【速報】大阪市廃止住民投票の結果を分析

 久しぶりのnoteの記事になります。最近はツイッターをメインにしつつ、Youtubeの動画を井上智洋先生とスタートとしたこともあって、映像の編集作業の方も行っているため、noteでの文筆は1ヶ月以上空いてしまいました。今後はYoutubeの「反緊縮経世済民チャンネル」(https://www.youtube.com/channel/UCDZtywqseGq8GqNyfojITBA/videos)の方も、是非、ご覧頂ければと思います。noteに書いているような記事を口語でも説明して行きたいと思います。
 さて、今回は11月1日(日)に投開票が行われた、大阪市廃止・ 特別区設置住民投票についての投票結果を速報で分析して行きたいと思います。マスメディアでは、大阪都構想の住民投票と言われ続けていましたが、正しくは大阪市廃止と4つの特別区設置を問う住民投票になります。4つの特別区の位置関係に関しては、以下の日経新聞のサイトをご覧下さい。
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO53808840V21C19A2N10100/
 言葉で記しておくと、現在の大阪24区は以下のように再編するとされていました。
北区・・・北区、福島区、都島区、鶴見区、城東区、東成区、旭区
淀川区・・・淀川区、東淀川区、西淀川区、此花区、港区
中央区・・・中央区、西区、浪速区、西成区、大正区、住之江区、住吉区
天王寺区・・・天王寺区、阿倍野区、生野区、東住吉区、平野区
 淀川区は一体となっていますが、住吉区は中央区で、東住吉区は天王寺区に分かれることになっていました。ちなみに、東成区と西成区も別の区となりますが、ここは隣接していないようです。

1.住民投票の結果一覧掲載

 まず最初に全体の結果一覧を貼り付けておきます。

大阪市一覧

 区名は現在の区名、新区は賛成で可決された場合の分割する4区分、衆議院は衆議院の小選挙区が属する区です。大阪市内は衆議院の選挙区だと、大阪1区から6区まであります。なお、大阪6区は大阪市に隣接する門真市と守口市も含んでいます。大まかに言うと、中心部の大阪1区は4分割するとされていた仮北区、仮淀川区、仮中央区、仮天王寺区を全て含みます。大阪2区は現在の天王寺区以外の仮天王寺区域の4つの区となります。大阪3区は仮中央区の南部に当たります。大阪4区は梅田駅がある中心地の仮北区域となります。大阪5区は仮淀川区域です。大阪6区の旭区と鶴見区は仮北区に属していました。
 賛成はその24区各区内の賛成票数で、反対は24区各区内の反対票数になります。票差が賛成票-反対票の差分で、黒字でプラスが賛成多数、赤字でマイナスが反対多数の区となります。賛成割合が、その区域内での総得票数に占める賛成票数の割合で、反対割合が反対票数の割合となります。50%/50%に近いと、それだけ賛否が拮抗していることになります。割合差が賛成割合-反対割合の差となります。黒字のプラスが、賛成割合が多く、赤字のマイナスが、反対割合が多いことを示しています。
 以上の表の見方を踏まえた上で、次に票差分と割合差分を多い地域順に並び替えて、結果を見て行くことにしましょう。


2.賛成票と反対票の票差で見る住民投票結果

大阪市住民投票票差

 賛成票の票差が多い順に24区を並び替えてみました。最も賛成票の票差が多かったのが、8,727票差の淀川区となりました。個人的には梅田駅がある北区が最も賛成票の差が大きくなると見ていたので、淀川区の1位には驚きました。淀川区は新大阪駅というターミナル駅を抱えるものの、阪急の十三駅のような庶民的な町もあるので、ここまで賛成票が多くなるのは意外でした。何故、ここまで淀川区で賛成票が多くなったのか、皆さんからもコメントを頂けると幸いです。
 2番目の北区は予想通りといったところで、大阪市廃止の住民投票は、anywhere族とsomewhere族の戦いと言われていました。anywhere族とは、いわゆるタワマン族で、大企業の転勤などによって、2020年現在、たまたま大阪市に住んでいるだけであって、大阪市にあまり土着を感じない人々と定義できます。対して、somewhere族とは大阪市生まれ大阪市育ち、ないし長く大阪市に在住している、大阪市に対して愛着を持って、日々暮らしている庶民的な人々と言えます。概ね前者が賛成多数で、後者が反対多数になる傾向があると言われています。なので、タワーマンションがそびえ立つ北区で、賛成多数になるのは肯けるものがあります。
 次いで、大阪ドームがある西区も、そういった地域なので、賛成票が3,800票余り上回りました。続いて、福島区、都島区、鶴見区と仮北区域内が賛成多数となっています。大阪の名所、ミナミ・難波を抱える中央区も952票差で賛成多数となりましたが、個人的には中心地の中央区はもっと賛成多数になるのではないかと踏んでいたので、意外と差が付かなかった印象です。あとは、浪速区、城東区、東淀川区が賛成多数で、賛成票が反対票を上回ったのは全部で10区ありました。内訳は、仮北区域が5区、仮中央区域が3区、仮淀川区域が2区となっています。よって、南部の仮天王寺区域は全区で反対多数となったわけです
 反対票の票差が最も大きかったのは南部の平野区で、ここでは8,377票も反対票が賛成票を上回りました。次いで、住吉区も同様に8,000票以上、反対票が多かった区となります。他は阿倍野区や港区でも反対票が6,000票程度と大きく差が開いた区域となりました。反対票が多かった区の数は14区になります。概ね大阪市南部の地域で、今回の投票結果は、ある意味、大阪を南北に分けた結果になったと言えるでしょう。ちなみに、最も賛否が拮抗したのが大阪環状線の東部に位置する東成区で331票差でした。東成区は前回も最も賛否が拮抗した地域のようです(前回は賛成派がわずかに上回った)。

3.賛成割合と反対割合の割合差で見る住民投票結果

大阪市住民投票割合差

 各区は人口の数も異なるので、次は賛否の割合の差でも見て行くことにしましょう。割合差で見ると、北区が淀川区を逆転して、最も賛成の割合の多い地域となりました。賛成割合が56.27%で、反対割合が43.73%と、実に12.55%も賛成の割合が高かったことになります。淀川区も賛成の多い割合が10%を超えました。以下は票数差とほぼ同じ順位ですが、総投票数の少ない浪速区が賛成割合では6番目と少し順位を上げています。
 逆に、反対の割合が最も多かったのが港区となり、賛成の割合が42.98%なのに対して、反対の割合は57.02%もあります。差し引きで、実に14.03%も反対の割合が高かった、かなり猛烈に特別区設置に反対した地域となります。その理由につきましては、個人的な見解としては、港区は淀川区に含まれるという、少し無理のある「区割り」が最大の要因ではなかったかなと思います。港区から現淀川区に行くのには、現大阪市を南北に縦断しなければならないので、新区役所に行くのに、かなりの時間を要すことから、猛烈に反対となったのではないかと予測します。港区は、淀川区ではなく、やはり中央区にするべきだったのではないでしょうか。そうすれば、もう少し賛成の割合が増えたかもしれません。
 次いで、住吉区、阿倍野区が10%弱の反対多数となりました。反対票の票差が最もあった平野区は人口も多いので、反対割合では4番目といった結果になりました。続いて、割合で見ると、人口の少ない大正区や此花区が、6%ほど反対票が多数となっています。
 いずれにせよ、14%差という港区民の猛烈な反対が、今回の住民投票の結果に大きく左右したと言えるでしょう。推進派からすれば、区割りで失敗した感は否めないところだと思います。

4.新区分で見る住民投票結果

大阪市住民投票新区別

 最後に大阪市廃止が決定された場合の4つの新区分の合計で、投票結果を見て行きたいと思います。上記の通り、賛成票が反対票を上回った新区分は北区のみで、他の3区では反対が多数となりました。最も財政的に豊かになると言われていた仮北区域では賛成票が反対票を13,521票上回り、唯一の賛成多数の新区となりました。割合でも3.32%ほど、賛成が上回っています。この仮北区域で反対多数となったのは激戦の東成区と旭区のみで、他5つの区では賛成多数となりました。
 最も激戦だったのが仮淀川区で、現淀川区では8,727票と賛成が反対を大幅に上回るものの、前述した通り、港区では6,000票も反対票が多く投じられ、仮区域内でも大きく異なる結果が出たのが、この仮淀川区になります。西淀川区や此花区でも2,000票ほど反対多数であったため、結果、仮淀川区では1,487票とわずかながら反対が多数となりました。ただ、事前の調査では反対派がもっと多数であったため、現淀川区を中心に、大分、賛成派が盛り返して来た地域でもあると言えるでしょう。
 逆に、当初は賛成派多数と見られていた仮中央区域は、7,140票差で反対派が多数と逆転になりました。西区でこそ3,800票余り賛成票が多かったものの、中央区・浪速区は思ったよりも賛否が拮抗し、南部の住吉区で8,000票と大きく差が開いたため、ほぼこの住吉区の差だけ、仮中央区域内でも反対多数となりました。しかし、以上の新3区域内の合計であれば、賛成多数で大阪市は廃止となっていました。
 それを覆したのが、やはり大阪市南部の仮天王寺区域となります。ここは全ての区で反対が賛成を上回り、トータルで見ても、22,000票と大きく反対票が賛成票を上回りました。割合差でも、6.89%と賛否に開きが出たことが伺えます。やはり、財政的に最も苦しくなるであろう仮天王寺区民が、その懸念によって、多数反対派に回ったことで、大阪市廃止は回避されたことになります。
 これは現在の大阪市が抱える市内の南北格差を顕著に示す結果になったとも言えるでしょう。今後の大阪市政においては、こうした南部の仮天王寺区域をいかに発展させて、大阪市内における南北格差を是正していくべきかが問われる住民投票の結果になったと私は考えます。

5.まとめ

 以上のように、ひとえに大阪市と言っても、その地域ごとで、様々に事情が異なっていることが、住民投票の結果からも伺えることになりました。転勤のanywhere族と土着のsomewhere族、大阪市内における南北の格差といった、住民の質の違いや対立構造を超えて、今後、大阪市を如何に市民が一体となって発展させていくかが重要かと私は思います。大阪市4分割の賛否両論の大阪市廃止構想から、大阪市民一体のワンオーサカに向けて、今後も大阪市が西日本の中心であり続けられるような行政の構想であって欲しいと私は思う次第です。

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