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"ルールの厳しさ"が悪と見做される違和感について
はじめに
2022年6月、こんなニュース記事を見かけた。
新日本プロレスのジェイ・ホワイトを取り上げた、単独のインタビュー記事。
さらに自身が王者となった暁には、コロナ禍で停滞した日本プロレス界に変革を呼びかける意向を持つ。「今まで従ってきたルール、観客にお願いしていた歓声の禁止、そういう部分は声を上げて変えていきたい。エンターテインメントの側面からプロレスを考えると、観客が楽しめない状況を会社が強いているのは気に入らない。それに対して声を上げる王者がいない状況にも腹が立っている。俺は〝成功のレシピ〟を知っているから、全てを変えていきたい」
2015年の新日本入団後は道場生活を経験し、日本の文化にも一定の理解がある。そんなジェイから見ても、現在の日本のコロナ対策には強く疑問を抱いているという。「かなりナンセンスに映っている。俺の知る限り、こんなに強い規制を強いているのは世界中で日本だけだ」と問題視する。
声援を待ちわびるジェイ・ホワイトの主張も、海外で声出しが行われているのに日本は本格解禁されていないことへの不満も、個人的に理解はできる。
各関係者のツイートも然り。
大歓声が起きるアメリカでのプロレスを見て、なぜ日本ではまだ声を出す事が制限されるのだろう。と色々考える。
— 高木三四郎 SanshiroTakagi (@t346fire) June 27, 2022
一歩を踏み出すしかない。危ぶむなかれ、って言うじゃない(笑)。なのでDDTでは7.7新宿 8.14後楽園 8.20大田区大会で声出し応援を解禁します。今後に関しては追ってお伝えします。 #ddtpro pic.twitter.com/q9ZhCTGGWW
欧州はYahoo japanが見れないので、こっちにきてから日本で起きていることがまったく追えていない。いまから再びバーミングハムのデヴィッド爺さんの家へ。街も空港も飛行機内も、マスクをしている人は皆無。というかコロナは完全に終了している。良い悪いではなく、完全に終了。#プロレス深夜特急 pic.twitter.com/0QnsWhnCQH
— TAJIRI (@TajiriBuzzsaw) June 27, 2022
2022年初夏に入り、Jリーグでも(実証段階ではあるものの)声出しが解禁された試合もあるし、プロレス界でも、DDTプロレスリングが7.7新宿FACEで行う声援可能な興行を皮切りに、声出し可能な方向に歩みを進める動きが見られた。
Jリーグ声出し応援検証結果報告、試合後コロナ陽性者ゼロ「順調にスタート切れた」窪田常勤理事 https://t.co/IE1gW57lOM
— 日刊スポーツ (@nikkansports) June 21, 2022
マスク着用での声援、紙テープの投げ入れ、応援用横断幕の設置!とりあえず大田区総合体育館大会での施策ですが、徐々に拡大していって2020年より前の状況に戻していきたいと思います! #ddtpro #tjpw #GanPro https://t.co/rdi3QIrZQj
— 高木三四郎 SanshiroTakagi (@t346fire) June 27, 2022
その一方で、これまでの日本の感染防止対策が簡単に否定される風潮に、私はどこか違和感を覚えてしまう。
新型コロナウイルスが流行りだした2020年初頭、海外からの水際対策で遅れを取った事で、日本国内の感染拡大や、その後の緊急事態宣言頻発の一因になった事も否定はできないから。
今ならどうとでも言えるけれど、日本のキツいコロナ対策は、何も悪い事ばかりではなかったと私は思っている。
声出し解禁の流れは良い事だと思うんだけど、「海外ではノーマスク」とか「日本は規制が厳しすぎる」みたいな風潮にも、それはそれで違和感覚えるマン…#多分消す
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) June 28, 2022
そうした声出し解禁の機運が高まりつつある中で、改めて感じたことがある。
現地観戦しているプロレスファンのマナーだ。
プロレスファンのマナーに救われた、6.4大田区の奇跡
2022.6.4、大田区総合体育館にて行われた『大谷晋二郎エイド』を観戦した。
![](https://assets.st-note.com/img/1656601634451-DYwvJ8Lyua.jpg?width=800)
この大谷エイドでは、声出しに関するアナウンスがハッキリとなされなかった。
声出しNGというアナウンスも無ければ、『マスク着用なら声出し可能』とのアナウンスも無し。
![](https://assets.st-note.com/img/1656601681002-ZCHYR9FcsX.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1658429849800-4B9N0pcOJS.jpg?width=800)
故に、試合中は大声で叫ぶ人が出たり、野次が見受けられたり、コロナ禍の会場としては異様な光景が生まれていた。
(これに関しては、ハッキリアナウンスしていなかった運営も悪いと感じている)
しかし、それ以上に印象的だったのは、多くのファンのマナーだった。
選手の名前を叫んでコールする人間が出ても、それに続く者が現れなかったのである。
アナウンスがハッキリなされていない会場で、当日は場内での飲食販売も解禁。
今年4月のZERO1両国でも、アナウンスが曖昧故に声出しが止まなかったこともあり、大会前は「マナー違反が横行しそうだなあ」という懸念しかなかった。
それだけに、声出しが最低限度で収まったのは、本当に奇跡としか言いようが無いのである。
そして、その奇跡は、"普段から会場で観ているファン"の存在なくして成し得なかったと思うのだ。
(今回、会場で聞いた明確な声援も、普段通っているプロレス会場で聞くような声色ではなかったから。)
大谷エイド、会場での声出しとか色々問題はあったけれど、私は逆に、アナウンス無しでも大多数が声を出さず守った姿勢はもっともっと評価されて然るべきだし、誇られるべきだと思うのです😌
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) June 4, 2022
誰かがコールを叫んでも続かなかったのは、その現れ
最悪の事態も想定していたから、そこで収まったのは凄い
正直なところ、酒も解禁されてたし、声出しに関してのルールも周知されてなかったしで大会前は不安しかなかったけれど、そういうのが最低ラインで収まったのは、コロナ禍でもルールを守り続けてきた人達がいたことの何よりの証拠ですよ、本当に👍✨
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) June 4, 2022
皮肉なもので、6.4大田区は、私が普段観戦している団体そのファンが、ルールを守って観戦している事をハッキリ証明する場になった。
![](https://assets.st-note.com/img/1658429818978-lZXMra1G2o.jpg?width=800)
運営サイドの「ルールが明確でなかった」点は否定できないけれど、それでも、選手に声援を送った客を通じて、団体の運営の一端を感じてしまったので…。
(プロレスリング○-TEAMとか)
運営の対応力
運営の対応は、観客に安心感を与える。
コロナ禍で声出しが制限される状況だからこそ、そうした禁を破る者への対応がシッカリなされているか否かは、団体に対する信頼にも響きかねない。
例えば、2022.6.7に観戦したプロレスリング・ノア後楽園ホール大会では、スタッフ同士の連携力を体感する出来事が起きた。
![](https://assets.st-note.com/img/1658429884956-SpIZKnmIV0.jpg?width=800)
私が入場ゲートに近い席から観戦していると、大会中、北側にいたスタッフが無線で指示を飛ばした。
「南側の○列□番辺りの人、マスクつけてないっぽいから、お願いします」
無線での指示が場内にいた別のスタッフに届くと、すぐさま当該客にスタッフが駆けつけるシステム。
普段見えないところでの積み重ねが、会場内を守っているのだと実感した。
今日はエキサイトシートにいたのですが、北にいたスタッフさんが無線で「○○側□番のあたりの人がマスクしてないっぽいんだよね」と指示して、別のスタッフさんに伝達→注意させる連携プレイがマジで凄いと思いました😳
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) June 7, 2022
こういう人達のお陰で快適に観戦できている😌#というね #noah_ghc
他の団体だと、【マスク着用なら声出し可能】な、2022.5.31 P.P.P.新木場1stRING大会も印象的だった。
![](https://assets.st-note.com/img/1658429920553-Y31MUV52gq.jpg?width=800)
![](https://assets.st-note.com/img/1658429940953-SORYNYRRlG.jpg?width=800)
この日、アナウンスを務めていた富山智帆リングアナウンサーは、試合と試合の合間という限られた時間の中で、マスクを着用していなかった観客の下に出向き、直接指摘に入る場面があった。
![](https://assets.st-note.com/img/1656603384800-I7uS4Fmk6t.jpg?width=800)
リングアナ業務もある中で、合間の時間に入って直接指摘するのは、中々出来ることではない。
その一方で、試合前に富山リングアナが何度となく注意事項をアナウンスしていても、こうした事象は起こったので、試合間に定期的にアナウンスする事も必要なのかなあ、とも感じた次第です…。
(途中から入って来る方もいるので)
声出し可能な環境が、必須だと感じなくなったのは…
以下は、私個人の感想…。
私自身、選手を応援したいときにコールが出来ないのは辛い、という思いはある。
ただ、コロナ禍を経たことで、以前よりも声出し可能な環境を必須だと感じなくなってしまった。
それは、感染リスクに対する恐れではない。
乱暴な言い方になるが、【野次などで試合が外野に邪魔されない】という安心感から来ているかもしれない。
声援禁止になったことで、応援や野次の一切を発することが出来なくなった。
観戦時における比重が、【会場内での声援】に置かれているとキツく感じてしまうかもしれないが、そこに重きを置いていない者からすると、「声援はあればワクワクするけれど、不自由さは感じない」というのが正直なところだ。
(私の場合、【カメラで撮影禁止】、【実況ツイート禁止】とかの方がキツいかも)
極端な話、外野の介在しにくい雰囲気が生まれたからこそ、意図せぬ会場中のどよめきが鮮烈な印象を残した試合・大会は多く生まれたし、(無観客試合とはいえ)30分以上睨み合った『潮崎豪vs藤田和之』(2020.3.29)のような伝説も生まれなかった気がする。
![](https://assets.st-note.com/img/1658430049772-Re4X2m4JtP.jpg?width=800)
客の野次や茶々が入らないからこそ、張り詰めた雰囲気で見る試合は最高でした。
まあ、声援出来ない事は確かに辛いし、選手たちが声援を受けて感極まる姿を見てしまうと、上記のような意見は強めに言いづらかったりもしますが…。
まとめ〜"声援禁止"が悪とされる違和感〜
猪狩秀平「『今そのタイミングじゃないわ』ってなる事が変な事じゃないし、それぞれにタイミングってあるんで。みんなが『いやあ、今がタイミングやな』と本気で思える時までは絶対に続けるし、焦らないで大丈夫やから。そういう人もいるって分かってます。でも、私は出来るだけ普通にやる方向に進めます。」
2022.6.17、ロックバンド・HEY-SMITHの猪狩秀平が、自身のYouTubeチャンネルの生配信で話した内容の一部である。
生配信では、自身が主催するロックフェスの現状を報告するにあたり、「50%のキャパでマスク着用なら声出しも良いんじゃないか」、「居酒屋の方がリスク高いんじゃないか」という個人の意見も述べつつ、音楽フェスの動員が落ちている現状についても触れている。
ロックバンドのSiMも、2022年秋に予定しているツアーでは、変則的ながらも声出し解禁を打ち出すことを発表した。
(下記のツイートの2枚目の画像のコメントは、色んな方に知られてほしいです…)
【NEWS】
— SiM_Official (@SiM_Official) July 19, 2022
“The Rumbling”を含む4曲入りEPのタイトルが「BEWARE」に決定!
リリースに伴い、全国ツアー開催決定!
只今よりSiM App会員限定先行受付開始!
※「声出し」に関して画像2枚をよく読み、ご応募ください。https://t.co/vCBUDucp8F pic.twitter.com/z52RPc4Wpy
両者の主張からは、状況や段階を踏まえながら、ルールを守りつつ前進していく姿勢が感じられる。
私のスタンスも、この考えに近いかもしれない。
コロナ禍から約2年以上が経過し、ちょっとずつ前に動き始めてきた2022年。
プロレスにおいても、声援可能な興行は以前より(微妙にではあるが)増えつつあるし、後楽園ホールでも、コロナ禍以降シャッターが下りたままだった飲食売店が遂に再開した。
ただ、前述したように、コロナ禍以降に設けられたルールが安易に否定されてしまう風潮に対して、私は強い違和感を拭えないでいる。
そもそも、万が一会場でクラスターが発生したら、会場は使えなくなるばかりか、下手したらジャンルすら叩かれる危険性だってあるのだから。
私自身、今も現地観戦が出来ているのは、コロナ禍以降の厳しいと思われるルールが、大半の団体・会場・ファンによって守られてきたことに他ならない。
(実際、後楽園ホールなどの主要会場や、大会場でクラスターが起きた事例は見かけていない。)
新宿・歌舞伎町にある新宿FACEなんかは、正にそうだ。
FACE前の敷地内で路上飲みが横行し、ノーマスクの客引きや通行人の多さを見ていても、「会場内の方がよっぽど安全だ」と心底思うもの。
FACEに出てから数秒で視界に入る、路上飲みの多さに震える…
— レンブラント🍻🤼🎸🍴🍹 (@rembrandt_kbs) July 7, 2021
楽園から、とんだ下界に降りてきてしまったようだ…()#消さない
また、「声援が可能になれば、動員も戻ってくる」といった意見や見方についても、私は懐疑的である。
私自身、声出し解禁を標榜した大会に何度か足を運んでいるが、一気に動員が戻ったような感覚はない。
声援云々はプレゼン上の魅力の一つであって、絶対でも全部でもない気がしている。
数ある娯楽の中で、興味や時間、財布事情etcを加味した上で選ばれるんじゃないか、と。
声援のある会場は好きだけど、【声援無し=面白くない】と一概に括られてしまうのは嫌い。
私の中で、そんな微妙な感情を抱えるようになってしまったのは、全てコロナのせいだ。
(断言)
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