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『5大GHC王座戦』という名の応援歌~2022.11.10プロレスリング・ノア後楽園ホール大会~

はじめに

2022.11.10プロレスリング・ノア後楽園ホール大会で、珍しい試みが実施された。

それは、本戦5試合が全てタイトルマッチというラインナップ。


団体が管轄する5つのGHC王座の防衛戦を、1大会に纏めて行う事自体ビッグマッチでも珍しい今のNOAHで、後楽園大会に全部固めてくるのは異例中の異例。
(直近だと、日本武道館か、10.30有明アリーナくらいか)


ダークマッチ1試合が組まれたとはいえ、本戦が王座戦オンリーという所に盛り上がりの難しさとかはあるかなあと思っていたものの、フタを開けてみれば充実感満載な大会になった。


そんな『5大GHC王座戦』を見て感じたことがある。

この日の5試合には、沢山の『頑張れ』が詰まっていたのではないか、と。



全5曲入りのファイトソング集

今大会には、人の背中を後押しするような応援歌が沢山あった。


オープニングのGHC Jrタッグ王座戦から、そんな内容が滲んで見えた。
(『小峠篤司&吉岡世起vs大原はじめ&近藤修司』)


2019年5月に結成し、同年12月にJr戦士が加入したものの、これまでJrのベルトを巻くことが出来ていなかった『金剛』。

悲願のJr王座をもたらしたのは、【縁の下の力持ち】・大原はじめだった。


本戦でいきなりのタイトルマッチ。
アンダーカードを経てタイトルマッチに進む普段とは異なる流れで、トップバッターを任されたJr勢。

中でも、大原の盛り上げっぷりは随所に存在感を発揮していた。


試合終盤、大原に試合が託された時の爆発力と、試合が決した瞬間のどよめきは忘れられない。
個人的に、今大会の裏MVPだった。


この日は、外国人選手による頑張りも目立った。

日本国内では史上初となった外国人選手同士によるGHC Jrヘビー王座戦。
(『ニンジャ・マックvsダンテ・レオン』)


今年7月の日本武道館大会と同一カードながら、リング内外問わず展開されたエアバトルの数々は圧巻の内容だった。
ダンテ・レオンのフィニッシャーも文句無し!


GHCナショナル王座戦では、約10ヶ月にわたり敵無しと思われた強敵・船木誠勝から、イホ・デ・ドクトル・ワグナーJrが王座奪取に成功。
外国人選手では初となる同王座戴冠を果たした。


NOAHでは初のシングル戴冠となったワグナーJrだが、パワーファイトもエアバトルも得意とするオールラウンダーが戴冠したことで、今後築かれるであろう防衛ロードが私は非常に楽しみになった。

ワグナーJrに待ったをかけたのは、シングル王座初挑戦となる稲村愛輝。
決戦は、11.23国立代々木競技場第二体育館大会!


恐らく、外国人選手の来日も難しい1年前だったら、この光景は考えられなかったと思う。



大会中盤に組まれたGHCタッグ王座戦も出色の出来だった。
(『杉浦貴&小島聡vsモハメド・ヨネ&齋藤彰俊』)


筆者より年齢が2周り近くも上の4選手が激闘を繰り広げる姿に、思わず胸が熱くなるものを感じた。


ここ1~2年以上、王座挑戦の機会が無かったヨネと彰俊が王者チームを追い詰める様は、王座戦のブランクを感じさせない内容。


私自身、「人生に迷った時に見返しておきたい試合」とハッキリ言い切れる試合が、この試合にはあったと確信している。



「頑張っている」だけではない、清宮海斗の凄さ

数々のファイトソングに満ちた後楽園大会のメインを飾ったのは、『清宮海斗vsティモシー・サッチャー』のGHCヘビー級王座戦。


後楽園大会でのGHCヘビー戦は、2020.8.5の『潮崎豪vs丸藤正道』以来。

ここ2年はビッグマッチの防衛戦が増えつつあった同王座戦だが、この日行われた防衛戦は【後楽園ホールでやるのは必然だったのかもしれない】と感じさせる魔力に包まれていた。


前述のタッグ王座戦のようなガツンと来る盛り上がりとは対照的に、場内に流れる静寂…。
それでも、時折試合が決まりかねない間接技と、強烈な打撃技が静寂を打ち破り、観客の視線をみるみるうちに惹き付けていった。


一瞬でも生まれた隙を逃さず、サブミッションで仕留めにかかるサッチャー。


終盤、ジャーマンスープレックスを決めた清宮に対して、サッチャーが体勢を入れ替えて変型チキンウイングアームロックを極めた瞬間、場内の静寂が一気に拍手とどよめきに変わった。
この振り切り具合の凄さは、後楽園ホールでないと体感できなかったかもしれない。


正直、写真で振り返っていても、試合中は清宮がペースを握られる場面が多かった。


それでも清宮が凄かったのは、その頑健さとスタミナにある。

10月の藤田和之戦における圧倒的暴力性とはまたベクトルが異なる、サッチャーのキツい関節技地獄に耐え続け、終盤の勝機をモノにした事で一層その印象が強まった。


終盤の蹴り技における跳躍力なんかは、30分近くも猛攻を喰らっていた選手の動きとは思えなかったくらい。


強敵を退けた今の清宮の試合内容に対し、Twitter等では厳しい意見も目にする。
試合後に王座挑戦を表明した拳王からは、「頑張ってるだけだ」と言われた。


それでも会場は、拳王の批判に対する支持以上に大きな拍手を以て、清宮の頑張りを支持してみせた。
私は、これが全てではないかと思うのだ。


前回の藤田和之も、今回のティモシー・サッチャーも、「頑張っているだけ」で超えられるような相手では決してなかったし、仮に「頑張っているだけ」だったら相手に試合を決められていた気がする。


「頑張っているだけ」のレベルを超え、その先に成長した姿を見せてくる清宮海斗の姿を、私はとてもカッコいいと思う。

2018年12月のGHCヘビー初戴冠当時、「新しい景色を見せる」というフレーズを用いていた清宮だけれども、今の清宮が見せてくれそうな新しい景色ならば、迷わず私はBETしたい。


まとめ

大興奮の中で閉幕した、後楽園の5大GHC王座戦。


本戦5試合とコンパクトな内容も、1試合あたりの熱量と満足度が高く、久しぶりに「暫くプロレスの試合を観に行かなくていいかな…」と思うくらいの充実感から放心状態に陥ってしまった(笑)。


ただ、仕事帰りの身体には、それ以上に湧き出る元気があった。
「これだけ頑張っている人達がいるのだから、私も人生を頑張りたい」みたいな感情。


恐らく、全8~10試合のビッグマッチで今回のような5大GHC王座戦が組まれていたら、「面白いけれど、逆にお腹いっぱい過ぎてキツい…」と言う感想になっていたかも知れない。

GHC王座戦に焦点を当てた、ビッグマッチでは出来ないコンセプト興行だからこそ、場内の盛り上がりと試合のメリハリを感じられた気がする。

凄く面白かった。
こういう試みは、またやってほしい!

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