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急成長を遂げるサンワカンパニーの脅威とは

前回の3C分析PEST分析に続き、今回は5forces分析。この5forces(ファイブフォース)分析、名前は聞いたことがあったのですが、使ったこともなければ、なぜやるのか、どうやってやるのかもよくわからない状況でした。

色々調べた結果、簡単にまとめると、5forces分析は、5つの競争要因(脅威)を分析することで、その業界の収益性、魅力度を考えるフレームワークということがわかりました。5つの要因とは、下記の通りです。

「供給企業の交渉力」「買い手の交渉力」「競争企業間の敵対関係」という3つの内的要因と、「新規参入業者の脅威」「代替品の脅威」の2つの外的要因、計5つの要因から業界全体の魅力度を測る。     参考:wikipedia

言葉が難しくてぴんとこない、、、
ということで、わかりやすく例を出している記事を見つけました。
マクドナルドを例に出して解説されています。

こちらの記事によると、5つの要因は下記のようになります。

①売り手の交渉力→「強」食肉加工業者や穀物商社。大量仕入れが可能。
②買い手の交渉力→「弱」一般消費者。差別化された商品かどうかが鍵。
③競争企業間の敵対関係→「弱」モス、ロッテなど。
④新規参入業者の脅威→「弱」シェイクシャック、カールスジュニア等。
⑤代替品の脅威→「強」ラーメン、カレー、牛丼、回転ずし等。

具体例のおかげで、やっとイメージができてきました。
そこで生まれた疑問は、「で、この5つの力を知ったところでどうなるの?」ということ。勘が鈍いこと。こちらのサイトにヒントがありました。

ファイブフォース分析の目的は、まずその業界の競争構造・収益構造を知り、自社の競争優位を保つためにはどのような脅威に備えなければならないかを知ることです。

前回PEST分析で「脅威」について考えていたので、その脅威をより解像度を高めるためのものなんだという理解をしました。

「脅威」のことばかり考えていて、ビジネスってそんなものなの?と一瞬思いましたが、「自分が大きな舟の船長なら」と考えると頷けます。船員、乗客を目的地まで安全に送り届けることが一番大事な使命。ここを考えずに行き当たりばったりで舟を進めるのは危険でしかありません。

自分の仕事に置き換えてみても、クレームが出てしまう現場は、担当者の危機察知能力不足によるところが大きいです。「ヤバイ」のシグナルを出すのが遅い場合は問題が大きくなります。ミスが起きても発生してすぐ報告、もしくは、優秀な人はミスが起きそうだなという段階でシグナルを出すのでクレームまでには発展せずにすみます。

マーケターではなくとも、仕事においては「脅威」に敏感すぎるくらいでちょうど良いのかもしれません。この5forces分析は市場を舞台にした「ヤバイやつ発見器」だと考えてみることにします。ちなみここでいうヤバイとはEXILEが使うヤバイ(良い意味)ではなく、マジでヤバイ(悪い意味で)ということを補足しておきます。

前置きが長くなりましたが、前回に引き続き、キッチンなどの住宅設備機器の製造、販売を手がけるサンワカンパニーさんを題材に5forces分析をします。ちなみに僕はサンワカンパニーさんの社員でも回し者でもなんでもなく、一ファンです。

もしも自分がサンワカンパニーのマーケティング責任者だったら。

①業界内の競争・・・「強」
LIXILとパナソニックの二強で住宅設備業界の全体の40%近くのシェアを占めています。この2社を中心に3大きな再編がおこなわれていく可能性も無視できません。この2社がどんな動きをしているのか、しようとしているのか、どこのポジションを取りに行っていて、穴はどこにあるのかは注目すべきです。
参考:業界動向SERCH.COM

②売り手の交渉力・・・「弱」
IR資料を見ると、「下請け工場」「孫請け工場」が売り手にあたります。
サプライチェーンの簡素化により、業界内の他社に比べれば、売り手の交渉力の影響を受けにくいのではないかと考えられます。一方で、2018年9月期には、台風の影響で、生産委託工場が被災し、売上を下方修正しています。今後も間違いなく自然災害は発生するので、この教訓をどう生かすのかが株主の信頼を得られるかの鍵になりそうです。

③買い手の交渉力・・・「弱」
サンワカンパニーにとっての買い手は、「工務店」「施工会社」「ゼネコン」などの法人と、「これから家を建てる人」、「リフォームする人」の個人の主に2つに分けられます。工務店など、日常的に取り扱う機会が多い法人にとっては、十分設備の情報をもっていることが考えられ、交渉力は強めだと考えられます。一方で、一般ユーザーにしてみれば、住宅設備を一生に何度も買うということは稀であるため、ユーザーは十分な情報を持っておらず、交渉力は弱いものと考えられます。サンワカンパニーはサプライチェーンの簡素化により、コストダウンをはかり、明確なワンプライス販売を実現しています。それが一番生きるのが「施主支給」でしょう。施主支給とは、ユーザーがメーカーから直接購入して、施工だけ工務店にお願いをするというものです。施主支給の普及が鍵になりそうです。IR資料見てもわからなかったのですが、法人と個人の販売比率はどれくらいなのか、過去5年くらいでみたときの推移、また今後の見通しが気になるところです。

④新規参入者の脅威・・・「弱」
自社で工場を持つということを考えた場合、初期コスト等を踏まえ、参入障壁が高いと考えられます。自社で工場を持たない場合は、大量発注しない限りは製造コストを下げることが難しいため、こちらの場合でも参入障壁は高いと考えられます。そのため「弱」にしました。

⑤代替品の脅威・・・「強」
キッチンやお風呂、建材が何かに取って代わられるというのをあまり想像できませんでした。もしかしたらamazon kitchenやgoogle bathroom(完全に僕の思いつきです)、全く別の形のものが生まれてくる可能性があります。3Dプリンターや図面のオープンソース化によって、大きな工場や効果な設備を持たなくとも、一般ユーザーがオリジナルの住宅設備を作れる未来が来るかもしれません。そうなると、住宅設備を「買う」から「作る」へとパラダイムシフトが起こるため、脅威がかなり高まる可能性があります。現在ではあまり聞く話ではないですが、テクノロジーの発展のスピードは今後も加速しそうなので、現在素人の僕でも想像できてしまう=それを容易に超えていくスピードとクオリティで実現してしまう可能性があるということで、「強」にしました。

以上をもとに、マーケティングトレースの生みの親、黒澤先生に頂いたテンプレートをもとにまとめてみます。

まとめ

まず無視できないのは業界2強の存在。強者の戦略を取っているはずなので、ミート戦略で一気に攻め込まれる可能性があります。この2社が仮にミニマルをコンセプトにしたキッチンを大量生産して、価格もワンプライスにしてきたとしたら価格競争に巻き込まれ経営リスクが高まります。そこまで極端ではないにしろ、潤沢な資本を元に、戦略を真似される可能性があるので、動きに注目です。合わせて、この2社がどんなミッション、ビジョン、バリューで動いているのか、どんなポジショニングをとっているのか、またとろうとしているのかを分析します。その上で、サンワカンパニーとして、市場をどうセグメントして、どんな顧客をターゲットにし、どうポジションとっていくかを考えます。

また、サプライチェーン簡素化の唯一のデメリットかもしれませんが、仕入先の工場が万一被災してしまった場合のリスクマネジメントが課題です。今回、決算資料説明書に台風の影響により下方修正とありましたが、同じことを何度も繰り返せば、信頼を損ねます。早急な対応策の明示が必要だと考えます。

売り手について。回り道かもしれませんが、「施主支給」ということを市場の当たり前にできれば、サンワカンパニーの強みが存分に生きます。既存勢力は掛け率などにこだわってなかなか進まないかもしれませんが、ここにエンドユーザーの「不」があることも確か。どんな切り口でやれば、「施主支給」が当たり前になるのか。市場のプレイヤーを巻き込んで、痛みを伴う改革をやっていくことが求められます。

新規参入について。ここに関しては製造拠点を持つ持たないに限らず、製造コストのことを考えると、参入障壁は高いものと考えられます。とすると既にいるプレイヤーの中でのパイ取り合戦。いかに差別化し、いかに新しい価値をユーザーに提供するかが鍵になりそうです。

代替品については、不確実要素が多く、悲観的すぎるかもしれないですが、脅威は強いものとみました。Ubarがタクシー業界を席巻し、今やUbar EATSにより飲食業界の在り方も変えようとしているように、ITやテクノロジーを使って既存の業界構造が大きく変わることも常に頭の中に入れておかなければなりません。

以上、サンワカンパニーさんの5forces分析でした。前回までのはこちら。3C、PEST、5forcesときました。これをもとに次回、STP分析へとつなげます。

1つの企業を色んな切り口で見ると、脳みそが汗だくになりますが、段々好きになります(笑)




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