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オレとそら #1「犬飼う?」 

突然、妻が「犬を飼っていい?」って聞いてきた。
妻は犬を飼ったことが無い。それほど動物に興味も無いと思っていた。
しかも、その少し前、新築で犬を飼ったら、犬が部屋のクロスを破き、ソファーに噛みつき、おしっこを家中にして大変になるという話を一緒に聞いた覚えがある。
・・・それ、本気?と、ハテナが浮かんだ。

犬と聞いて昔の記憶がおぼろげによみがえってきた。

犬と言えば、そう・・・かなり前・・・オレが中学生の頃、ジャーマンシェパード風の犬を飼っていた。ただし風であり、それではない。雑種だ。サイズは中型、いや、大型に近かったかもしれない。メスで賢い犬だった。でも知らないところに行くと人と人の間を歩くというちょっと怖がりの犬だった。

子犬の頃、バイクに乗った人に走りながら道に捨てられて、そのままクルクルクルと回って溝に落ちた。バイクの人はそのまま去って行った。それを見ていた妹が可哀そうだと拾ってきたのだった。

妹は「セシル」という名前で呼んでいた。しかし、全身黒色の毛だったのでいつの間にか「クロ」という名前で定着してしまった。そのうちに毛が生え変わり「クロ」は茶色になった。クロとはよく稲刈り後の田んぼの空き地で遊んだ。山登りにも一緒に行った。すごく素直な犬だった。昭和時代の犬なので家の外で飼い、番犬として働いた。時が経ち、オレをはじめ子供は巣立って家を離れていっても、クロはずっと家にいた。クロは20年近く生きた。そしてかなり前に死んだ。

正直、犬を飼うということは、かなり覚悟がいること。
毎日散歩にも行かなきゃいけないし、もちろん世話もしなきゃいけない。犬は猫よりも臭いはするし、吠えたりもする。
長ければ20年近く一緒に過ごすことになる。もちろん、最後も看取らなきゃいけないだろう。

内心ではすぐにでも飼いたい・・・と思ったが、いろいろと思いが馳せた。

話を聞くと、「ミニチュアダックスフント」と「トイプードル」とのミックス犬2匹だそうで、引き取り手を探しているとのこと。結局、行き場の無いミックス犬だ。しかもオス犬とのこと。

どうやら、妻の友達は1匹引き取るらしい。もう1匹の行先は未定とのこと。(引き取り手が最後までなかったら・・・)と、ふとよぎった。

オス犬、しかも、ミックスとは言え、ミニチュア犬同士の子どもなので、間違いなくミニチュア犬だろう。そうなると、家の中で飼うことになるのか・・・。

古い考えかもしれないが、犬は外で飼うものだ、と心のどこかにあった。犬を家で飼うと臭いもキツい。正直、臭いが苦手だ。しかも新居だ。

「これは、大変なことになるかもしれない・・・」

卑怯だが、オレは飼うかどうかの意見は保留し、妻と子供たちに意向を聞くことにした。ただ、確信はしていた。

結果は予想通りだった。

一気に家族全員、新たな住人を迎え入れるムードとなった。

第1話「犬飼う?」

次 第2話「違う2匹」
https://note.com/repo5/n/nf9cefa38ec32

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