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洋服記録92_冷静と流行の間

流行を追いかけるという行為は、
一体何歳まで許されるのか。


アラフォー女に常に付きまとう問いである。
 
これでも昔は、一応追いかけていた。
古着屋でベロアジャケットを探すとか、
ジーンズに白スカートをあわせるとか、
ミリタリージャケットをフェミニンに着るとか。
 
「一応」と言ったのは、
流行と似合う服とが一到するとは限らないため、
これなら挑めると判断できたものだけ乗っかっていたから。
良い結果の時だけ信じる占いと同じ理屈だ。(たぶん)
 
学生の頃の一時期、
白Tとキャミタイプのワンピースの重ね着が流行し、
かわいらしい華奢な女子たちは、
こぞって花柄やペイズリー柄のリゾートワンピを着こなしていた。
上半身が厚い女にとって、
白ベースで自ら肩紐を強調させるなど自傷行為。
ハンカチを嚙む思いで見つめつつ、
流行に流されず自分を貫く女、というテイで過ごしていた。
 
そんな時に敢行したのが、
南国コーデの本質で述べた、離島一人旅。
 
燦燦と降り注ぐ太陽。
原色輝く空、海、ハイビスカス。
正真正銘のリゾートであり、そして、
私のことを誰も知らない、解放感満載の楽園。
 
柄モノと心理的安全性でも触れた通り、
普段と異なる世界においてはファッションのハードルも下がる。
ここぞとばかりにリゾートワンピを買い込み、
都心では勇気が出なかった白T重ねを実行。
せめてもの抵抗として、
肩紐の結び目はゆるくふわっとさせて、少しでもいかつさを緩和した。
 
南国の風に、はためくワンピース。
旅先でしかかぶれない大きな麦わらハットと、
ロングのAラインが砂浜の影に映る。
影だけ見れば、もう完璧。
人もまばらな砂浜で、
日頃の小さな変身願望を叶えた喜びに浸りまくっていた。
 
だがこの時の私にはもう一つ乗り越えたい壁があった。
それは、
人前で水着になること。
 
Tシャツにワンピースを重ねられない人間が、
としまえんのプールや箱根のユネッサンで水着を披露するなど、
自らの手で息の根を止める行為である。
 
だが、ここは楽園。
 
目の前は海だし、人はまばら。
そしてそのまばらな人々は誰も自分を知らない。
ワンピの下には、これまたこの旅用に新調したギンガムチェックのビキニ。
さらりと脱げば、すぐに任務は達成だ。
 
だがこんなチャンスを目の前にしてもなお、
勇気が出ずにいる自意識過剰な女。
散歩するポーズを取りながら、
ぐずぐずと波打ち際を歩いていた。
 
その時。
急に下から、ぐんっと何かが引っ張られた。
 
え、と思って足元を見ると、
引く波に流されていくワンピースが見える。
どうやら波際を歩いているうちにワンピの裾が引き込まれた様子。
肩紐の結び目を緩くしていたこともあり、
波の力でほどけて流されてしまったようだ。
 
と、ここまで考えて気付く。
 
ということは、
いま自分の下半身はどうなっているのか。
 
慌てて自分に目を向けると、
白Tにビキニ姿という、
エロいんだかヤバいんだかわからぬ中途半端な恰好。
外目から見たら、
パンツ一丁でウロついていると思われかねない緊急事態。
 
そこから先は本能で動いていた。
 
流れていくワンピースを横目に、
ものすごい速さでTシャツを脱ぎ捨てる。
あんなに渋っていた水着姿をあっさりと披露した上で、
思いっきり海に飛び込みワンピを救出。
 
外目から見たら、
波際すれすれでとんでもない速さで脱衣し、
必死の形相で入水する女。(しかも単独)
こわすぎる。
 
数分前までは、
白Tワンピに挑戦できただけでも意義はある、
このままワンピースで民宿に帰ろうかな・・・などと遠い目をしていた私だったが、
結局ずぶ濡れの水着姿で堂々と玄関をくぐった。
 
緊急事態の前では、
個人が抱えるコンプレックスなど無力である。

 
アラフォーになった今、
店頭やインスタライブで流行りカラーやトレンドを聞くたび、
これは自分が乗っかってよい流行か?を考える。
そしてその後必ず、
一体いつまで流行に乗っかってよいのか?という考えが浮かんでくる。
 
透けトップス。
細紐のカップ付きインナー。
ビスチェタイプのトップス。
 
今年よく耳にしたトレンドたち。
思い切って全部取り入れてみた。
 
南国の地で独り水着で入水した経験を思い返せば、
怖いものなど何もない。

透けトップスのコーディネート備忘録

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