見出し画像

家具美術館な家

見ているだけでセンスがあがりそうなリノベーション事例の紹介です。
白を基調としたミニマルな空間の中に映える北欧のビンテージ家具。
好きなものだけに囲まれたスッキリとした空間。
引き算の美学が詰まっています。
これは、リノベーション・オブ・ザ・イヤー2018の1000万円以上級で最優秀賞を受賞した事例です。
これが今のリノベーションの最先端かつ、最上級と言い切ってしまっても良いのではと思います。
リノベーションに興味がある方、住宅購入を検討されている方、今の住まいに不満がある方、必見です。

約240を超える応募の中から、なぜこの事例は最優秀賞をとれたのか。
選考された方々の視点はこうです。

選考委員長 島原 万丈 LIFULL HOME'S 総研所長

リノベーション市場の主戦場であり、最もエントリー数が多い激戦区の1000万円以上クラスを制した「家具美術館な家」は、住まいづくりの新しい潮流を予感させる作品だ。
「美術館」のネーミングの通り、施主がコレクションしたデンマーク家具や照明の名作を見せることに特化した空間である。白基調に仕上げた床壁天井は、主役である家具を引き立てる背景に徹している。建築家のポートフォリオや建築雑誌を眺めるとわかるように、住宅デザインの現場では、建築が主役でありインテリアは脇役というヒエラルキーが相場だ。この作品は、その主従関係を逆転させたのだ。
デザイン評論家の柏木博は、「室内を意味するインテリアには、さらに『内面的な』『精神的な』あるいは『心の中の』といった意味がある。ものが集積されたインテリアは、そこに生活する人間の内面、主体を投影しているのである」とインテリアの本質を語る。その意味で、「家具や什器が住宅を住まいとして成り立たせている」のである。そう考えるとこの作品は、住まいづくりとして本来まっとうなアプローチであり、リノベーションの仕事を通じてインテリアの地位を向上させる流れを作り出す契機になるかもしれない。簡潔にして豊かさを感じるネーミングや、美しく切り取られた写真にも、施主の美意識が表れているように思う。

リノベーション・オブ・ザ・イヤーの選考委員長を務める島原万丈氏。
彼が提唱した『センシュアス・シティ』という考え方は、当時20代の僕の心にぶっ刺さりました。刺さる人には刺さるあたらしいモノサシです。
建築が主体でインテリアは脇役という主従関係の逆転というところが評価されています。いや、逆転ではなく、本来そうあるべきなのだという強いメッセージを発しています。

選考委員 西尾 洋一 Casa BRUTUS編集長

1,000万円以上の最優秀賞「家具美術館な家」は、夫妻がデンマークで集めた北欧家具がコンセプト。そのコレクションは、ハンス・J・ウェグナーがデザインしたGETAMA社の一人掛けソファ《GE 240》にデイベッド《GE 258》、アルネ・ホブマン・オルセンのコーヒーテーブル、ボーエ・モーエンセンのシェーカーチェア《J39》、カイ・クリスチャンセンのアームチェア《model 32》、アルヴァ・アアルトの《スツール60》、ポールへニング・センの照明《PH5》、ヨー・ハーマボーのペンダントランプ《Orient》など、かなりの名品揃い。 一方で、日本と北欧は国土の大半が森林で家屋は木造が中心など多くの共通点があるせいか、北欧家具ファンはさほど珍しい存在ではない。それでもなお、この空間が新鮮に見えるのはなぜか。北欧家具の部屋は往々にして木の温もりと同調したほっこりとした空間になりがちな中、それとは真逆のベクトル、床は薄いグレーのPタイルを敷き、壁と天井は白の塗装で仕上げ、美術館のホワイト・キューブ的な空間を目指した。すなわち家具を展示作品に見立て、深みのある木の色や有機的なフォルム、ファブリックの色合いを際立たせる方向に注力したからだ。しかも、家具の寸法と配置と用途を改修の基準にすることで、部屋のどこからも家具が視界に入るという設計の緻密さ。「家具美術館な家」というコンセプトをやり切った見事なリノベーションだった。

Casa BRUTAS編集長が評価した点は設計の緻密さ。家具を作品と見立てる美術館をつくるように、配置、寸法、色を吟味したところが高く評価されています。

センスが磨かれる家

僕がいいなと感じたところは「余白」です。
白い余白は常にインスピレーションをくれます。
「ここに何を置こう」
「どんな花を飾ろう」
「絵はどんなのが良いかな」
美しいものへのアンテナが張りっぱなしの状態。
これは間違いなくセンスが磨かれ続けると思います。
ただ生活するためだけではなく、人を成長させてくれる家なのです。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?