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インセンティブ

 カタカナ語、外来語に和製英語。今日我々の周りには様々な横文字が溢れている。これらは従来の日本語にはなかった概念を補完してくれる、グローバル社会には欠かせない存在だ。

 有効に用いることができれば、日本語を使って回りくどく説明するよりも(なんとかによるなんちゃら方式みたいな説明するより)パッと端的に意図を伝えられるが、しっかりと語義を理解しないと発言がしっちゃかめっちゃかになる。

 栄えある我が社の経営陣はあまりにも未熟なので、これらの言葉を使うべきではない。ロクに扱えもしねえ横文字を振り回すな!!

 何がインセンティブだよ!!

 弊社では次月度から社内で「新商品受注セール」と言うのをやる。(あ、社内情報を漏らす気はないので細かいところはちょいちょい変えてるよ)

 その内容はこうだ。大元の予算(100万とか200万とかね)があって、弊社所属の各営業員がそれを争奪戦するというものだ。何で競い合うのかというと、まぁ呼称で察せるとおり新商品の売り上げだ。

 新商品を1つ売るごとにその営業員が大元の予算の内の数百円を獲得できると言うルールだ。(ちょっと変えてるけどほぼそんなような感じ)んでもって、それが尽きるまで取り合うみたいなね。

 一般的な感性(ダメ人間よりの)をお持ちの皆様ならわかると思うが。まぁみんなやる気がない。そりゃあねえ、誉れあるわが社の新商品は大抵ろくなもんじゃない。ほとんどが(市場に合ってなかったり欠点があったり、そもそも海外から入ってこなかったりで)すぐ廃盤になる。いっつもそうなので、実績や実力のあるお客さんほどウチの新商品を警戒する。

 しかしそこを無理やり押し込めと言う話だ。「お前らが新商品を売れないのは客との信頼関係を築けていないからだろ」ってね。

 まぁしかし、お客さんから信頼されているような先輩は相手から「〇〇君はこの新商品は会社が売れっていうけどクソだから使わなくていいよ。なんて不利な事でも包み隠さず明かしてくれるから信用してる」なんて言われることが多い。何のための何なんだよ。

 話がそれちゃった。

 とにかく、このセールの進捗はいっつも(と言っても始まったのはここ数年だが)悪いので偉い人は怒るわけだ。不振なのが不思議でたまらないらしい。

 👴「なんでこんなに進捗が悪いんだ? 目の前にニンジンをぶら下げてやってんのに走らねぇとかそれでも営業か?」

 うん。ここまでは(イラッとくるけど)理解できる。額しょぼくね?とは思うが怒りに共感できるし、反省もできる(しないけど)

 👴「仕事舐めてんのか?お前らが気合入れて新商品とってくれば、報償金をやるって言ってるんだぞ。それを集めれば皆んなで飲みに行けるじゃねーかインセンティブがあるのにどうしてやる気を出さねぇんだ?」

 へ?


 は?


 はああああああああああ???


 アタイの好きに使えないの?????獲得した報奨金でわざわざプライベートの時間をつぶしてどうでもいいおっさん達とドンチャン騒ぎ(のフリ)しなきゃいけないの?????こんなもん貰えない方がまだマシじゃん。

 そもそもインセンティブって何???

 ……🙄

『インセンティブ』

 業績に連動した報酬の意味を持つ「インセンティブ」。しかし昨今では、単なる金銭的な報酬に限定せず、自己実現やモチベーションアップにつなげる施策として、個人の価値観に着目したインセンティブ制度を導入する企業も増えています。
人事労務用語辞典「インセンティブ」の解説

 納得いかない。報酬ってどんな意味だっけ?何のモチベーションが上がるんだそれで。

 この感じだとあれだぞ、飲み会したくないからわざと売らない方向のモチベーションが上がっちゃうぞ。

 こういうのに必死になれる人ってどんな精神構造してんだろ。一般的にはそっちの方がポジティブ・明るいと評されると思うが、なんだか病的な匂いを感じるんだ。

 なんて言葉を飲み込みながら、空虚なニンジン目指して今日も走れ走れ。

急げ 急げ 前に駆けろ
偽の希望を前に吊るせ
『サラブレッド』作詞:尾崎雄貴

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