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悔いなき

父がこの世からいなくなった

もうダメかも知れないと体調急変し、危篤に違い状態に陥ったのが昨年の2月頃か
夜、車を飛ばそうとしたが雪で断念したっけ

翌日かな、改めて駆けつけて
コロナもあるから、無理をお願いして5分だけ、と面会させてもらった

虚ろだった父は、私をみて微笑んで
もうアカンやろなぁと 遺言残すから動画にして、と

私は半年くらい会って無かったから最後に会えて良かったなと
互いに悔いはないね、と

父がふいに「倒れてから歯磨きしてないから臭くないか?」と

父は昔から、外人みたいにハグをしてキスをする
妹は照れからかスルーしてたが、パパっ子でノリのいい私は、40をとうに過ぎた今でも頬や口にキスを返していた

だから、もう最後なんだと思って
「臭くないよ(笑)」と
ベッドでチューブに繋がれて身動き出来ない父をゆっくり抱きしめて 頬に何度もキスをした

苦笑いして、力ない声で「アホか、人来るぞ(笑)」と
「口紅ついてるわ(笑)まぁええやろ。最後なんやし」と
口にもオデコにもチュッチュして

父と私は考えも似過ぎて 父は行く先々で、私の事を「俺のコピーや。自慢の娘や」と

母が嫉妬するくらいに仲が良かったから

その時に互いに、言葉にはしなくても悔いは無いと理解し合えた

人のエネルギーとは不思議なもので
スピリチュアルとかあまり信じないけど
私が抱きしめてキスをしてから、父は回復した
信じられないけれど、復活したんだ

それから半年後に父と二人で一泊二日で旅行にも出かけた
父が結婚してから田舎に帰るまでの、必死で働いて充実していた和歌山での想い出を辿る旅

ホテルでたくさん話して 辞めていたお酒を二人で呑んで
毎度ながら、互いに呑みすぎて翌日グダグダになるから、少しだけと決めて買うのに 結局「まだ呑みたいねっ!」となり、ほろ酔いで追加の酒を買いにコンビニに走る私

いつも、こんなんやねーって笑いながら その時も、もう悔いは無いよって

それから一年  
入退院を繰り返しながら、治る事なく日毎に落ちてゆく体力と 手を煩わせてしまう母への申し訳なさで、自ら死ぬ事ばかりを考えていた父

毎日早朝のモーニングコールで、母や妹には話せない胸のうちをたくさん聞きながら過ごした

先月頭に、母が簡単な手術をするからと私が一週間帰省し、父と二人で過ごした

毎日ノンアルコールビールとタバコでドライブして

互いにほんと、悔いは無いと

だから淋しいよりも、お疲れ様、頑張ったね、という気持ちでいっぱいだ

後は頼んだぞと言われていたから私は私の責務を果たさなければいけない

お父さん、ありがとう!これからもよろしく!



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