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「人間の器量」 福田和也 エシモの備忘録

人間の器量
福田和也著

◯この本から学びたいこと
これからは間違いなく個人の力で未来を切り開いていく時代。周りに流されていては暗い未来しか待っていない。そんな時代を生きていく上で求められるものとは何か学びたい。

◯備忘録
・著者が若い頃にお酒と女性を教えてもらった大先輩のセリフ
「私もね、若い時にいろんな人に可愛がってもらった。面白い、驚くような体験をさせてもらいました。でもね、そういう人たちにはお返しが出来ない。あちらは立派だし、こちらが何とかなった頃には鬼籍に入っている。だからね、代わりにあなたのような若い人に返してるんですよ。ウマの合う人に。上から貰ったものは、上には返せない。だから、下に返す。若い人にね。あなたも、そうすればいい。そうやって街というものは成り立っているのだから」

・日本人が小粒になった理由
戦争にたいする覚悟がいらなくなった

・先人から器量を学ぶ
老子「戦勝以喪礼処之」
戦争に勝ったものは葬式に行くように、敗者に対して恭謙に振舞わなければわならない、けして放漫に振舞ってはならない。

山本周五郎
彼は原稿料や印税は、山本周五郎が、山本周五郎であり続けるために、出版社、新聞社、何よりも読者がしてくれる投資であって、けして収入ではない。だから作家が原稿料を貯金したり、それで家をたてたりすることは、金を「私」すること、つまり横領することだと解釈していた。

・器量を大きくする五つの道
一、修行をする
二、山っ気をもつ
三、ゆっくり進む
四、何ももたない
五、身を捧げる

一、修行をする
勝海舟の修行
みずから島田虎之介に弟子入りして、剣術の修行を行う。稽古前に早朝から神社の前で座禅を毎日続けた。
「勝とうと思いこんでしまうと、知らずに気持ちが急いてしまい、頭に血が上り、動悸が高鳴り、処置を誤って動きがつかなくなってしまう。あるいは守勢に立たされると萎縮してしまい、相手のいいようにされてしまう。大きいことも小さい事も、すべて、この法則に従って起きるのだ」虚心坦懐の勝海舟ならではの言葉

ある処まで、自分を縛り、厳しくするということは必要だと思いました。

二、山っ気をもつ
とりあえずやってみる、というのが大事。三日坊主でも何でもいい、失敗してもいい。やっているうちに事態が動く。

高橋是清の山っ気
少年時代にアメリカに留学したが、現地人に騙されて奴隷として売り飛ばされる。しかし、奴隷と気づかず修行と思ってこれを耐える。帰国後、東大教員になったが、吉原通いが昂じて借金で首が回らなくなり辞職。その後相場師になり、ペルーに渡り銀山を開発しようと試みるが無一文になる。と、とにかくいろんなことをやっている。それでも、再起不能にならなかったのは、根が楽天家で、人が良かったから。いずれにしろ、稼いでやろう、設けてやろうと動きまわるのは、よいこと。

三、ゆっくり進む
「忘れられた日本人」宮本常一から学ぶマイペース
自分の足で歩いていくことは、人と出会う事であり、考える事、見つける事。誰もが高速で移動する時代に、自分の足で移動することは、その分、丁寧に物を考え、発見するということ。

真面目な人ほど、焦ってしまう。急がざるおえない。けれども、急ぐということは、それだけ考えないということであり、見ないということでもある。その事になかなか、人は気づかない。

ゆったり生きることで、自分なりの風格を身につける事ができる。大事なのは、ゆっくり生きるのは、生きるなりの知恵がいるという事。

ゆっくり進むというのは、一人で進むという事。孤立すること。孤立した人間ほど、世間とのつきあい方を考えなければならない。冷静に自分を認識し、世間との距離を精確に見極めなければならない。

四、何ももたない
松下幸之助は何も持っていなかった。父の事業の失敗で、家族は離散した。学もないので独学。自宅の土間で、ソケットを作るところから、事業をはじめた。事務所を構えたり、宣伝したりというような事は一切しない。今いるところで、元手なしで出来る。そこからはじめたから強かった。

金のためではなく、理想のために働くのが喜びにつながる。

五、身を捧げる
戦時中の栗林忠道、石原莞爾、今村均大将などを例に挙げ、与えられた任務に全身全霊を捧げる生き方を紹介している。


終章 今の時代、なぜ器量が必要なのか
・死んで動かなくなれば、全て終わり。
その終わりに向かって、その道程の長短はあるけれど誰もが歩いている。であるとすれば、その道程をできるだけ充実させるように励み、試み、考えるしかありません。動けなくなるその時を、死を、見苦しくなく、なるべく思い残すことなく、迎えるために。

見苦しくなく死ぬためには、人間としての容量を大きくするしかないのです。

私の恐怖を克服したのは高校生の時。きっかけは恋愛。人を好きになると、好きな人と一緒にいると言うことが、とりあえず自分の姿を恐れると言うことから、私を遠ざけてくれました。自分が死ぬという事よりも、その人が死ぬ事の方を恐れるようになる。あそこに連れて行ってあげたい、あれを食べさせてあげたい。たいした力はないけれど、その人の希望を叶えてあげたい、その助力だけでもさせて貰いたい。
死を恐れる、自分の存在がなくなるのを怖がる、というのは、結局、自分の事しか考えていないからこそ湧いてくる想念なのですね。

自分の死などでくよくよするよりも、子供が一人で出掛けても安心な世の中を作る、支える事の方が、何千倍も、何万倍も貴重で立派な仕事です。

仕事を旺盛にしている人は、周りの人のために働こうとする義務感を持っている。逆に言えば、そういう自覚なり意識なりを持たない人は、一時期、もて囃されても、長くは続きません。

結局、気にかける人、心を配る人の量が、その人の器量なのだとおもいます。


あとがき
器が大きいと云われるほどの人物は生涯かけて自分を新たな場所に立たせ続けてきたのではないでしょうか。
多様に人と付き合い、多くの人を好きになり、多くの人々を気にかけている。慮りの広さが大人物といえる条件

◯この本から学び、今後に生かしていきたい事
この本のメッセージを一言で表すと、「自分以外の人のために、自分の命を燃やせ」だと思う。勝海舟は幕府側の人間だったが、日本という国を世界から守るために命を燃やした。戦時中の日本兵は、自国の人々や家族の命を守るため、そしてその先の民族の未来を守るために自らの命を燃やした。松下幸之助は家電製品を水道のようなインフラ並みに普及させて、日本人の生活を豊かにするために命を燃やした。昔の日本に彼らがいたから、今の自分たちの豊かな生活がある。

時代は変わろうとも、愛する人々のため、社会のため、国のために生きる人には、覚悟と修行が必要。

自分のことばかり考えて生き、最後に死を怖がるようなみっともない人生を歩まないためにも、今一度考えを改める良いきっかけになった。

人間の器量を増やすための修行は、何歳からでも始められるらしいので、まずは小さなことから始めてみようと思う。

ぼくは最近サボりがちだった座禅を再開する……!

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