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【発信】が、"手段"から"目的"になってしまう事の怖さ

はじめに

2022.8.13にテレビ朝日系列で放送された『プロレス総選挙』。

1位~50位まで発表された今回のランキング結果は、ファンの賛否を巻き起こし、各団体の選手もこの内容に言及していた。


中でも、リング上で総選挙についてハッキリと言及してきた団体がDDTプロレスリングだ。


遠藤「見てもらえたら面白さを分かってもらえると思うけど、外に広めること。そこが今のDDTには足りてない」


今回の投票結果を振り返った時に、私の中で衝撃的だったのは【DDTグループの50位圏外】だった。

個人的に、発信力に長けた選手が多い印象のDDTグループにあって、DDTプロレスリングを始めとした所属選手が1人もランクインしていない今回の現実…。


本件を通じて、私は【発信】する事の難しさだとか、【発信】そのものの意味について、諸々考えさせられたのである…。


【発信】は"手段"であって、"目的"ではない。

DDTプロレスリングは、【発信】に重きを置いている団体だと私は思う。


2021年の『サイバーファイトフェスティバル』では、DDT勢が盛んに発信を進める一方、発信量が足りていないNOAH勢に対しての批判的意見も聞かれた。


その一方で、DDTで選手が発信しても団体がスルーされてしまう部分は、私自身、フェスよりも前に入江茂弘や奥田啓介を通じて嫌という程思い知っている。


そして、今回の『プロレス総選挙』におけるDDTグループの50位圏外という結果を受けて、私は痛感させられた。
【発信】は"手段"であって、"目的"にすると意味が変わってしまうのではないか、と。


これは、何もDDTに限った話ではない。

今まで私が「選手や公式の発信で興味を持った人が増えた!」と感じていた事なんて、実は【狭い所で他所のパイを奪い、引き込んでいた】だけであって、それが"プロレス村の外に届いていた"ように錯覚していたのかもしれない。

【発信】していることがクリアされていても、ただ発信している事実だけが満たされて、真の意味で外には届いていなかったのではないか、と。


そして、最近のDDTにとって、真にプロレス村の外に届いた話題なんて、『マツコの知らない世界』に出演して興味と注目を集めてきた『The37KAMIINA(サウナカミーナ)』の面々だけだったのではないか?


正直、この現実に私はショックを隠せないでいる。
私は【発信】は"手段"だと思ってはいても、DDTのような発信力に長けたイメージの強い団体でさえ、今回の選挙では外側に届かなかった事実に…。


WAVEで痛感させられた、【発信】の失敗と限界

【発信】が"目的"で終わってしまう事の無力感は、私自身、過去に経験がある。

それは、私がプロレスリングWAVEを追っかけていた時のことだ。

2018.12.29 WAVE後楽園ホールより

2017年7月~2018年12月までの約1年半、私は毎月1回は必ずWAVEを生観戦していた。

(こういうことにあまり言及したくはないのだが、)当時のWAVEは日曜・祝日の昼開催であっても観客動員に苦戦しており、コロナ禍前の後楽園ホールでフルキャパシティの4分の1(約400人前後)も入らない状況。

社長(現:会長)を務めていたGAMIも、「オレンジが目立つ」、「空席がある」とインフォメーションコーナーで盛んに漏らしていたほどだ。


私がWAVEを追っていた2017年10月、大畠美咲がWAVEのシングル王者になった。


戴冠直後、大畠はBlogでファンに向けてこのようなお願いを記している。

最後に、ガミさんから嫌味ったらしく言われた言葉。
「4年半もかけてチャンピオンになったなら、後楽園埋めてくださいよ」

(中略)

でも、そのためには私の努力だけでは足りません。
選手の意識改革をする為に試合で示していかないといけない。
そしてもっと沢山の方にWAVEを知っていただく事。
プロレスだけじゃなく色んな分野にアピールしていかないと。
それともう一つ重要な事。
今このブログや私のツイッターやFacebookなどのSNSをご存知の方は、拡散していただきたいのです。
試合がある日は写真や感想をアップしていただきたいのです。
WAVEをもっと大きくする為に、ご協力をよろしくお願いいたします。


以来、私は当日の会場の実況ツイートだけでなく、他の団体に行った時よりも感想を書くようにした。
選手関係者からも、リツイートやいいねといった反応を積極的に頂いた。

でも、動員なんて、すぐには好転するものでもない。


大畠戴冠から約半年以上経ち、私はこのキャンペーンに対して、ある種の限界を感じるようになった。

当時の公式アカウントのツイートは、殆どbotのような開店休業状態で、大会情報の告知はGAMI社長ないし選手からの発信が常。
選手がファンのツイートをリツイートすると言っても、結局は常連組のツイートばかりが支配して、公式がファンに寄りかかりっぱなしという状態。


2018年のシングルリーグ・『CATCH THE WAVE』には、2ブロック・12選手制ながら、外部参戦も含め比較的豪華メンバーが揃ったにもかかわらず、SNS上でイマイチ話題にならない現実が浮き彫りとなった。


当時、私はTwitterにこんな内容の事を書いていた。
要は、「ファンの【発信】が内輪ノリの道具として消費されているだけではないか」という疑問だ。


今振り返ってみても、【発信】のサイクルとしては最悪だったように私は思う。


厳しい事を言ってしまうと、団体の公式Twitterはファンの行動力・拡散力に甘えていたし、関係者はファンの発信をリツイートで広めたように見えても、其の実はエゴサーチで満たされている事と大差ない形で終わった。

当時、ファンが【発信】をしていても、それが内輪でしか盛り上がらず、【発信】が"目的"のまま、真の意味で外には届かなかった。


私自身、「発信することが全てにおいて素晴らしい事であり、正しい!」だなんてハッキリ思えなくなったのは、この時に感じた敗北感や虚無感が大きい。
(勝手に期待して、勝手に敗北した気になっているだけなのかもしれないけど)


【発信】したとて、ただの目的になってしまえば、もし結果が伴わなかった場合、「発信しているのに、どうして…?」というジレンマに陥ってしまうのではないだろうか?
【発信】している事だけで、【やることやっている】とイコールになってしまってはいないか、と…。


まとめ

インターネットが発達し、一般人でも発信できるようになった現代において、SNSで発信する行為は重要な意味を持つ。

ただ、発信するといっても、『発信すること』自体がゴールや最終目標になってしまうと意味がない。

2021年12月に私が書いた記事の一文になってしまうが、この時と私のスタンスは変わっていない。


「【発信】と【本分】は別のベクトルを向けてしまうことがある」という岩政大樹(現:鹿島アントラーズ監督)の主張にも同意できる。


私は「真の意味で外に届いていない」なんて偉そうに書いているが、選手の発信能力"だけ"では限界があると思う。
ここ最近のプロレス界で、真の意味で外に届いたと思われる事象でもそうだ。

先述した『The37KAMIINA(サウナカミーナ)』にしても、TV出演の前からサウナ関係の連載記事を持っていた。


2020年にTikTokでバズった世志琥にしても、当人のお菓子作りの能力だけでなく、インフルエンサー・あぃりDXの勧めで始めたTikTokが人気沸騰に繋がっている。


そこに本人の主体的な発信が積み重なっていたのは確かだが、それが拾われるか否かなんて、時の運や環境も大きいと私は思う。
(個人的には、プロレスリングBASARAのFUMAがやっている自給自足だとか、電車のスタンプラリーを自転車で制覇ネタだとかも面白いと思うんだ…)


多種多様な趣味や娯楽が溢れる今の世の中にあって、プロレスに向いてもらうのは決して容易ではない。

ファンによる発信であっても、非プロレス系のアカウントに届かせるのは至難。
ましてや、コロナ禍で知らない人を誘いづらい感覚もある。


長々書いてみたものの、結局のところ、【発信】を通じてパーソナルな部分での信頼を積み重ね、説得力を担保するくらいしかファンの立場では出来ないだろう、と私は感じている。

極端な話、「貴方が言うから行ってみました」とか、「写真を見て気になって行きました」とか、その領域に辿り着けるのが理想かもしれない。


こういうnoteにしても、プロレスのタグだけでなく、記事と関連性のありそうなタグをつけて見てもらえるように心がけている。
(試合の感想なら【#スポーツ観戦記】、今回のような感想は【#エッセイ】や関連ワードを付けるetc)


そう考えた時、私はハードヨカタではなく、他業種にリーチできるインフルエンサーになりたいと強く思ったのだ(よせ)。

頑張ろう(違)。


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