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人形町魚久の京粕漬け焼き(えいひれ、かます) 甲州ワインから広がる吟醸香の酒粕へのシンクロ

先日、日本橋人形町の京粕漬け魚久に立ち寄り、いか、さば、にしん、えいひれ、かますを購入。

今回は、えいひれ、かますを焼く。乾燥珍味のえいひれは酒のおつまみとして食べてきたが、粕漬けとして食べるのは初めて。えいひれ自体が私のNote初登場。かますはフリット、塩焼きで登場済みだが、やはり粕漬けは初めて。

カマスのフリット

カマスの塩焼き

賞味期限を数日過ぎてからの開封。

粕との接触時間が長くなってしまったが、エイヒレのやや甲高い風味には強い粕の香りがバランスした。結果オーライ。一方、やや繊細な風味のかますに対しては、酒粕が強く入りすぎ魚の繊細な味わいを圧倒してしまった。一度に食べきれない量を買うときは、繊細な風味の魚から開封するようにしよう。そして繊細な風味の料理はお店が設定してくれている賞味期限内にいただくようにしよう。反省。

えいひれの酒粕漬け
かますの酒粕漬け

合わせたワインはフランス ロワールの自然派ワイン(シュナン・ブラン品種)と山梨県の甲州品種。ロワールの郷土料理はウナギやカマスを使ったものも有名。カワカマスのナンテ風バターソース添え(ブロッシェ・オ・ブール・ナンテ)は、炒めたエシャロットに野菜のブイヨンと生クリーム、そして、バターを加えたソースで調理したもの。ロワールのワインはかますとの相性も良し、ということでセレクト。もう一つの山梨県白百合醸造の甲州品種のワインは、まるで日本酒の吟醸香のようなフレーバーも魅力のひとつで、それが酒粕と繋がることを期待したセレクション。

ちなみに、魚の酒粕漬け焼きが残ったら、お茶漬けにするのがおススメ。先日、残ったにしんをほぐして米の上に載せ、塩昆布とゴマを振ってほうじ茶をかけてみた。鼻腔を抜けるほうじ茶と酒粕のフレーバーが最高の〆に。京都の高級料亭の〆のぶぶ漬けに出てきそうだ(妄想w)。

さて、えいひれとかますの京粕漬け焼きとそれぞれのワインの相性について。


ロリアン, 勝沼甲州, 2019, 2,035円, 12%, 2,035円
L’Orient, Katsunuma, Koshu

L’ORIENTは仏語で「東洋」を意味、ヨーロッパに劣らぬ高水準のワイン造りを目指し名付けられたもの。その志とたゆまぬ努力が報われ、こちらのワインは2021年ロンドンで開催された世界最大のワインコンクール、デキャンター・ワールド・ワイン・アワードでプラチナを受賞。受賞の年に購入し、自宅のセラーで2年弱寝ていたものを開栓。
非常に透明感高い色調。香りにはおおらかに和梨、カボス。日本酒のような吟醸香をまとう。微かに白い花とセルフィーユのハーブ香。非常に清らかで透明感が高い。
味わいには瑞々しい口当たり、穏やかな酸味。ピュアで透明感の高い風味の余韻に軽快なほろ苦さ、余韻に微かに旨味と乳製品のようなまろやかなタッチ。4年目とは思えないフレッシュさを残す。

えいひれの京粕漬け焼きにワインを合わせる。期待通り、ワインが含む吟醸香のようなフレーバーが酒粕、そして白味噌の発酵の香りに自然と寄り添う。素晴らしいシンクロ。そこからエイの少し甲高い風味、粕に引き立てられ噛むほどに広がる甘みに絶妙に調和。相性: ★★★★☆

かますの京粕漬け焼きに。賞味期限を過ぎ、酒粕がかますに入りすぎてしまった。繊細なかますのふうみが酒粕の強いフレーバーに圧倒されてしまう。それでもワインの吟醸香は酒粕に良いつながりを見せ、なんとかかますの風味を立ち上げてくれようと働くが、やはり強く染みついた酒粕により、ポテンシャルを引きだし切れなかった。お店が美味しく食べてねと設定してくれている賞味期限内に食べようと反省。相性: ★★★☆☆


ドメーヌ・ニコラ・ジョリー, サヴニエール, レ・ヴュー・クロ2015, 約3,000円(5年前に特価で購入)
Domaine Nicolas Joly, Savennieres les vieux clos

ロワールを代表するワイナリー。ニコラ・ジョリーは、コロンビア大学で経営学修士号(MBA)を取得、その後ウォールストリートで働く。モルガンスタンレーなどで勤務した後、1976年に仕事を辞めフランスへ帰国。母が運営していたワイナリーを継ぎ、ワイン造りを始めた。農薬や化学肥料を一切排除、「ビオディナミの伝道師」と称される自然派。
香りには花梨、黄色い花、りんご蜜、イーストこう、ビネガーやフェノリックなタッチ、トマトリキュール、ニュアンスに富む。
味わいにはパワフルでやや攻撃的な酸味を伴う底力のある果実味。旨味と滋味溢れる中に奥に微かに甘美な蜜のニュアンス。ゆったり続く余韻にもビネガー系の酸味あり。

えいひれの京粕漬け焼きに。酒粕にエイヒレの甲高い香味の方向性とボリュームが絶妙に調和。その余韻にワインの個性のビネガー香を含む豊かな酸味に、酒粕の華やかさを伴う発酵の香りが調和。ワインに効いた酸味がエイの風味をしっかりと立ち上げる。相性: ★★★★☆

かますの京粕漬け焼きに。賞味期限を過ぎ、酒粕が浸かりすぎてかますの繊細さが閉じ込められてしまっているところ、ワインのやや刺激的なビネガー系の風味は事態の改善にはつながらなかった。ケンカはしないが、カマスに残った繊細な旨味に重なる気配もなし。相性: ★★★☆☆

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