道州制はどうなった?🏬
「道州制」。この言葉がどこか懐かしく感じる。今回のコロナ禍で「都道府県」の果たす役割、存在価値が再認識されたが、もう少し大きな問題になるといきなり「国」となってしまい、地域ごとに異なる考え方や実情を反映する場所がない。これまでは国で決めていた政策を実現するのに、この制度は今の日本にはぴったりとも思ったのだが、政治の場で議論が深まることはなかった。
コロナ禍では東京一極集中によるリスクも再燃
東京だけ一向に減らないコロナ感染者の数に、地方分権、首都移転といった論点にいきなり持っていっても、動くことは難しい。日本はこの形で明治以来やってきているからだ。
2006年に内閣総理大臣の諮問機関である地方制度調査会が、「道州制のあり方に関する答申」を発表し、この答申の中では初めて具体的に「区域例」として、「9道州」「11道州」「13道州」の3例を示している。しかしこれ以降は主だった議論のたたき台が示されることになくなり、道州制議論自体も萎んでしまったのが平成時代の末期であった。
私達が「道州制」と聞くと、まずは州都は是非自分の県に
置いて欲しいという形にこだわる要望ばかりが先行してしまう。またこの枠組みなら入りたいけど、この枠組みには入りたくないなど。その先の与えられる機能や権限、長所、欠点をどうしたら減らせるかという深い論争はどこへやら。そして何よりも予算をどれだけ使えるようになるのか、国から如何に予算の権限委譲がなされるかが肝であるのだが、それには触れない。しかし今後の日本を占う上で避けては通れない問題であることは紛れもない。
この地域では「中四国州」はピンと来ない、「四国州」が当然
と推す声が多いが、その議論をするとなると州都問題が付いてくる。果たして州都はどこへという問いに広島市?いや岡山市だろうと揉める元となる。州都の持つ権限次第でどちらに付いたほうが得か、いや四国州ならうちの県が州都を置くに相応しいとなってしまい、その先の論点にはたどり着かない。問いに対する明確な答えは永遠に出て来ていないのも事実である。それはとりもなおさず高松市と松山市が甲乙つけがたい実力を持った都市だからである。
同様にして広島市と岡山市もお互いにマウントを取り合う
長年、四国の中枢管理都市と言われていた高松市だが、現在の状況は必ずしもそうではなくなった。交通結節点としての機能と、企業の支店が集まる中枢機能が後退。現在各企業は高速交通網の発達や情報通信の進歩、経営の効率化を狙い、支社・支店を撤退、格下げしたり、中四国支店として広島と高松の支店を岡山に統合するという新しい動きも顕著である。特に東西と南北の高速道路が十字に交わる地の利を生かして、物流機能を重視する会社は岡山県に物流拠点ごと新設移転と言ったケースもあるやに聞く。
松山市はなんと言っても道後温泉というキラーコンテンツ
という全国的にも人気・実力ともにトップレベルの観光資源を有し、人口も高松市よりも十万人多く、文学の街としてのイメージが定着している。鉄道やバスによる交通網は過不足無く発達していて、流通においても四国最大の売上げを誇る「いよてつ高島屋」があり、立派な商店街や歓楽街もにぎやかで四国最大の賑わいだ。
松山近郊には地元の流通企業であるフジが中四国最大規模のショッピングセンターを持ち、商業機能は一段と高まってきている。すでにスポーツ、文化施設はたいへん充実しており、野球では毎年数試合のプロ野球の公式戦が行われる、三万人規模でプロのフランチャイズ球場となんら遜色ない「ぼっちゃんスタジアム」ほか、サッカーではJ2で愛媛FCが活躍する他、Bリーグ所属のバスケットボールチームも誕生した。
四国を代表する規模の文化・スポーツ施設が松山市の強み
コンサートなども大規模なものは松山市で開かれる例が多い。三千人規模の県民文化会館に五千人規模の愛媛県武道館が他を圧倒。松山空港も国内路線数が圧倒的に多くあり国際線も飛ぶ、昨年度の利用客は三百万人規模で高松空港より百万人以上も多い。
松山市は松山城を中心とした景観形成にたいへん気を使っており、松山城を超えるような一定以上の高さの建物が建てられない分、ビル街は高松のほうが立派だと言われるが、今後はJR松山駅高架化・区画整理事業の伸展に伴い周辺の開発が進むと、整然と新たな街並が形成されることだろう。全体的に同じ城下町であるはずの高松市と比べると、美しい城下町の風情がそこかしこに色濃く残っていることで、独自の歴史的な深みを感じさせる街である。
高松市の強みは一体なんなのか?単に人口や産業構成、国の外局の集積、企業の支店の数などの目に見えるデータの違い。高知や徳島との関係性やアクセス性。街の機能や性格、産業、教育、文化や芸術の厚み。中四国州の広島か岡山かの選択以上に、高松と松山の違いはその視点を変えるとチョイスも変わってくるほど、難しい話のはずである。
論点を整理①国の道州制・州都論争の行方②中四国州か四国州のどちらを選ぶ③高松市と松山市の違いや強み④将来の州都設置に向けて
《最後のまとめ》 愛媛県は人口133万人と四国では一番多く、県土も圧倒的に広いため松山市を取り巻くバックボーンは実に大きなものがある。お互いに切磋琢磨して都市機能の充実を図りながら、将来の四国州の拠点となりえるだけの力を今からしっかり蓄えていかなければならない。高松市は松山市にはない駅や街と近接した港の機能をもっと強化を図ることが肝要だ。瀬戸内海を海に近いまちづくりとして積極的に取り込み、「瀬戸の都高松」と謳う上での真の魅力創出が意外に州都決定への近道と言えないだろうか?
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