n人区ごとの東京都議会議員選挙2021の展望

 今回は、来たる6月25日(金)公示、7月4日(日)投開票の東京都議会議員選挙について、その選挙区の定数ごとに展望を見て行く記事を執筆しようと思う。
 東京都議会議員選挙の大きな特徴としては、最大8人区までの「中選挙区制」がメインになることだ。1人区の小選挙区制も7選挙区はあるが、残りの35選挙区は2人以上が当選する中選挙区制となっている。いわば昔の衆議院選挙や、現在の参議院選挙の東京選挙区などの都市部と同じ選挙制度となっている。
 私自身はこの中選挙区制の選挙が大好きで、東京都議会議員選挙は私が最も好きな選挙となる。自民党やかつての民主党、前回の都民ファーストの会などが比較第一党を目指し、同じ選挙区に複数人擁立する一方で、公明党や共産党など、確かな地域地盤を持った政党が確実に1人を当選させ、安定して強いのが、東京都議会議員選挙の特色でもある。こうした政党間の候補者擁立数の駆け引きや、同じ政党間でも個人で競う仕組みが堪らなく好きな理由でもある。前述の通り、公明党や共産党が安定して議会に議席を持つ一方で、前々回は民主党が、前回は自民党がといった形で、それまで都議会の比較第一党だった政党が、複数人を擁立して共に落選する「共倒れ」現象が起き、大きく議席を減らすことも有り得るのが中選挙区制の恐ろしいところでもある。今回はその中選挙区制の「魔物」が、前回大躍進した都民ファーストの会を襲うことになるのが、今年の東京都議会議員選挙となりそうだ。
 それでは42ある選挙区を定数ごとに展望して行こうと思うが、その前置きとして、今回の各政党の基本的なパワーバランスについて筆者の考え方を述べておきたい。選挙区ごとに、地域地盤の違いによって多少の差異はあるが、以下が各政党の力の「序列」になると見ている。(参考調査結果→https://go2senkyo.com/articles/2021/06/17/59709.html

 自民党>公明党>共産党=立憲民主党>都民ファースト>自民党2人目>公明党2人目>立憲民主党2人目>生活者ネット>都民ファースト2人目=日本維新の会=国民民主党=れいわ新選組

 前回比較第一党となった都民ファーストの会は、事前調査が全く振るわず、現在は比較第5党の5番手に居ると言っても過言ではないようである。今後どれだけ小池百合子都知事がテコ入れをするかにもかかってはいるだろうが、都知事は今のところ「塩対応」の模様だ。(※6月22日の続報として、都議選中は静養につとめるようである。)対して、前回は惨敗した自民党は、今回は復権がかかる選挙となり、比較第一党の奪還は揺るぎないところだろう。
 次いで、2番手には東京都議選では不思議な力を発揮する公明党とした。公明党は確実に勝てる選挙、候補者擁立を行い、数十年間に渡って、都議選は「無敗」を誇っている。しかし、その常勝軍団もコロナ禍によって、過去最も厳しい選挙を強いられているようで、ひょっとしたら今回は公明党落選という珍事が有り得るかもしれない。それでも基本的には共産党や立憲民主党より強いと見て、2番手に位置付けた。
 3番手は共産党と立憲民主党を互角とした。野党共闘を行っている両党は、今回の東京都議会議員選挙でも、それなりに選挙区の棲み分けを行っているようである。この野党共闘の棲み分け戦略が、両党の議席数増加という最大限の効果を発揮しそうではある。
 5番手の都民ファーストの会としては、現在は目の上のタンコブとなりつつある、立共共闘に対して一矢報いたいところではある。特に共産党と最終議席を争う対決は、今回の東京都議会議員選挙の最大の見どころと言って良いだろう。この勝敗によって、両党の議席は大きく変わって来る。
 以下は、東京都内にそこそこの地盤を持つ生活者ネットが、前回1議席の敗北から復活を喫す戦いとなる。現有議席を持っている定数2の北多摩第二では立憲や共産との共闘になるので議席獲得は堅く、世田谷区と杉並区で議席を取り返したいところである。練馬区では推薦候補が当選するかにも注目だ。国政政党の日本維新の会、国民民主党、れいわ新選組は、5大政党の陰に隠れて、苦戦を強いられているようである。議席獲得はなかなか厳しい状況かもしれない。
 それでは、この基礎的な力関係を踏まえて、n人区ごとに選挙を展望して行く。

1.1人区・・・7選挙区

千代田区、中央区、武蔵野市、小金井市、昭島市、青梅市、島部
 小選挙区制となる1人区は上記の7つの選挙区である。前回は、島部以外は全て都民ファーストが制したが、今回の情勢はかなり厳しい。対する自民党は奪還と行きたいところだ。立共の野党共闘陣営は、菅直人元首相のお膝元で、中央線沿いの革新地域である武蔵野市と小金井市で自公を倒して、議席を獲得したいところである。私の予想としては、このリベラル色の強い地域で野党共闘陣営が勝つと考え、他は保守地盤が強い地域であるから自民党が奪還すると考える。ここは自民党の5勝2敗だ。

2.2人区・・・15選挙区

港区、文京区、台東区、渋谷区、荒川区、立川市、三鷹市、府中市、小平市、日野市、西東京市、西多摩(あきる野市など)、南多摩(多摩市・稲城市)、北多摩第二(国分寺市・国立市)、北多摩第四(東久留米市・清瀬市)
 今回の東京都議会議員選挙において、大きく情勢を占うのが、この15ある2人区と言っても過言ではない。ここでは書き切れないので、また日を改めて、別途フォーカスした記事を書きたいと思う。
 ただ、基本的に1議席は自民党でほぼほぼ確実と言えよう。強いて波乱があるとすれば、公明党が2人区で唯一候補者を擁立し、共産党も勢力を持っている荒川区ぐらいであろう。残りの1議席を巡っては、都民ファーストvs立憲民主党or共産党の戦いとなる。ここでは基本的に立憲民主党に関しては、共産党票が丸々乗ると考えられるので、都民ファーストに対して優位に選挙を運べると考える。対して、共産党に関しては、都民ファースト(主に連合系)と五分五分の戦いで、立憲票がどちらに乗るかが大きな勝負の分かれ目となりそうだ。

3.3人区・・・7選挙区

墨田区、目黒区、中野区、豊島区、北区、北多摩第一(東村山市・東大和市・武蔵村山市)、北多摩第三(調布市・狛江市)
 3人区からは公明党も漏れなく参戦して来る。ここでも基本は自公が議席獲得で、最終議席を共産党と都民ファーストが争う形となりそうだ。中には立憲民主党も擁立している選挙区はあるので、三つ巴になるケースもあるだろう。目黒区と北多摩第一と第三が、共産党と立憲民主党、双方が候補者を擁立している選挙区となる。中野区は立憲の現職に共産党が乗り、墨田区・豊島区・北区では共産党の候補者に立憲が乗る形となっている。また、墨田区と目黒区では自民党が2人擁立しているので、場合によっては自民党が共倒れになる可能性もある。墨田区では共産党候補に立憲民主党の衆議院選挙支部長も乗っているので、野党共闘によって、「自自公」の一角を崩せるかに注目だ。
 都民ファーストは3人区でも共産党に負けるようなことがあると厳しいが、私の基本的な3人区の予想は「自公共」(中野区のみ立憲)としたい。

4.4人区・・・5選挙区

新宿区、江東区、品川区、葛飾区、町田市
 4人区の予想に関しては非常にシンプルで、どの選挙区も「自公立共」が1議席ずつを分け合って、都民ファーストを弾く形になると予想する。4人区では自民党も2人候補者を立てているので、共産党か立憲民主党に勝って複数議席獲得となれば、自民党は50議席の大台が見えて来るが、そこは昨今の菅政権の情勢や支持率を見ていると、やや厳しいようにも思える。よって、4人区は手堅く全て「自公立共」と予想したい。

5.5人区・・・3選挙区

板橋区、江戸川区、八王子市
 5人区に関しては、基本的には「自公立共都」の主要5党で分け合う形だと予想する。議席を争うとすれば、自民党2人目と都民ファーストの戦いとなりそうだ。都民ファーストに辛口な私でも、さすがにここでは都民ファースト勝利を基本とするが、ここでも自民党2人目に負けるようなことがあれば、いよいよ都民ファーストは壊滅、議席数1桁の危機である。

6.6人区・・・2選挙区

杉並区、足立区
 6人区に関しては「自自公立共」まで確定で、最後の1議席を杉並区では都民ファーストと生活者ネットが争う形になると予想する。足立区に関しては公明党が強い地域で、公明党が2人擁立している。公明党は「無敵」なので、都民ファーストを弾いて、足立区は「自自公公立共」で堅いだろう。

7.7人区・・・2選挙区

練馬区、大田区
 今回の都議選から新設されたのが、この7人区になる。前回までは練馬区が定数6で、大田区が定数8だったが、人口で練馬区が大田区を逆転したのに伴って、練馬区が1増えて、逆に大田区が1減って、共に7議席となった。さすがに、ここでは都民ファーストも1議席は獲得するだろう。よって、「自自公立共都」の6議席に加えて、練馬区では自民党3人目と都民ファースト2人目、さらには立憲と生活者ネットが推薦する市民の声ねりま(練馬は区民だと思うのですが・・・)の候補者が最後の議席をかけて争う形になると予想される。大田区に関しては、ここでは公明党が2人擁立しているので、「自自公公立共都」で堅いと思うが、補選で健闘した維新が一角に食い込んで来るかが注目となる。

8.8人区・・・1選挙区

世田谷区
 最後は最も定数が多い世田谷区になる。ここは立憲民主党が2人擁立して、逆に公明党と共産党は1人の擁立に留めた選挙区になる。立憲民主党の2人目にはかつての社民党(保坂展人世田谷区長の出身政党)も応援に加わるようで、となれば立憲民主党の2議席は堅そうではある。また前回は都民ファーストフィーバーの中にありながら、自民党が3人とも通した選挙区でもあった。こうした点を踏まえると、「自自自公立立共都」が最も堅そうな予想ではあるが、生活者ネットも議席奪還を狙っている選挙区である。最終議席は、自民党3人目と都民ファースト1人目、生活者ネットで争う構図になるのではないだろうか。

まとめ

 以上、n人区ごとに議席獲得予想を行って来たが、各党の議席獲得予想をまとめて行くと、自民党は45議席前後になると予測される。3~5人区で2議席獲得できれば、50議席の大台にも乗りそうだが、そこに手が届くかは当日の「コロナ感染者数」にも左右されるかもしれない。少なければ自民党政権の対応が評価されるだろうし、また反動で多くなれば議席数は少し減らすことになるだろう。前回は1人区で都民ファーストに敗れ、3人区ではことごとく共産党に負けて、議席数を23議席まで大幅に減らしたが、今回は前回歴史的惨敗を喫した分、議席倍増で取り戻しそうだ。
 公明党に関しては、散々、公明新聞の紙面上にて鬼の形相で危機を煽っておきながら、結局は、底知れぬフレンドパワーによって、最終的には23議席をキッチリ確保するんでしょと私は思っているが、波乱があるとすれば3人区になるだろう。もし、公明党が議席を落とすという歴史的なことが起きれば、比較第2党の座も立憲民主党や共産党に奪われ兼ねない可能性もある。
 立憲民主党は4人区以上での11議席をキッチリ回復させた上で、前回は都民ファーストに奪われた多摩地域の2人区をしっかり取り返して行くだろう。20議席前後まで回復させて、場合によっては公明党の23議席を上回って、比較第2党まで復活できるかもしれない。
 共産党は4人区以上の11議席は死守するとして、2~3人区でどれだけ都民ファーストに先着出来るかが大きなカギとなる。ここでの勝敗によって、10議席程度は大きく異なって来る。
 都民ファーストに関しては前述の通り共産党との勝負と、5人区以上での自民党2人目3人目との勝負になる。ここでも、ことごとく負けるようなことがあれば、議席は1桁に留まるであろうし、最悪5議席前後まで激減してしまうかもしれない。基本的に接戦区では都民ファーストの議席が減った分だけ、共産党や自民党の議席が増えると考えて良いだろう。
果たして、都民ファーストはどこまで議席を減らすのか、何とか共産党や自民党2人目に勝利して、十数議席程度まで踏み留まれるのか、政治アナリスト・選挙制度アナリストとしては今回の都議選ではこの点に注目して行きたいと思う。
 また私が毎週木曜日のレギュラーを務めているYoutubeの「新」経世済民新聞チャンネル(https://www.youtube.com/watch?v=J9gYS3-E2OI&list=PLzWX3wp6mOwoPCokyRwE1lKeyef6w01-_)でも、図表を持ち入りながら解説する動画を公開する予定なので、そちらもご覧頂ければ幸いである。あと、選挙当日には反緊縮経世済民チャンネル(https://www.youtube.com/channel/UCDZtywqseGq8GqNyfojITBA/featured)の方でも開票速報ライブ配信を行おうかとも考えているので、選挙当日にもお付き合い頂けると嬉しい限りである。その他、選挙に関するお問い合わせや、取材依頼などは、mansaku.ikedo@gmail.com までメールを頂ければと思う。
 以上、2人区を省いたくせに5,000字と相変わらず長くなってしまったが、今回の記事によって、都議選や中選挙区制の魅力、面白さが読者に伝わったのであれば、筆者としては光栄である。

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