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戦略より先に“かっこいいか”で判断する現場がある。プロダンスチームと試行錯誤の1年目を終えて。
【連載note】セプテーニグループにある10社以上の社内ベンチャーをめぐり、事業家ひとりひとりが持つ“プレイスタイル”を聞き集める企画です。
今回は、プロダンスチーム「SEPTENI RAPTURES」(セプテーニ ラプチャーズ)の運営・関連事業を行うPERF株式会社の柳さんにお話を伺いました。
<目次>
・SEPTENI RAPTURESの始まり
・プロスポーツと「観る専」カルチャー
・僕、チーム運はあるので
・人のプレイスタイルは変えられない。したくないし
・久しぶりに戻った「表現ありき」の世界。今度は事業家として
◎プロフィール
柳 裕貴
PERF株式会社 代表取締役社長
2009年 株式会社セプテーニ新卒入社。セプテーニグループ内にて、モバイル、ソーシャル、ブランド広告など新規部門での事業立ち上げ、推進を経て、2020年にPERF(パルフ)株式会社を設立。現在は同会社にて日本初プロダンスリーグ第一生命D.LEAGUEに参画するプロダンスチーム「SEPTENI RAPTURES(セプテーニ ラプチャーズ)」のゼネラルマネージャーに就任。
SEPTENI RAPTURESの始まり
ーダンサーさんもオフィスにいらっしゃるんですか??
はい、撮影や打ち合わせのために、週1はみんな来てますね、広報も部分的に彼ら主導でやってもらっているんですよ。
ーへえ〜!
“ダンサー”ってそれこそ、ひとりひとり踊るダンスのジャンルやその中にもスタイルがあって、さらに、そこに通じるライフスタイルもしっかりと持っている人たちなんです。
だからダンス以外の姿も含めて、インフルエンス力というか見せ方に気をつけていたり、こだわれる人が多い印象ですね。
ーエクストリームスポーツとかと少し似てるんですかね
そうなんですよ。RAPTURES(ラプチャーズ)は、最初に監督が決まって、監督のスタイルや構想をベースとしながらでメンバーが決まっていった感じです。
そもそも、D.LEAGUE(日本初のプロダンスリーグ)もできたばかりですから、監督の定義もない。今、リーグ全体は9チームあって、各チームそれぞれの監督像があるって感じです。
ーラプチャーズ…
あ、意味は有頂天とか
ーご機嫌な感じだ!
そう。あと狂気…狂おしいほどの喜び
ーまさに「舞い」ですね…
そうそう。僕自身、いわゆるカルチャーと呼ばれるような、遊びはいろいろ通ってきた方ですが、なぜかダンスだけは触れてこなくて。だから最初は、ダンスのバトルの現場をいろいろ行ってみることから始めて…
ーへえ〜、どなたかその道の人と一緒に…?
いや、自分一人で行きましたね!
ダンスって、ジャンルが音楽の種類くらいあるんですよ。
ー確かにビートの雰囲気で結構かわってきそうです
そうそうそう、そうなんですよ。
最初に見に行ったイベントでは、色んなジャンルのダンスバトルが、朝の11時くらいから22時くらいまであって、それをダーっと見てたんですけど…。
そのときの現場で感じたことなんですが、他のプロスポーツと違ったのは、観衆もプレイヤーなんですよ。普通、プレイヤーとクラウドじゃないですか。選手とサポーター、漫才師とお客さん。
ーあ、確かに。
雰囲気的に「ラップバトルの現場とかと似てるのかな?」とは思ってたんですけど、違いました。
そのダンスのバトル会場は、見てる人も恐らく大半がプレイヤー。普通にみんなバトルのビートに合わせてバトラー以外の周囲も踊ってたり、良いムーブが出たときに、声だけでなく体や動きでその称賛を表現したりします。だから、会場が湧いたときの、うねりの高さがもう全然違うっていうか。
全員がこう、前のめりになるような。その瞬間が、すーごい良くて。
ーわあ〜
そうなんすよ〜〜
プロスポーツと「観る専」カルチャー
ー「ダンスしないけど観戦するだけ」という楽しみ方で入るのはハードル高いんですかね?
僕はいきなり飛び込んで、かなり食らった側(ポジティブな意味で)なので、いきなり現場に飛び込んでみてどっぷりハマってしまう人はいると思います。。
例えば、当たり前のことですが、野球はプレイヤーじゃなくても観戦するじゃないですか。
ー確かに。「野球好きなんです」と言われたら野球観戦のことかと。
そうですよね、「ダンスを観る」については、現状は、ダンサーや関係者やご家族が観る、ってケースが多いなと色々な現場に行って感じます。
だから実体験でもあるんですが、僕みたいな「ダンサーではないがダンス観る」っていう層を作っていきたいですね。
さらには、そこからダンスについて喋る、語る、分析する、ファンの語りが面白い、みたいなところまで行けたらいいなと。
これまでも、ダンス×一般層への取り組みは日本において様々あったと思うのですが、またこのDリーグを通して、少しずつそういう体験が作られている、新しいチャレンジが生まれていると感じてます。
ーそれで言うと、ベンチマークしている業界はどこらへんになりますか?
あー、ラップバトルの数年前のムーブメントですかね。
スカパーの高校生RAP選手権が火付けとなって、テレ朝でフリースタイルダンジョンが始まって少しずつ、世の中ごと化されて、日本中にヘッズが増えて、毎放送Twitterのトレンドになって、CMにもラッパーがキャスティングされるような分かりやすいブームが生まれて、、、みたいな。
全然違うルートを辿るのかもしれませんが、そのような世の中ごと作れることを、リーグやチーム全体で目指していければと思います。
僕、チーム運があるんですよ
ープロスポーツ事業の展開は、セプテーニグループにとっても、柳さんご自身も、初めての分野ですか…?
そうですね。僕自身の今までのキャリアで言えば、入社してからずっと、2年半〜3年のスパンで担当事業が変わり続けていて。いつも会社の注力領域や、新規立ち上げなどに配属されてきたんです。
テーマがどーんって渡されて、そこに応える。大喜利の連続みたいな感じでした。
ー事業が変わるとき、自分のスイッチというか、新領域に身体やマインドを合わせてくモードの立ち上げ方っていうか、そういうのありますか?
いや、全っ然わかんないですね〜。ははは。
「事業責任者とはこうあるべきだ」みたいなのは漠然とありますけど、僕そういうのできないんでね。エネルギー量も、活力も、そんな。笑
ただパターンでいうと、いつもたまたま運よく事業が軌道に乗るときに、超優秀な人が周りにいるケースしかないです。そういう周りにイケてる人材がたまたまいるみたいな、運は僕はある気がしてます。
僕は総じて「ガチャ運」って呼んでるんですけど、、、ソシャゲとかであるじゃないですか、ガチャ。
ーはい
僕、いつも周りにいてくれるパートナーがSレア級なすんですよ。基本的に、超優秀な方たちばかり。それが10年間ずっと。
途中で自分のチームに配属された新卒、途中で移動してきた人たち、新しい部署に行った時のメンバー、一緒に事業をスタートする時のパートナー、総じて周りの人のお陰で、どの分野も成果らしい成果が出せている気がします。
あんまガチャとかいうとその人に失礼かもですが、感覚的な例えです。
たまたまどの事業でも周りの人に恵まれ、運が強い。いつもめっちゃかっこいい人たちばっかりに恵まれて。
ー環境の変化をポジティブに迎え入れられる根拠として、周りの人の存在がある、それってめっちゃいいですね
自分はチームの運はあるので、いつも「ああ今回も多分いい感じになるだろうな」ってワクワクしていられる。
社内から移動や転籍もあるし、社外から来てくれる場合も含め、「チームメンバーはきっとうまいこと行く」と思えるので。
人のプレイスタイルは変えられない、したくないし
ー今の事業は立ち上げてどれくらいですか?
ちょうど1年ですね、去年の3月設立です。
このインタビュー連載みてたら、みなさん2つ、3つは山超えてるじゃないですか。僕まだ、1つ目の山の2合目くらいで滑落しかかってるぐらいなんで、、、
ー2合目…
そう、事業責任者はこれまでも色々な領域でやってきたんですけど、その立場から会社の代表になって、最初は「あ、何にも守られてない」って感覚になりましたね。
例えば、就業規則にも自分は入らないわけで。
ーあ、社員じゃないからですね
そうそう、ま、細かいことですけどね。
もちろん事業責任者の時も、決断や選択の責任は自分にあったんですけど、今は、より意識の奥行きが違う。
ーそれって「守備範囲・視野全部」ってなるのか「守備範囲は狭くしてディテールは拾わない」とするのか…
多分、守備範囲を絞って責任をとるのが経営者のあるべき姿と思うんですけど、今、結構狭間にいますね。
こう言うべきなんだろうけど、いや待てよ、とか。
ー事業推進の視点と、人の表現をあつかう場面とでは、何がディテールで何がコアになのか、そこ結構違うと思うので…。わたしだったら最初は見極めに時間を持ってかれそうです…
それっす!
ーあはは!
広告案件でお客様のブランディングをどう、みたいなのは戦略的にある程度整理できるし、一緒に検証しながら判断しますけど、、、
ダンスは人そのものじゃないっすか。戦略の確からしさを優位にして、人のプレイスタイルを変えることはできないんで。したくないですし。
ーそうですよね。それに業界も一緒に盛り上げてかないとですもんね。
リーグもまだ初年度なので、オペレーションを今まさに作りあげてるフェーズなんですよ、だから突然のオーダーがあったり、何か相談しても誰も解決策を持ってない場合もある。
リーグの方と会って「そちらどうっすか?」「ここきついっす」「あー、ですよね〜、でも今無理っす」「じゃあしょうがないっす!」って。笑
ーあはは!爽やか!
久しぶりに戻った「表現ありき」の世界。今度は事業家として
(雑談)
いやあ、とはいえリスク系の判断って、ある程度時間があればできるじゃないですか、在庫がどうとか、今この手段をとるのは正しいのか、とか。データを元に判断していくか、データをとって振り返りのできる意思決定をしていく。
でもこの世界は、まず「かっこいいかどうか」で入り口を一つに絞って突き進んでいくクリエイター(ダンサー)と仕事を共にしているわけで。そういう現場に、もう一度立ってるんだなと感じますね。新卒で入社してからこの10年は、極端にロジカルに判断する方に振り切って、そういう自分の美意識をある程度、切り捨ててきてたんで…
ー野性が戻ってくる…?
やー!本当そうなんですよね。学生の頃なんか、ロジックとかないじゃないですか。仲間とバンドやってても「や、こっちの方がかっこいいから!ここは3連符にしよう!」。笑
ーあはは、それがいわゆる“美意識”かなと思うんですけど。ロジックより速い判断軸、のような。
そう、だからこそ、色んなことを考えますよね。
ダンサーやチームが感覚的に選んでるあらゆるカッコ良さの判断基準はある程度全肯定です。その上で世の中との橋渡しというか、もしそこに世の中との摩擦やズレみたいな部分があればサポートしていきたいですし、どちらかと言えば、彼らダンサーが体現しているがまだ世に伝わりきっていない魅力に関しては自分達がこれからちゃんと言語化して伝えていきたいとも思ってます。
ー…橋渡しの部分含めて表現にこだわるって大事ですよね、一歩間違えると「“こだわること”にこだわってるのか?」となりますし。
それです、本当に。
セプテーニグループには、表現ありきの事業ドメインは多くないし、ものづくりやディテール大事にこだわり抜く文化って、根付いているわけではないと思ってます。
だからまあ、その点も含めて、プロダンスチームの運営を自分がやる意味もあるのかなと。大きな会社って「もっとこうしたらいいのに」と思ってる奴が裾野を広げると思うんで。
ただ、まだ全然なんもできてないんですけどね!リーグ運営に耐性が少しずつ生まれてきた、これからです。
ー…さっき「色んなカルチャーを通ってきた」と。
そうです、学生の域を出ない活動ですが、音楽をしていて、あとは漫画・アニメ・芸能・インターネットやラジオ、それこそHIPHOPカルチャーとかも…自分の中で一般教養レベルだと感じるあらゆるジャンルのコンテンツとプラットフォームに薄く広く手を出し続けるタイプです、あー、、あと取り分けお笑いが好きだという感覚はなかったものの、お笑いも当たり前に通ってきたカルチャーですね。
関西から上京して少しして、自分が周りよりもお笑いが好きで詳しいことに気づいたんですけど…
ーあ、関西のご出身なんですね
僕、就活あんましたくなくて。大阪でも採用してたセプテーニに内定もらって、すぐバンドとか音楽の遊び場に戻ったんですよ。
ー「すぐバンド戻った」。笑
なのであんま就活に向き合ったり、吟味せず業界入りしたためか、広告代理店独特の雰囲気というか、エネルギーの質量を目の当たりにして、最初は驚きました。
自分と全然違うから「就活ミスった〜」って。ははは!
今は、自分と違うタイプの人たちのことがすごく好きです。違ければ違うほど。ま、セプテーニは良い人多いんで。どうしても。笑
<制作後記>
今回、編集のわたなべさんから返ってきたコメントは2つ。「ダンスの観る専はまさに俺。」「楽しみ、ダンサーじゃなくてもダンスを語っていいムーブがくるのは嬉しい。」おっ。ペルソナ、ここにいます〜!
さて。プロスポーツの盛り上がり方は、競技ごと違う性格があるので、ダンスはどんな広がり方をしていくのか、本当に楽しみです。
ラプチャーズのTwitterをのぞくと、ダンサーの皆さんがオフィスの芝に座って打ち合わせをしてる姿がありました。オフィスにダンサー、異質で格好いい。きっとその近くには、オンラインMTGをしてる方や、お昼を食べてる方がいて、いつも通りのオフィスだったと思うのですが、程々に無関心で、人それぞれ。距離感が保たれてるから自由で力強かったりする。セプテーニグループって、こういうところが本当にいいよなあと思います。
最後に、柳さんの語り姿は、“うねりの瞬間”の虜になっているような、その時の気持ちを再演してくれているような。聞いているだけで、“うねりの瞬間”とやらに触れてみたくなりました。やっぱり、カルチャーの実態は、人の姿にこそあるんだよなと、そう思わせてくださる回でした。今回も、ありがとうございました
ーFin.ー
運営元
Septeni Incubate / SIGNCOSIGN
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