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卒論・修論テーマ、どう決める?

4月から大学院に入学、あるいは4年生で研究室に配属されてから数ヶ月が経ち、最初の関門は自分の研究テーマを決めること。しかし、何を研究してよいかわからない…テーマの選択に悩む学生も多いのではないでしょうか。そこで今回は卒論、修論のテーマの決め方、考え方についてまとめてみたいと思います。

テーマ決めの重要性と難しさ


卒論、修論、博論…。論文と呼ばれるものをまとめるためにはテーマが必要です。論文をごく簡単に定義するとすれば「ある問いに対する答えをまとめた文書」といえるでしょう。

つまり、論文を書くということは「問い」を定め、その問いを解明するための調査や実験を行い、「答え」をまとめる作業を行うということになります。このため、問いがなければ調査も実験もないわけで、自分が何を研究するのか、テーマを決めることは研究を始める上での最初の難問になるでしょう。

問いが定まれば研究は8割終わったも同じ、という言葉がありますが、それだけ何を研究するかを決めることは重要で大変な作業です。何を調べるか、最終的に何を答えとして出すのかに直結してくるわけですから。ですので多くの人がこの問い(=テーマ)の設定に頭を悩ませることになります。

そこで、本稿では問いを定めるための方法を以下3点、示してみようと思います。

決め方①興味・関心、疑問から決める


 第一に、これまで生きてきた中で感じてきた疑問、自分の興味や関心からテーマを決めるパターンです。どのような興味・関心、疑問も突き詰めれば研究にすることができます。難しいことは考えずに、何故そうなるんだろうか、という素朴な疑問から始めるのは1つの方法かもしれません。

例えば、「なぜ人は普段ボランティアをしないのに、大災害があると積極的に支援するんだろうか」「なぜコロナ禍収束後マスクをすぐに外す人となかなか外さない人がいるんだろうか」「なぜ日本人は大谷翔平があんなに好きなんだろうか」など素朴な疑問は日常にたくさんあるかと思います(上記の疑問を持っているのは僕だけでしょうか…)。

これらの素朴な疑問の抽象度を上げたり、原因について仮説を考えることは論文のテーマを考える上でのヒントにつながってくるかもしれません。例えば、コロナ禍のマスクの例で言えば、「マスクを外す人と外さない人の差はなんだろうか」→「なぜ習慣は変えられないのだろうか」「新しいことに対する許容力みたいなものに差があるのだろうか」→「個人のルーティン変化に関する研究」「イノベーションの受容と個人属性に関する研究」といった具合です。

日常的な疑問を少しずつ学術的概念や抽象度の高い用語に置き換えていくことで、研究のテーマに落とし込んでいくことがポイントです。

決め方②理論、概念から決める


 よくテーマ決めの時は「問題意識は何?」「何に興味があるの?」といった問答を繰り返すことになりますが、全員が明確な問題意識や疑問を持っているわけではないでしょう。考えている中で自分がやりたいことはなんだ?と分からなくってしまうこともあると思います。

その場合は、気になる理論や概念から研究テーマを設定するパターンも考えられます。教科書の輪読や論文を読む中で、自分が興味を持てる理論や概念が見つかる時があります。なんだこれ?なんとなくかっこいいな、というワードがあればそれを深掘りしていくのも一つの方法です。

はじめは何となく気になる概念だなー。という程度であっても、その概念で説明できそうな現象はないか、その言葉を用いて行われてきた研究ではどのようなことがわかっていて、何がわかっていないのかを整理してみましょう。自分の研究テーマ選択の材料として、次のステップへ進むきっかけになるかもしれません。

ただし、注意しなくてはならないのは、気になるワードを”深堀り”するということです。あれも気になる、これも気になると広く浅く文献を”掘って”いくのはNGです。「広く浅く」をしてしまうと、どれも中途半端になってしまい、あれもできそう、これもできそうとかえって混乱を招くことになります。

ある概念や理論、キーワードを設定したのであれば、まず徹底的に情報収集を行い、そのうえで研究になるかならないか、テーマとして選ぶかやめるのかを考えましょう。情報不足では、適切な判断をすることはできませんから。

決め方③対象、フィールドから決める


 最後に、研究を行いたい対象がある、面白いと思える人や組織、業界にツテがあるなど、研究対象や研究のフィールドがある人はそこから研究を立ち上げることも可能です。

研究対象やフィールドが定まれば、関連する理論や問いも自ずと決まってきます。例えば、組織のリーダーを研究対象とするのであれば、リーダーシップ論などが検討すべき先行研究や理論になりますし、非営利組織(NPO)を対象とするなら非営利組織経営論が、組織と組織の関係を考えたいなら組織間関係論を検討することになります。

テーマが決まらない場合、関心のある組織や対象者を決め、それに関連する研究を見ていくのが方向性を決める1つのヒントになるかもしれません。また、研究室にこもらず、フィールドに出て実践者の話を聞き、現実に起きている不思議なこと、課題などを知ることも研究アイデアの発見に役立つはずです。

結局、「テーマは何でもいい」んです。


…と以上の通りつらつらと書いてきましたが、卒論や修論のテーマはぶっちゃけなんでも良いと僕は思っています。研究者としてその後も研究を行うのなら、それなりに深みや広がりのあるテーマを設定する必要があります。

しかし、大半の人は研究職に着かず一般企業に就職します。卒論や修論で大切なのは研究の内容ではなく、研究を通じて論理的思考力や批判力、考察力などを磨いていくことです。そもそも1年や2年で良い研究なんてできるはずがないのです。

もちろん研究のテーマ、内容を追求していくことで上に示したような能力が鍛えられるという側面もあります。しかし、テーマ決めにあまりに多くの時間を費やしてしまい、卒論や修論を間に合わせでこなしてしまっては本末転倒です。なぜならテーマを決めるだけが研究ではなく、そこから先のさまざまな作業にも多くの学びがあるからです。

テーマが決まらない!と多くの時間を無駄にしてしまうのは、研究を通じた様々な能力を鍛える上での損失だと僕は考えています。良い研究テーマを設定することや良い研究をすることにこだわりすごないことも、研究を進めていく上では大切です。もちろん研究の内容・レベルを高めていくことも重要であることは強調しておきたいですが、「たかが卒論、たかが修論」ですので、博士課程まで進む人以外は研究を通じて何を学ぶかがより大切です。

研究を航海に例えるなら、テーマ設定は行き先を決める段階です。決めた行き先に向かって、さまざまな波を超え時には寄り道をし、ゴールへと突き進むことで、人間は能力を鍛えていきます。出港前にあーだこーだ考えすぎ、出航後の重要な学びの機会を失うのであればとりあえず出航してみては?というのが僕の考えです。出航してみなければ、その後の学びもありませんからね。

今日はこのあたりで。


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