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毎月買いたくなるアクティブファンド、贔屓にしたいレストラン ー 5つの”P”

部屋の本棚。一番下の列にズラッと並んでいる"dancyu" 

ずっと本棚に並べていたけれど取り出すことは・・・ありません笑

古いものは20年以上前のもの。掲載されていたお店をネットで確認してみると、ミシュランの星をゲットしているお店もあれば、既に閉店してしまったお店も散見されたりで時の流れを感じます。

閉店の事情はお店ごとに違っているんでしょうね。惜しまれながらやむを得ず、常連さんが涙、涙のそんな閉店もあったことでしょう。

お店、レストラン。

アクティブファンド。

似ているなあ、って思いました。

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スタートから1年経った、定期購読マガジン「アクティブファンドを眺めてみた

毎月3本のアクティブファンド、僕が保有しているファンド、気になった関心を持ったファンドを眺めています。

ファンドを眺めてみる枠組みは、5つの「P」です。

運用評価におけるポイント「フィロソフィー(Philosophy)=投資哲学」、「ピープル(People)=人材」、「プロセス(Process)=投資プロセス」、「ポートフォリオ(Portfolio)=ポートフォリオの構成」、「パフォーマンス(Performance)=運用効果」のこと。

この説明では、5つの「P」に特に軽重を付けているようにも見えませんが、僕は以下の順で軽重を付けていて、それに合わせてアクティブファンドを眺めるようにしています。

一番重要なのが 

People

だと考えています。

自分が買う、毎月買い増していくファンドとは、長くお付き合いしたい。レストランであれば、長く通いたい。その時間を楽しみたい。そう思います。一度きりの食事であってもお店に関わる人たちが気になることもあると思います。長くお付き合いするなら、当然、お店のシェフ、料理長、大将?はもちろん、お店のサービスに関わる人たちがどんな人たちか気になるものでしょう。

アクティブファンドも同じことが言えると思います。ファンドマネジャーはもちろんですが、投資先やその候補の調査、分析をするアナリスト、日頃の行動を発信するIRに携わっている人たち、マネジャーのオーダーを元に注文を出すトレーダー、日々の基準価額を計算している計理の皆さん。たくさんの人たちが関わってファンドが運営されています。そういうところに関心を向けてくれているという意味では、レオス・キャピタルワークスさん、コモンズ投信さんの発信は非常に有り難いですね。

お金を託す、預ける相手ですからね。理想をいうと、転職等でその場を離れられたりしたらそれも教えてもらいたいな、って思います。その人がいいな、って思って選んだ人だっているでしょうから。

ファンドに関わるPeople。もう一つ、非常に重要な存在がいます。

投資家。ファンドにお金を託す受益者です。投資家なしではファンドが成り立ちません。

レストランほどには分かりませんが、同じ空間に居合わせている、乗り合わせた他のお客さんの雰囲気や行動も大切ですね。

コロナ禍でオンラインでの運用報告会が増えました。画面の横にはチャット。そのチャットを見ていると、同じファンドに乗り合わせている人たちがどんなことをお考えになるのか、が垣間見えることがあります。リアルの報告会とは違った雰囲気を感じ取ることが出来ます。「こういう考えの人も、このファンドにはいらっしゃるんだなあ…(以下、自粛)」と。

鎌倉投信さんが報告されています。

こうした発信からもPeopleを感じ取ることが出来ますね。

アクティブファンドを眺めてみた」では、ファンド受益者の人たちがどんな考えでそのファンドに集っているのか、までは当然分かりません。ですから、注目しているのは受益権総口数の推移です。ファンドへの資金の流出入がどんな具合なのか。そこから、ファンドを継続的に支持、毎月買い増している常連さんの存在を探ろうとしています。こんな感じです。

ひふみワールド_NAV_UNITS_present

常連さんの存在は、株価が低迷した時に特に重要になると考えています。株価が低迷している場面に、常連さんが新規の資金をファンドに託してくれれば、値段の下がった、本源的価値に比してエラく安くなった株式を買える可能性が高まるだろう、そう推測しているからです。株安の局面で資金流出、株高の局面では資金流入、仮にこんなファンドがあったとしたら、それは常連さんの居ない可能性が高い、となるわけです。

People、これが最も重要だと僕は考えています。

続いて、

Philosophy

です。

Philosophy、哲学。それをつくるのは、人、Peopleなんですよね。鳥羽さんの記事を読むと、それを感じます。哲学をハッキリと発信するレストランは少ないのかもしれません。しかし、長く支持される、愛されるお店には、きっと哲学があるはず、そう想像します。食材の選び方、料理の提供の仕方、サービスのあり方、お客さんとの関係づくり、様々なところにお店の哲学、イズムがある。

アクティブファンドの哲学も同じで、そこに人の存在が感じられるか、それを析出するためにどれだけの手間が掛けられているのか、はとても気になります。

投資は“まごころ”であり、
金融は“まごころの循環”である

鎌倉投信さんの投資哲学です。


鎌倉投信さんの運用報告会で毎回示されるこのグラフが好きです。

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このグラフから、投資先の会社が価値をつくり出し続けて、着実に蓄積していることを感じるのです。

うん○ がドンドン積み上がっている、、、と考えると、アレな訳ですが、利益が出ない、赤字になれば、このグラフは右肩下りになってしまうのです。

レストランの話もしているのに、「うん○」なんて言葉を使ってしまった、、、

5年前に、まろさんがつくってくださったこちらの記事もご覧になってみてください。


売らなくていい会社しか買わない

NVICさんの哲学を一言で言えば、こうなるでしょう。

分かること、「ミクロ」を徹底的に、できるだけ正確に知ろう。

その会社が今どういう状況で、経営者が何を考えていて、どういうことを問題として意識し、解決しようとしているかという「ミクロ」を集積する

スパークスさんの哲学はこの箇所に惹かれます。

自分のシナリオが崩れたときに嫌いな銘柄が助けてくれることがあるんです。なぜかと言うと、価値観がずれているから。
“逆さ柱”を入れるのは、「自分の予想が外れているかもしれない」と考えるからでもあります。

最近読んだインタビューですが、この藤野さんのお話はとても印象的でした。これも一つの哲学だと感じました。

アクティブファンドを眺めてきて感じるのは、この哲学の部分での物足りなさです。どういう基準で投資先を選び出し、投資先とはどんな風に付き合っていくのか、そうした説明を丁寧にしているファンドが極めて少ないのです。その考えが示されていないのですから、1年も経たず、数ヶ月程度で受益者が離れてもそれは当然のことと思えます。6000本もファンドが存在する理由の一つでしょう。

哲学は人によって形作られるもの。そこに手数をしっかりと掛けているか、は長い支持を得るには必須。

Process

Philosophyに続いて、重きを置いているのはプロセスです。

この説明も極めて貧弱なファンドが多数。金太郎飴のように、数多くのファンドが揃って、三角形(逆三角形)を描いて、投資先候補を絞っていく様を目論見書で説明しています。でも、絞り込んでいくのは当たり前のことです、アクティブファンドなんだから。どう絞り込むのか、どんな調査、分析を行って、どんな具合に投資判断するのか、そこを具体的に書かないと分かりません。そこが「”プロ”セス」です。”プロ”なればこそ可能な仕事が出来るのだ、しているんだ、それを示す必要があります。

NVICさんが作成された2つの月次レポートを上に貼ってみました。1社ずつ、非常に詳しく分析、解説されています。紹介されている2社はどちらも投資先”候補”です。投資先の選定のプロセスの一部を紹介されています。個人投資家でもこのレベルの調査、分析が出来る人もいるかもしれません。でも、僕は素直に思いました、これが「プロ」の仕事だ。「”プロ”セス」って。

つまり、こんなことはとても自分では出来ない、ここまでの調査、分析、評価なんて出来っこないわ、そう思わせるアクティブファンドがどれだけあろうか、ということです。

ちょっとレストランから離れちゃいましたね。プロセスという意味で、思い出したのがこちらのレストランです。

朝8時に築地に集合し、場内市場で購入した食材で石田シェフがアドリブで料理し提供するという「トミーノと行く、築地ツアー」

ツアーに参加したことはありません。でも、このツアーに参加したらきっと分かると思うんです、「プロって違うわ」って。


ファンド運営のプロセスという観点で、「アクティブファンドを眺めてみた」では、月次レポートの発信内容も注目しています。

多くの月次レポートには、この種の説明が書かれています。

今月の基準価額のプラス要因となったのは、A社、B社、マイナス要因となったのはC社、D社です。A社は月初に発表された上方修正が・・・

株価上昇、下落の理由がはっきりしているケースは良いでしょう。以前にファンドマネジャーの方からお聞きしたのですが、その月、プラスに一番貢献した投資先について「どうして株価が上昇したのか分からないこともある。けれど、↑のテンプレートがあるために理由を求められる」と。短期の株価の動きは説明つかないケースもあることでしょう。気まぐれな市場、その評価の理由を(無理くり)想像することは、果たして「プロ」の仕事でしょうか。その仕事に期待してお金を託しているのでしょうか。

こんな表現も見られます。

このような相場サイクルの局面を踏まえ、積極的に運用を行いました。

People, Philosophy を想像させるプロセスですね。 


Portfolio

ポートフォリオ、これはここまでの3つ(People, Philosophy, Process)がどう反映されているのかを示してくれると同時に、ここまでの3つを具体的に示していないアクティブファンドのPhilosophy, Processを類推させてくれる非常に貴重な情報です。特に注目しているのは、投資先毎にどのくらいの期間保有しているか、です。

「売らなくていい会社しか買わない」というファンドが、毎期ごとに投資先をコロコロと入れ替えていたら、なんやねん!となりますよね。僕自身は、投資した以上はじっくりと保有していくスタイルのアクティブファンドが好きなので、特に大事にしているポイントです。というのも、手間と時間を掛けて調査して、分析して、評価して、投資を決定したのに、短期間で手放すというのはそうそう無いことでしょう。もちろん、投資したら短期間にあれよあれよと株価が騰がって、というケースもあるでしょうけれど、そこまで市場はアホではないと思うんですよね。そうしたケースが起きたら売却しますよね。で、ファンドは次の投資機会を探さなきゃいけない、でも、そんなすぐに新しい魅力ある投資機会があるん?と思っちゃいます。

とはいえ、半年、1年でガラッと投資先を入れ替えるアクティブファンドもあります。この種のファンドは「株価」を追いかけているんでしょうね、調査の対象は「株価」って。それも一つの哲学だと思います。「株価」ではなく、会社そのものの「価値」を探る、測って投資判断をしているファンドが、僕の好みです。ですから、投資先がコロコロ変わっているファンドはどうしてもキツめの評価になります。成績が良いファンドであっても、投資先に落ち着きが見られないファンドでは、長くお付き合いが出来ない、そう思います。

ポートフォリオがコロコロ変わる、レストランで言えば、メニューが行くたび毎に変わっている、こないだ中華だったのに、え、イタリアンなの、みたいな感じでしょうか。それで常連さんがいるのかな。もちろん、どんなメニューであっても、最高の体験を提供してくれるレストランもあるでしょう。そんなレストランなら、しっかりと「プロ」な説明を添えてくれるのではないでしょうか。


Performance

「アクティブファンドを眺めてみた」で注目するのは、ローリングリターンです。

3年、5年、10年。そのくらい保有してみてのリターンがどのくらいバラつくのかに注目しています。

情報エレクトロニクスファンド_ローリングリターン_5y_10y

このファンドは歴史の長いファンドですのでデータがたくさんありますね。これを見ると10年が5年を下回っている時期がありますよね。5年保有の後、さらに5年保有したら、10年後の評価が5年後を下回っていたということです、、、期間が長くなればこうしたケースが増えるのも確かですけどね。

このデータは将来を一切保証しません。ただ、過去にどのくらいブレていたか、ブレ幅を知ることは、長いお付き合いを考える上での参考にはなると感じます。

食べログ等のグルメ情報サイトも、今の点数だけじゃなくて、過去の点数の推移が分かったら参考になると思うんですよね。3年前は2.8点だったのが今は3.6点になっている、とか。

5つのP


さて、アクティブファンドでよく話題になるフィー、信託報酬。「アクティブファンドを眺めてみた」では、一切見ていません。投資家のリターンに影響しているのは確かです。僕も昔は「信託報酬がねぇ」みたいなことを何度となくブログに書いてきました。アクティブファンドに限って言えば、昔の自分がアホだったと非常に恥ずかしく思っています。

投信会社への「信託報酬を下げないのですか」という問いかけ。

レストランの人に向かって料理の値段、まけて、値下げして!ってレジで直談判しているようなものでは?

「あの値段が無いわー、ちょっと高いで」というのはあるでしょう。そう感じたら会計の際に「この料理であの値段、値下げしてよ」。

そう思ったら、そのお店にはもう行かない。僕ならそうします。

提供されたサービスに満足できないのなら、ファンドを解約する。そういうことだと思います。

こんなケースもありますね。

儲かってそうですね、ちょっと値段、下げたらどうなの?

それ、繁盛しているレストランに言います?

プロの仕事に対する敬意を持ちたいな、って僕は思います。繰り返しますが、あの頃の自分が恥ずかしい、、、


最後に

アクティブファンドも、レストランと同じく、生モノだと思います。それだけに、自分の常連(毎月買い増している)ファンド、気になるファンドは、定期的に眺めてみることが大事だと考えています。

常連ファンドについては、毎月の定点観測、年に1、2回の精査をしていく。その精査の機会が「アクティブファンドを眺めてみた」です。気になるファンドも年に一度は眺めてみたい。眺めてみた結果、常連になりたいなと感じるファンドも現れてくるかもしれません。そんな楽しみがあります。

5つの「P」を大事に、これからも毎月3本のアクティブファンドを眺めていきます。ご興味ある方、ぜひご検討をお願いします!


昔に書いた記事です。ご参考まで:

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