【これが私にとっての"RENEW LAB."】vol.10 吹奏楽部を安心安全の”音楽”の場所に
RENEW LAB. 1期生の浅原ルミ子です。クラリネットを演奏したり教えたり、吹奏楽部顧問の皆さんの相談に乗ったりしています。
私は普通高校を卒業後に秋田県から就職のため上京、長年アマチュア奏者として演奏を続けていました。そして、35歳でオランダのユトレヒト音楽院に留学し昨年2018年に卒業しました。
3つの違和感
私は中学から始めた“日本の吹奏楽”に、20代になってから違和感を持ち始めました。具体的には次の3つです。
1、吹奏楽部とは何をする場所なのか？
上京後は、いわゆる強豪吹奏楽部出身の方々の話を聞く機会が多くなりました。そして心に引っかかったのは
「なぜ吹奏楽コンクール全国大会等、人が憧れる経験をしたのにも関わらず卒業後に音楽を続けている人が少ないのか」でした。
「楽器なんか2度とやりたくない」、「部活内でイジメに遭った」という悲しいことも耳にしました。
そして、私が高校時代の吹奏楽を嫌いにならず良い経験として捉えることができたのは、ただ単にラッキーだったからということに気づきました。“部活”が幸運か否かだけで子供の将来に影響を与える事はあってはならないのでは、と考えるようになりました。
2、指導者とは何をする人なのか？
アマチュアの時期に多くの音大生や新卒生、著名な吹奏楽指導者の皆さんのから指導をいただく機会がありました。
しかしその多くは、フルタイム残業付きで働く私の生活には物理的に適応できない「がっつり音大生向き」の内容でした。もっと社会人の生活を考慮したアドバイスができる音楽家がいてほしいと願うようになりました。そして、そういった人が”別の世界”でなく、すぐ隣に存在していたらどんなに素晴らしいかと考えました。
3、吹奏楽という音楽表現の真実とは？
20代半ばで聴いたオランダの社会人楽団、聖トールン・ミカエル吹奏楽団の演奏に衝撃を受けました。明るくて軽く、場面によって自在に変化する音色、表現方法の多彩さ、いい塩梅に入る雑音、そして何より豊かな音楽性（ムズィチーレン）。
「吹奏楽って本当はこういう音楽なんだ！」と価値観が180度変わりました。
クリアで正確、高度な技術と大音量がトレンドな日本の吹奏楽とは真反対にあるその演奏に私は一瞬で魅了され、この音色が日本の吹奏楽の新たな選択肢の一つになればいいのに、と考えました。
これらについて、あーだこーだ言っているだけでは只の「吹奏楽部の怖いおねーさん/おばさん」でしかない。
もうこうなったら自分で勉強して実践して新しいオプションを証明していくしかない！
と腹を決めて、結婚10年目の夫を日本に残しユトレヒト音楽院へ行ったのです。これはアマチュアを長年やったからこその留学動機でした。
オランダで見たこと・日本で見えること
オランダでは勉強の傍ら、自由と寛容とアイデンティティについて影響を受けました。
村の小さな楽団から世界大会に進む大きな楽団まで取材しましたが、とにかくみなさん生き生きと好きなことを好きなようにやっていました。しかも週1回3時間のリハーサル（夏休みは4週間合奏なし）で上達しているのです。
音楽活動とは自分たちが中心で、そして幸せになるための手段なのだというポリシーを肌で感じました。（ちなみにオランダには学校の吹奏楽部というものはありません。子供からお年寄りまで社会人楽団で一緒に演奏をします。）
今、日本の吹奏楽部を見て課題と感じることは、大人の都合でやっていないか？ということです。管楽器演奏は心身の発達や成長に強い影響力があるのですが配慮が足りているとは言い難いです。休日返上の長時間練習も効果的とは言えません。一方で顧問の先生の負担も大きくなっています。さらに急激な少子化により“吹奏楽部”という概念の変更も必要でしょう。
演奏家としての活動と並行して、吹奏楽部のアップデートを私のミッションと考えています。これ程適した役目はないと確信しています。
目指すは「脱金賞」と「真の上達」です。
RENEW LAB.への参加
日本の音大等に行ったことがない私にとって、多種多様な意見と共にクラシック音楽業界の変化を産もうとしているRENEW LAB.に参加することは非常に刺激的で、積極的に学べる場所となっています。
実際、大学や門下という“内輪”を大きく超えた音楽家の集まりは、クラシック音楽が真に社会インフラとなるための重要な役割を果たすでしょう。
「業界を変えたい」
Twitterで見つけた白鳥さゆりさんの勇気ある一言は、完全帰国後の私に新しい一歩を与えてくれました。私にとっては「吹奏楽部を安心安全な場所にしたい」です。たくさん学んで見聞を増やし「社会にいきる音楽家」として活動して行く所存です。
RENEW LAB.をどうぞチェックしてくださいね！
浅原ルミ子
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