"史上最大の挑戦"は絶望か、希望か~2023.8.4 GLEAT両国国技館大会に寄せて~
はじめに
2023.8.4、両国国技館で行われたGLEATのビッグマッチを観戦してきました。
2021年7月の団体旗揚げ後、GLEAT史上最大規模の会場となった両国国技館での大一番。
2023.7.1に開催したTOKYO DOME CITY HALLでの旗揚げ記念大会は、GLEATの旗揚げ以降最多動員となる1,279人を記録するなど、勢いそのままに約1ヶ月後に両国への挑戦という構図になりました。
TDCホール~両国国技館間の興行も7.16大阪大会のみで、都内開催は無し。
カードの方も、高橋ヒロム(新日本プロレス)、宮原健斗(全日本プロレス)、鈴木みのる、船木誠勝。フジタJrハヤト(みちのくプロレス)といった外部参戦組の参戦を固めていく中、一番の目玉になったのは飯伏幸太の参戦だったと思います。
2021年10月の『G1 CLIMAX31』優勝決定戦で負傷して以降長期欠場に入り、2023年1月に新日本プロレスを退団。
同年春に海外マットで復帰を果たしていた飯伏でしたが、彼の復帰後&新日退団後国内初参戦という唯一無二のトピックを独占したのは、古巣のDDTプロレスリングでも、全日本プロレスやプロレスリング・ノアといった新日のライバル団体でもなく、旗揚げから2年しか経っていない新進気鋭のGLEATでした。
GLEATとしては、平日の両国国技館でのプロレス開催や、最大規模へ挑戦する為に取り得るアプローチは取って臨み、当日の動員は2,215人をマーク。
とはいえ、良くも悪くも語る内容の多い大会だった事も確か。
その中で、個人的に感じた幾つかの事について、今回は語っていきたいと思います。
悔やまれる【試合内容<時間の長さ】
今回のビッグマッチ後に一番聞かれた話題は、大会時間の長さだったように思います。
ビッグマッチの3~4時間越えは珍しくない印象ですが、今回はダークマッチも含めると約5時間の長丁場。
この日は平日の18時30分開始という事もあり、最後の試合終了が22時45分頃、諸々終わって両国国技館を出た時には23時過ぎと、プロレス観戦で中々体験した事のない疲労感を味わいました(苦笑)。
観客だけでなく、参戦選手や関係者も時間を気にしていたくらいなのですから、逆にそれを聞いて安心したのでした。
休憩時間なしとは言え、プロレスの1試合あたりの試合時間は、G-REX王座戦『T-Hawk vs田村ハヤト』や最後のイリミネーション10人タッグマッチを除けば概ね良いテンポで進んでいたように思いますし、この2試合も「まあ、これくらいかかるよね」という妥当なラインだったように思いました。
それだけに、序盤だけで50分近くも費やしていたGLEAT MMAの2試合が(内容はともかく)時間的な意味でブレーキになってしまったかなあ、と…。
(とはいえ、応援団とか来てたりして集客面で貢献してるし、無碍に出来ない複雑な思い…)
そこに引っ張られるようにして、全体の終了時間を気にするあまり、どうしても後ろの試合を見る時に集中力が持って行かれた感は否めませんでした。
多分、土日祝日開催だったら、試合の見え方も多少なりとも違ってきたような気もしてます。
後ろから2試合目に組まれていたメインの『T-Hawk vs田村ハヤト』は、今大会中唯一声が出る位に凄い試合だった一方、私が試合を見る時には既に疲労や切れた集中力のせいで、試合内容が頭に入ってこない状況でした(泣)。
平日開催のビッグマッチですと、どうしたって有給休暇でも取得していない限りは仕事終わりを想定してしまうもので、観戦中は必然的に「【日中の仕事の疲労+興行観戦中の疲労】という感じになってしまうなあ」と痛感した次第です。
GLEATの場合、1試合1試合の試合時間や選手の出番は短くとも安定していた印象なので、もう少し試合を削るとか、スタイリッシュに纏めても良かったのかなあ、と私は思いました。
他人事に思えない、ゴールデンスター投入でも伸びなかった動員
前述の通り、今回の試合で一番の目玉だったのは飯伏幸太の参戦だったと思います。
負傷欠場~新日本プロレス退団後、日本国内では初となる復帰戦ということもあり、期待度の高さは会場やSNSでも窺えましたが、蓋を開けてみると1階マス席の中段や、2階席の大半が空席という結果に…。
正直な所、飯伏参戦というだけで、平日開催でもそれなりに集客するのではないかと私は思っていただけに、この結果はショックを隠せませんでした。
ただ、ここでいうショックは、「何もこれは、GLEATに限った話ではない」という意味での事。
プロレス業界全体でコロナ禍以降客足が戻っていない点を鑑みても、どの団体であっても、平日の両国を単独開催で満員にするのは難しいのではないかと、今回の件で感じてしまったのです…。
飯伏幸太という、今国内にいる選手で考えられる唯一無二のジョーカーを切っても動員がふるわなかった現状は何か?
カードや日程といった理由は諸々有ると思いますけれど、ここまでやっても伸びないとなると、極端な話、業界一を誇る新日本プロレスでも『G1 CLIMAX』とかの看板シリーズでない限り、長期休暇に入らない時期の平日開催で両国満員は難しいのではないかと感じた次第です。
そもそも「動員云々が厳しい」という言い方は私自身好きではないです。
そこをつついた所で、結局は「お前の好きなところだって入っていないじゃないか」と言われるくらいには不毛で、ブーメランにしかならないとも思っているので。
何より、GLEATの場合は『史上最大の挑戦』と銘打って今回の大舞台に進出した訳で、鈴木社長も明かしたように、初回で両国満員を目指すというより、ある種のチャレンジマッチに近い雰囲気は感じられました。
なので、(後述しますが)この後で力をつけて、再び両国国技館でリベンジした時に興行面で成功を収めたならば、今回の大会も意義深いものとして再評価されるのではないでしょうか?
でも、個人的に一番飯伏関係で問題だと感じたのは、最後に組まれたイリミネーションマッチが、戦前から飯伏にリードしてもらう形で進んでいた事でした。
ここで、所属選手の方から幾らか主導権を握れていたならば、そうした不満は感じなかったのでしょうけれど…。
20代のGLEAT所属選手達が飯伏との対戦の熱望する中で決まった10人タッグマッチに対し、「10人タッグじゃ面白くない」と脱落有りのイリミネーションルールを提案したところも、コンセプトを設けて4人のパートナーを発表したところも、全て飯伏がYouTubeで主導する格好に。
試合でも、飯伏が最後に勝利して、飯伏の対角に立ったエル・リンダマンが「マイクもリング上も完敗だよ」とマイクで漏らすほどの結果に終わりました。
正直、試合に関して言うと、飯伏本人のコンディションの悪さを指摘する声も多くあり、私自身も見ていて持ち前の蹴りの弱さが気になったのは確か。
とはいえ、前日に扁桃炎+試合後に足首骨折を告白した中、イリミネーションマッチの最後まで残ったのは凄まじいとも感じた訳で…。
そういうコンディション不良でもインパクトを掻っ攫う様は流石でした。
だからこそ、国内復帰戦の飯伏相手に臆せず強い蹴りをぶつけて攻め続けた石田凱士も、試合後に泣きながら悔しさを露にするエル・リンダマンも本当に素晴らしかったです。
この試合が組まれた意味と必然を理解して臨んでいたと言いましょうか。
おわりに
GLEATにとって大勝負となった、今回の両国国技館大会。
前述の通り、団体の最多動員記録を更新する2,215人を集め、YouTubeでの生配信も早々に10万回視聴を超えた大会でした。
一方、平日開催での両国国技館開催における運営面や試合内容では、反省や課題も出た大会だったと思います。
今回のGLEAT両国ビッグマッチを見ていて、私自身頭に浮かんできたのは、2022.4.29に行われたプロレスリング・ノアの両国国技館大会の事でした。
ノアのJrブランド『N-Innovation』発足から僅か4ヶ月後、Jrヘビー級選手のみで両国国技館大会を作るという試みは賛否が分かれたものになりました。
正直な所、所属選手が所属外に話題を持って行かれる点も、動員で苦戦した面も、今回のGLEATにどことなくシンパシーを感じられる内容ではありました。
ただ、両国大会後にノアJr本隊メンバーがブランドを盛り上げるべく、毎週火曜日にTwitter上のスペース機能を用いたトーク番組を実施したり、チケット即売会でも積極的に選手が立ったりした事で、その後の新宿FACEで行われた『N-Innovation』3大会はいずれも満員に近い観客数をマーク。
両国大会で喫した挫折や反省を、キッチリ活かして成果に繋げたのです。
そういう事例を見ているからこそ、今回のGLEAT両国大会の内容に批判はしても、悲観はしてないです。
この反省や悔しさをバネに奮起して、再び両国国技館にリベンジする機会が訪れたのなら、今回のチャレンジも無駄にはならないはず。
寧ろ「この大会があったから」という始まりとして語れる大会が、今回の両国だったのだと私は思っています。
だから、将来プロレスファンがいる飲み会とかで、こういうのを言えたらいいなあと願わずにはいられません。
「俺、最初の両国大会行ったんだけどさあ、もう試合時間も長くて、内容もアレで(笑)。でも、それがあったから、更に凄くなったんだよ!」ってね。
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