を、フリーランスに置き換えると、個人の能力(技術力等)に相当します。

基本的には、能力で単価を上げるには、能力の質と幅を向上させるか、希少価値の高い能力を身につけるか、どちらかになります。

質と幅に関しては、基本的に質と幅の掛け算で、こちらの図のように、質と幅を掛け合わせた面積が広いほど、単価を得られるイメージです。

技術力・能力の質と幅

とはプログラミング・スキルの高さやデザイン・スキルの高さなどが該当します。

一方でとは、対応できる仕事の広さです。

例えば、エンジニアであれば、プログラミングだけでなく、設計や要件定義までカバーできると、能力の幅が広いと言えます。

デザイナーも同様に、UIデザインを制作するだけでなく、画面設計(画面遷移設計や情報デザインなど)やサービスデザインまでできると、幅が広いと言えます。

幅のイメージ的にはこのような感じです。

能力の幅

対応できる仕事の幅が広ければ、それだけ企業にとっては、付加価値が高いわけですから、単価も上がります。

また、能力の幅にも色々な軸があり、エンジニアで言えば、フロントエンドやサーバーサイド、インフラなど、対応可能な技術レイヤーで見る幅もあります。

いわゆる、フルスタックエンジニアになれば、時間的な制約を除けば、一人でシステムを実装できてしまうわけですから、企業にとっては、かなり付加価値が高くなります。

また、希少価値に関しては、基本的に、需要(求人)と供給(求職)のバランスによって決まります。

希少価値と単価の関係はこんなイメージです。

能力の希少価値

例えば、AI技術(機械学習など)のスキルを持ったエンジニアが少ないのに対して、AI技術を有したエンジニアを求める企業が多ければ、AI技術を持ったエンジニアの能力は、希少価値が高くなります。

僕は、ブロックチェーンが専門分野なのですが、ブロックチェーンを活用したアプリケーション開発の経験があるエンジニアはまだまだ少ないため、探してもなかなか見つかりません。

一方で、ブロックチェーン技術の活用に乗り出す企業はかなり増えてきているので、経験のあるエンジニアは、少し高めの金額を出してでも採用したいと考えます。

このように、新しい技術をいち早く習得したエンジニアは、能力に希少価値を出しやすいです。

信頼・評判と能力が自己資本

以上の通り、フリーランスにとっての自己資本(のれん代)には、下記があげられます。

・高い信頼
・良い評判
・質の高い能力
・幅広い能力
・希少価値の高い能力

全てをいきなり揃えることは難しいですが、これらを意識的に獲得することで、より良い単価で、多くの依頼を受けることができるようになります。

自己資本を増やすための考え方

フリーランスにとっての自己資本を整理したところで、自己資本を増やすにあたって必要な考え方を書きたいと思います。

いきなり、良い評判を広げたり、希少価値の高い能力を身につけるのは、ハードルが高いため、初めのうちは、高い信頼幅広い能力を獲得することを意識すると良いと思います。

また、高い信頼幅広い能力を獲得するだけでも、十分にフリーランスとして、良い単価で継続的に仕事はできるので、必ずしも、意図的に良い評判を広げたり、希少価値の高い能力を身につける必要はありません。

なお、質の高い能力は、仕事の数をこなしていけば、ある程度、自然と身についていくため、この記事では割愛します。

フリーランスの自己資本

一般的に、フリーランスのエンジニアやデザイナーとして、企業から仕事を受ける場合、業務委託契約を結んで仕事をします。

業務委託契約の契約形態には、請負契約や委任契約、準委任契約などがありますが、IT企業がシステム開発において、エンジニアやデザイナーに仕事を依頼する場合、比較的、準委任契約が多いです。

準委任契約の場合、時間(労働力)に対して対価をもらう契約であるため、週●日(月●時間)で●万円、といった契約をします。

契約的には、40時間で大量の成果物を出しても、少量の成果物を出しても、 貰える対価は同じです。

成果物

とはいえ、依頼元の企業が満足のいく成果物を期限内に出せなければ、契約は継続しないので、スピード感を持って成果物を出す必要があります。

システム開発の場合、基本的には、開発のスケジュールが決まっているので、いついつまでに、「この機能の実装を終える」、「この画面のデザインを完成させる」、などといったカタチで、企業が期待する成果物の作成ペースが決まっています。

その為、期限内に求められる成果物をきちんと出していくことが、企業と信頼関係を築くために必要です。

とはいえ、これは信頼関係を築くために、最低限必要なことであって、全てではありません。

実際には、コミュニケーション能力や責任感、人柄、コミットメントの高さなど、成果物以外の付加価値も、信頼関係構築の重要なポイントになります。

むしろ、期限内に求める成果物を出すのは「当たり前」と捉える人の方がおそらく多いので、信頼関係を築くには、その他の付加価値が強く影響すると思います。

信頼関係

具体的に、信頼関係に繋がることとしては、

・企業側の要望を少ないインプットでスムーズに理解できる
・企業側が伝えきれていない要件を汲み取って、開発・デザインができる
・企業側の考慮が漏れている要件があれば、漏れを伝えてカバーできる
・システムのバグや障害を発見したら、率先して原因を調べ対処できる
・チームメンバーと良好な関係を築ける

などがあげられます。

つまり、依頼主が

・「安心して任せられる」
・「一緒に働いていて心地よい」
・「自分の負担が減って楽になる」
・「仕事を頼みやすい」

などといった、感情や感覚を抱く対応をすることで、信頼関係が築かれます。

期限内に成果物を出すために、自分のコーディングやデザイン作業に専念しようとすると、ついつい、その他の対応を省きたくなりがちです。

その為、依頼主に多くのインプットを求めてしまったり、事前に伝えられていない要件を拒否してしまったり、といった対応をしてしまう人も多いのではないでしょうか。

もちろん、依頼主側に怠慢や過失があるにも関わらず、フリーランス側に過度な負担をかけるような対応には、応じかねるケースもありますが、依頼主側が誠実である場合には、相手の負担を軽減したり、ミスをフォローする対応をすることも大切です。

「業務委託だから依頼通りに仕事をこなせば良い」というスタンスではなく、「チームの一員として社員と同様のスタンスで、プロジェクトの成功にコミットする」というマインドセットを持つことが、このような対応につながり、信頼関係を築きます。

信頼されやすいスタンス

さらに、「プロジェクトの成功」を意識し始めると、システム設計やサービス設計(要件定義)の良し悪しも考えるようになります。

例えば、

「この機能はもっとこういう設計にした方が性能が上がる」
「この画面はもっとこういう設計にした方が使いやすい」
「こういう機能があった方がもっとユーザーに価値を提供できる」

などといった感じです。

こういった考えを持って、チームメンバーに意見を出すことができれば、設計や要件定義/サービスデザインなどに加わっていき、より上流工程の能力が身についていきます。

能力の幅の拡張

つまり、能力の幅が広がります。

このように、「プロジェクトの成功にコミットする」というマインドセットを持つことが、依頼主との信頼関係の構築につながり、さらには、幅広い能力の獲得につながります。

自己資本を増やすマインドセット

そして、これらの積み重ねによって、自己資本を増やすことができるのです。

最後に

昨今、働き方の多様化が進み、フリーランスや副業という働き方を選択する人が増えてきています。

特に、大手企業の副業解禁やコロナ禍でリモートワークの導入が進んだこともあり、その流れは一気に加速してきています。

多くの副業マッチングサービスでは、2020年初頭から1年間で登録者数が2倍以上増えたとも言われており、増加の速さが伺えます。

一方で、フリーランスや副業を選択しても、そのメリットを十分に活かせなければ、個人にとっても、社会にとっても、プラスの流れとは言えません。

例えば、フリーランスであれば、会社員の時よりも、「ライフスタイルが柔軟になった」「収入が増えた」などといった恩恵を受けられて、初めて、フリーランスが良い選択となると思います。

また、副業であれば、「収入源が増えたことで、会社に依存しなくなったため、気持ちに余裕ができた」「違う環境で働いたことでスキルの幅が広がった」などといったことが得られて、初めて、副業の恩恵を受けられると思います。

一方で、フリーランスや副業に仕事を依頼する企業の恩恵は、社外の人が加わったことで、「社内にないノウハウや知見が得られた」「緊急の人手不足を解消できた」などが考えられます。

フリーランスや副業の増加の流れを活かすためにも、多くの個人や企業が、このような恩恵を受けられることが重要だと思います。

そのためにも、フリーランスや副業の方が、「自己資本を増やす」という考え方を持って、参画したプロジェクトで活躍し、多様な働き方の流れが、社会にとってプラスになることを期待しています。

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