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実践的ヨーロッパ・レンタカーの旅ノウハウ大公開
〜3月13日 18:00
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目次
はじめに
世界の絶景道路を選りすぐり、ひたすらレンタカーを走らせ、感動のポイントをカメラのフレームに収め、撮った写真を元に絵を描く、そんな旅を続けて来ました。
レンタカーを利用したドライブ旅行では、被写体の一番美しいと思われるフォルムを絶好のアングルとタイミングで捉える可能性を追求できます。団体ツアーや公共交通機関利用の旅では、機動性や時間の制約でなかなか思い通りにはいかないでしょう。
特にイタリアはバスや電車などの公共交通機関は時間に極めてルーズで、一時間も遅れる事があり、また、ストライキも頻発するので、運行自体がキャンセルされてしまう事もあります。 その点レンタカーの旅であれば、道が続く限り、車が壊れない限り、移動に支障が出ることはまずありません。撮影ポイントを自由に選べるし、滞在時間も自由、引き返すこともできます。
また、団体旅行やガイド付きツアーは仮面舞踏会のようなもので、人々は異邦人に対して、あたかも仮面をつけたように対応しているのかもしれません。
レンタカーの旅は、ある程度行き当たりばったりのところがあるので、道に迷ったりして、予定外のハプニングは避けて通れません。
ハプニングへの対応の中でリアルが垣間見られることがあります。リアルをシャッターに捉え、新たな認識が重層的に蓄積される。この充実したワクワク感が実に面白い。
2024年の5月から6月にかけ、ドイツからオーストリア、イタリアのアマルフィまでヨーロッパの南北三千キロ弱を一気通貫で駆け抜けて来ました。
通った道の中には、世界の絶景道路に挙げられる、グロスグロックナー山岳道路、ドロミテ街道、カッシア街道(トスカーナ)、アマルフィ海岸道路等が含まれます。
絶景道路だけではなく、通ったルート上の主要観光都市には、絵になる世界遺産の中世の街角や、崇高な芸術作品群が至る所にあります。撮ったフォトやVTRの殆どが最高の素材で、枚数にして二千を上回ります。
これだけの取材を敢行するには事前の情報収集が欠かせませんが、これが大変な作業でした。まず、レンタカーでヨーロッパを旅する為に好適なガイドブックなるものが、知る限りでは日本にはまず見当たらないのです。
ネットに頼るにしても、ノイズのような情報は多々ありますが、現時点でのローカルな生の情報はイタリア語だけだったりします。
パソコンやスマホの翻訳機能を使えば何となく内容を把握することは出来ますが、日本語訳だとちょっと意味不明な箇所も散見され、英語へ一旦翻訳しての解読を余儀なくされることも少なくありません。
想像と現実には、やはりギャップがつきものです。旅先の情報やノウハウは実際に体験した人から得るのが一番確実です。今回、収集し、体験し、蓄積した貴重な知識や記憶を忘却の彼方に置き去りにするにはもったいない気がして、同好の士の為に筆をとってみました。
観光ガイド任せにするのではなく、自力で主体的に旅行計画を策定し、実行したい方々には、かなり参考になるのではないかと思っています。
この本は、旅行計画の策定から各種準備のためのノウハウ、各道路別、都市別の主要なポイントやドライブのノウハウを、手短かに把握出来るように纏めてあります。
ご一読頂ければ、貴方もヨーロッパでのドライブを、あたかも国内旅行のように、気軽に楽しむことが出来るようになります。
イタリア、特に南伊でのドライブは難しいと言われています。初めての方は尻込みしてしまう方もかもしれませんが、実際に行ってみると、そんなことは全くありません。
シーザーの著名な言葉ではないですが、「行った。見た。勝った。」を是非実践してみてください。
Ⅰ 旅行の準備
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1.旅行計画の策定
まずは計画。事前の計画はできる限り綿密に策定しよう。いかに自由気ままな海外レンタカー旅行といっても、いろいろな制約がある。帰国便やレンタル期限の制約は当然のこととして、イタリアの人気の博物館や美術館は今やほとんどがネットの事前予約制になっている。しかも全額前払いで返金不可。
予約制度を利用しないと長い行列の最後尾で延々と待たされ無駄な時間を消費することになり、スケジュール通りにいかなくなる恐れがある。一方で、事前予約すると、時間どおりにエントランスにたどり着けなければ前払い分全てが無駄になってしまう。したがって、できる限り正確な予測にもとづいて計画を組み立てることが重要になる。
本書では、走破した主要ドライブコースやフォトスポット、観光スポットなどを所要移動時間等の情報と併せ記載しているので、適宜滞在日数に応じて選択し組み合わせれば、比較的正確なオリジナルプランを描くことができる。興味のある博物館や美術館で、オーディオガイドなどを利用してじっくり鑑賞すれば、相応の時間を要するだろう。滞在時間は人それぞれではあるが、できるかぎり余裕をもって設定したい。
本書の全行程をあちこち寄り道してじっくり探索しながら走破するには、凡そ1か月くらいは必要となる。旅行日数に限りがある場合は地域限定で本書の情報を利用し、効率的なスケジュールを組んでみよう。
歴史探訪や美術鑑賞などに時間を割くのをすこし我慢して、絶景フォトの撮影のみに絞ればかなりスピーディーに回れるはずだ。
2.ドライブルートの確定
行きたい所が決まったら、次にドライブルートを決める。これには一枚紙のマップが便利である。大手書店やネットで“MARCO POLO”などのマップを入手し、行きたいスポットをマッピングし、高速道路などのラインで結んで凡そのドライブルートを決める。
同社のマップは各種地域や範囲のものが揃っており、行動範囲に応じて適宜選択する。南ドイツ、オーストリア西部、北イタリアに限れば65万分の一のALPSが使いやすいと思う。
イタリアの詳細なドライブマップとしては“Touring Club Italiano”がある。これは分厚い大判の冊子で、数冊に分かれており結構かさばるので、現地のガソリンスタンドなどで適宜必要に応じて買い求めてもよい。ローマの市街図などは、通りの名前を全て網羅していてなかなか便利であった。
ナビだけで良いではないかといった意見もあろうが、ナビだけでは全体感が掴みづらいし、ナビが100%正しいとは言い切れないので、ナビの進路を確認するためにも紙のマップは重宝する。ナビも勘違いすることはありうるし、ナビ自体が使えないといった事態もありうる。
ナビの使い方については後述するが、特にラウンドアバウト(ロータリー)や市街地走行では方向感覚が重要なので、紙のマップで全体の位置情報を常に頭にキープしておいた方が、誤った選択による時間ロスを防げる。
3.航空券の手配
ルートと滞在日数が決まれば、全行程の所要日数が把握できる。日数が確定してから航空券の手配に入る。現地の季節性や天候、祭日や催し物の日程など留意しつつスタート日とゴール日を決める。
注意しなければならないのが、公園の休園日や博物館、美術館などの休館日だ。やっとたどり着いたが閉まっていましたなどということが往々にしてある。ここは外せないと思ったら日程の組みなおしだ。ヨーロッパでは月一度の無料の日などが設けられていることが多いが、予約が取りづらいし混雑するので、避けた方が無難かもしれない。
およその旅程を決めてから航空券を予約する。ヨーロッパのハブ空港往復であれば日本のエアラインも飛んでいるが、周遊的なコースとなるとヨーロッパ系の方が有利ではある。
中近東系のエアラインは破格のプライスを提示しているが、往復南回りで時間がかかり、ドバイなどで半日から一日暇を潰す必要がある。ついでにドバイなども見てみたいといった人向けだ。北京経由ヨーロッパ行きの中国系割安エアラインもあるようだが、これも「北京の休日」となるらしい。
航空会社やExpediaなどのサイトではホテルやレンタカーのセットで航空券を販売しているところもある。全て込みで多少割安であるようだ。ただ、対象となるホテルやレンタカー会社が限定された中での選択となる場合もあるので留意したい。
なお、航空券は変更可能なものにした方が無難だ。不測の事態でも起これば遅延のリスクも考えられる。多少コストがかかっても柔軟性を持たせたい。いずれにせよ、万が一に備え、2日くらいは余裕をもって日程を組んだ方が良い。
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2月11日 18:00 〜 3月13日 18:00
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