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"クレームは宝の山"ならお前にやるよ いらねぇから

 この言葉の意味がわかるかわからないかと言ったらそりゃあわかる。一般によく聞くのが、「クレームを受けることによって顧客から商品やサービスの使用感がフィードバックされる、だから品質改善に繋がる」だとか「クレームを入れてくる人は商品やサービスに期待しているのだ、解決したらファンになってくれる」だとかだろう。たしかにその通りだ。品質向上のための情報も、ファンの獲得も企業がシェアを拡大していくにあたって重要な要素だ。だから企業にとってはいいことづくめ、確かに"宝の山"かも知れない。

👨「わかったか?"クレームは宝の山"なんだぞ。だからお客様からクレームがあったら喜んで積極的にガンガンいくんだ!」

😉「はい、わかりました。がんばるぞー!」


……って、ええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!?!?!?!?!!

納得できちゃうの!?それで?!?メンタル強すぎない?!?!?!?


【警告:以降不快な内容なので閲覧注意】



わんわん😄にゃおにゃん💕



 正直に申し上げてしまうと、経営者以外の人間にとっては商品の品質が良くなろうがクレーマーがファンになろうがどうでもいい。コンビニの店員にとって普段売ってる商品が改善されようがされまいがなんのメリットもないのだ。パッケージが開けやすくなろうが味が良くなろうが減ろうがサンドイッチはサンドイッチ、どれを売っても時給は変わらない。

 個人的に思うのだが、この手の話にはわりと大事な視点が抜けている。話のスタートは、"クレームを受けた現場の人間"なのにゴールは"企業全体"の話になってるじゃん。"前線の人がクレームとバトルすると経営者陣が美味しい思いをする"って構図じゃん😅

 やな感じで大袈裟な書き方をしてしまったのであれだが、品質が向上して末端の人間にメリットがないわけではないのは確かだ。

 苦情の少ないモノを提供した方がやり取りがスムーズにいくし、クレーマーがファンになるということは、すなわちクレーマーが1人減ることを意味する。宝の山とまではいかなくても、街頭で配っているポケットティッシュくらいの価値はある。でも経営者から"クレームは宝の山"といわれてもすんなりと"はい"って答えたくないのだ。ただのワガママだが、馬鹿にされているみたいでムカつくのだ、おまえにあげるわ!!イヤなことを嬉々としてやる奴は、全体にとっては事実上の敵なのだ。イヤなことを渋々やる素直な人が悪になってしまうからね。

 どうしても納得いかなかったことがある。私の会社では、年に一度ほど外部の講師を招いてセミナーが開かれていた。あの手の講師は大概リクノレ一トからやってくる。人造人間を送り込むレッドリボン軍か何かなのかあそこは。

 そして、ほぼ全ての講師は冒頭で自分の来歴を説明するが、彼らの輝かしいキャリアのスタート地点はたいてい現場担当、つまり末端の立場だ。

 私が聞いた講演では、主婦⇨売店の店員で始まるパターンと、中卒⇨クレーム処理係で始まるパターンの2種だ。こういった"ありふれた立場"からスタートする。その方が共感を呼びやすいのだろう。

 インフルエンサー的な意識高い系の人が来歴で"引きこもりを経"がちなのと一緒だろう。読んでほしいターゲットより1レベル下げたぐらいのステータスから成長するシナリオの方が受けやすいのだと思う。大学生に読んで欲しかったら主人公に引きこもりや中退を選ぶし、今回のセミナーみたいに平社員に聞いて欲しかったら、主人公をパートにする。そうすることで、聞く側に"オレもあの人のやり方で成功できるかも?"って錯覚させることができそうだ。

 セミナーの主人公はその後、発生したクレームを機転の効いたアイデアで解決し、活躍がお偉いさんの目に留まって昇進、今は講師として全国を回っている。というストーリーが多い、あの時があったから今の私があるんだって。だったら評価してくれた会社に残って貢献しねえのかよ!?

 納得いかなかったことってのはその講師が大抵"私はクレームが来るのが嬉しかったです、会社の成長につながるので"的なセリフを言うことだ。さっぱりノれない。だってその台詞、照準がセミナーの聴衆に向いてないじゃん。急にターゲットが講師を招いた経営者に向くじゃん。

 営業的にはそれが正解なのはよくわかる。話を聞かせるのは聴衆だが、"セミナーを開催し、招く講師を選択するのは経営者"だ。聴衆の役に立つ言葉よりも経営者が喜ぶ言葉を吐く方がどう考えたって合理的だ。「会社と交渉し設備投資や経費増額!」よりも「主婦の知恵によりコスト0でも売上アップ!」「一人ひとりが”自分ごと”の意識で成長!!」の方が喜ばれるに決まってる。

 コストを掛けずに成果を上げるには、基本的に手を動かす回数を増やすしかない。だけど単純に「お前らもっと働けや!!」って命令してもいうことは聞かない。だから外から来た人に「一人ひとり会社の一員って自覚を持とう」とか「働けるこの環境に感謝」的なを話させてノらせる。というプレゼンを売りつける。進研ゼミを買うのは子供じゃなくて親だもんね。

 わかってるけど「はい、ぼくもかつてはみんなと同じ立場、みんなの仲間ですよ〜🤗」ってはじまったセミナーが、いきなり"講師としての自分を売り込むプレゼン"に転調する瞬間が不気味で仕方がないのだ。サイボーグかよ!?あ、レッドリボン軍だったわ。


 と言うわけで2000文字にわたってわがままを言い散らかしてみました。

 この連休が終わったら私は4つのクレームに挑まなければいけません。神経質で大切なお客だからくれぐれも怒らせるなよと先方には念を押されています。会社はこの程度はクレームじゃねえからわざわざ持って帰るな、仕事を増やすな(意訳)とのご意向、俗に言う"板挟み"でございます。我が国の伝統芸能です。皆様の中にも現在進行形でドツボにハマっていらっしゃる方もいるでしょう。

 いやだ〜〜〜〜😭

 誰か代わってくれえええええええええええええええ😭

 めでたしめでたし


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