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洋服記録12_傘ブランカ

10年ぶりくらいに傘を買った。

いや、もちろん傘自体は何度も買っている。
急な雨に降られてコンビニに駆け込むというデジャヴを何度見たかわからない。
自宅の玄関にも、会社の傘立てにも、持ち手に自分のシャチハタが捺されたポストイット付きのビニール傘が何本もある。あり過ぎて、後輩から「傘立ての3本目の傘、借りてもいいですか?」と言われたりする。

決して開き直るわけではないが、
ファッション的にも、ビニール傘は優秀だと私は思っている。

とにかく、どんな洋服にも合う。
正確には、どんな洋服の邪魔もしない。
なんといっても透明なのだ。合わない色も、合わない柄も、存在するはずがないのである。

むかし、赤、青、白のフランスカラーの傘を持っていた時など、何を着てもどこかの色と喧嘩して大変であった。頭上に常に気の短いヤンキー娘を飼っているようなものである。
結果的に、雨の日はモノクロとかホワイトのワントーンで出掛けることになっていた。

水玉の傘を持っていた時もそうだった。
うっかりボーダー×チェックのコーデを組んで出掛けて、急に柄をプラスしなければならなくなった時のあの焦燥感。追加メンバーが3人だと思っていたのに4人に増えちゃって私のパート割どうなるのよ!的な焦りに似ている。(推測)

そして昨今の異常気象。
急に大雨が降ったり、雷が鳴ったり、突風が加わったりする。
その瞬間、傘の色や柄は二の次になり、トニカク壊レズ、ナルベク濡レズ、の精神論が浮上する。

どんなに拘ったところで、費用対効果が上がらない。
それが私の傘への評価である。

とは言え、いつかちゃんとした傘を買わねば・・・という思いは心にずっとあった。
前の職場でおしゃれな女性の先輩に置き傘を借りた時、とても置き傘とは思えないクオリティに驚いたことがきっかけである。

華奢なフォルムに上品なホワイト。ピシッと折り目がついていて、まるで美しいプリーツスカートのよう。
た、たかそ~~~!
正直、置き傘にここまで投資できる経済力と(同じ会社なのでそこまで給料変わらなかったはずだが)、置き傘の分際でここまで大事にされる傘に嫉妬すら覚えたものである。

さらに悔しいことに、傘が立派すぎて気安く差せない。

一度開いたらこんなに綺麗に畳めないんじゃないかとか、乾かすときはドライヤーなんてもっての外で柔らかな日光に翳すに限るとか、返却時にはリボンと包装紙が必要だろうかとか、考えれば考えるほど、差せない。
結果、お嬢様が雨に濡れるくらいならばわたくしめが喜んでずぶ濡れになりましょう、という謎の爺や状態に陥り、半開きにしたまま(一応差した)忍者のごとく走り抜けるという荒技に出るしかなかった。
言うまでもなく、びしょ濡れ。

その日以来、いつか私もビニール傘生活から抜け出し、華やかなお城で生活したいと憧れるようになった。

そして今年の9月、ついにその夢を叶えた。

細身で上品、色はおしゃれな先輩と過去の反省に学びオフホワイト。持ち手や骨組みはしっかりとしているのにおしゃれ。
お値段は5桁!(実際には溜まったポイントをフル活用したので半額)

それから2ヶ月。

大方の予想通り、傘が立派すぎて気安く差せない。(デジャヴ)

一度小雨の日にデビューさせた後は、小雨予報の日に何度か持ち歩くも開くには至らず(少しくらいの雨なら自分が濡れる方を選ぶ)。
大雨、普通の雨、高確率の雨予報の日は迷わずビニール傘。
つくづく、人は簡単には変われない。

傘は開いていないはずなのに、
我々の距離は開くばかりである。

傘のコーディネート備忘録

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