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デンマークを知る2ヶ月の冒険 その9〜デンマークの味わい

デンマークの料理と食事にまつわる文化を体験する、という目的で始まった、伝統的なホテル、Kro(クロ)での2週間。

今回はRold Gammel Kroのキッチンで学んだ、私がこの2ヶ月の冒険で目的にしていた、デンマークの料理の味を探索します。

キッチンで体験するデンマークの味

Rold Gammel Kroに滞在させてもらうにあたって、お願いしたこと。それはデンマークの伝統的な味わいを知りたい、ということでした。

私はデンマークに何回も旅してさまざまなレストランを訪れています。大変美味しくて、だからこそ大好きなのですが、コペンハーゲンなどを旅して出会うのは(当然ですが)現代的な料理が多いのです。

ヒュッゲを味わうイベントとして、スモーブロー(Smørrebrød)を提供するようになり、自分の感覚として美味しく作ることは大切ですが、私が美味しいと思ったデンマークの味わいをどう再現するか。これがデンマークの味だ!と知りたかったのです。

Rold Gammel Kroのシェフは、Lotte(ロッテ)でした。

"Lottes Køkken"(ロッテのキッチン)と書かれたボードの前で談笑するスタッフたち

キッチンの調理には日によって交代で3-4人のスタッフがいました。私はキッチンのお手伝いと見学、という立場で入らせてもらっていました。

Lotteと仕込みをしているのは一番の若手、見習いくん

Rold Gammel Kroでは昔ながらの、きちんと作られた本物の料理、オーセンティックな味というところにこだわっていました。昔ながらの美味しさを絶対守るということで、ソースや甘酢漬けなども全て一からこのキッチンで仕込まれていました(パン以外)。朝食のジャムなども全て手作りです。

ソースを仕込むLotte

その工程も惜しげもなく見せてくれて、私が理解できているか、一つ一つ確認してくれました。時間をとって、相手と一緒に時間を使う。その教えてくれる過程が、気持ちが温かくなる体験でした。

デンマークの味は「甘酸っぱい」

デンマークの伝統的な料理は、フランス料理に大きく影響されていて、料理の基礎はフランス料理からきています。

前記事にてKroのメニューのいくつかをご紹介しましたが、肉料理が多く、また酪農大国ですから、フランス同様、生クリームやバター、チーズが入るメニューもたくさんあります。

ですが、フランス料理と大きく異なる点があります。

それは「甘酸っぱさ」です。

北欧にあるデンマークは、伝統的に多くの食品が保存のため、酢漬けなどになっています。料理の付け合わせやスモーブローのトッピングになることが多い紫キャベツの甘酢煮やウリの甘酢漬け、きゅうりのピクルスなど、甘酢に漬けられたものが多いです。

そしてこの甘酢、日本で考えるよりも「かなり甘め」です。ニシンの酢漬けは日本は塩が中心の味で甘酢に入れるところ、現地で食べるとかなり甘酸っぱい。私が南蛮漬けの味付けなどで想像していたより、はるかに甘いのです。

ヨーグルトなどの乳酸品の味、マヨネーズなどのお酢の入る味、
ライ麦パンなどの酸味のある味、そして甘酢の味。
何重にもある、甘くて酸っぱい味。

Kroでの一番の学びは、デンマーク料理の味付けの基本は「甘酸っぱさ」にあるということ。ここで学んだ味わいが、今、デンマークのオープンサンド、Smørrebrød(スモーブロー)を作るときなどに役立っています。

「甘酸っぱさ」を学ぶ紫キャベツのレシピ

伝統的な肉料理の付け合わせによく出てくるのが、紫キャベツの甘酢煮です。

キャベツは本当によく取れるということもありますが、種類も日本よりいろいろあり、特に北欧の長い冬の間の野菜として、保存できるよう加工されたのだと思います。

紫キャベツの甘酢煮は、家庭でのレシピをコペンハーゲンの友人から教えてもらったことがあります。ですが、Kroで食べた甘酢煮は全然違う味でした!甘めだけど、深みがあって、お肉にとってもよく合う。

この伝統的な味わいを再現するべく、赤キャベツの甘酢煮を教えてもらいました。教えてくれたのはAsbjørn(アスビヨン)です。

北欧らしい体格の大きいAsbjørn

まずは紫キャベツをひたすら切ります。仕込みの量なのでたくさんあるというのもありますが、、、これがなかなか切れない。

なぜかといえば、日本の紫キャベツより圧倒的に固い!キャベツの葉が厚くて繊維がすごく強いというのもありますが、ぎゅーっと詰まっていて、日本のキャベツよりずっしり重たいです。

日本の紫キャベツより、ぎっしり詰まったデンマークのキャベツ

それをお酢と砂糖で、何時間も煮るのです。

切ったばかりのこの色から(中央はお酢がかかってピンクになってます)
黒っぽく見える、この色まで。鍋の中は柔らかくなって嵩が減りました

真空パックで持って帰って、スモーブローの会でも食べてもらいましたが、みんな大好き。(一般的に酸味が苦手な)男性陣にも好評でした。

帰国してから何回もトライしていますが、うまく行ったり行かなかったり。

でもこれは、大切にしたいデンマークの「甘酸っぱさ」。覚えているLotteの味に、ぜひ近づきたいと思います。

Lotteと最終日に


次は、デンマークで出会った甘い味についてです。


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