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プヲタが初めてPassCodeのライブに行った話


はじめに

2023.10.6、私は後楽園ホールでも、新木場1stRINGでも、上野公園の野外ステージでもなく、渋谷にあるSpotify O-Eastに足を運んでいた。


都内各地でプロレス興行が行われたこの日、好きなプロレス観戦をサボって、都心のライブハウスに足を運んだのには理由があった。

PassCodeのライブを鑑賞するためだ。


私が初めてPassCodeというグループの名前を知ったのは、2022.2.12のこと。
SNSでフォローしている方が、この日行われた日本武道館公演に足を運んだという投稿を残していたからである。


この日から丁度1年前の2021.2.12に、日本武道館で武藤敬司がGHCヘビー級王座を獲得したプロレスリング・ノアのビッグマッチを観戦していた私は、当時「あの日から丁度1年後に、こういうライブがやってるのか」と、1年という時の長さと、日本武道館の持つ多種多彩なアーティストが上がる磁場のスゴさに感心してしまった記憶がある。

まさか、その後私が彼女たちのライブに足を運ぶことになるなんて当時は予想すら出来なかったのだから、とかく人生とは面白いものだ…。


私にとって転機が訪れたのは、2022年夏以降だったと思う。
同時期、Spotifyで音楽を聴く事にハマり始めた事で、色々なアーティストやバンドの楽曲に触れる機会が圧倒的に増えたのだ。

アーティストによってはシングルやアルバムがほぼ全曲聴ける環境の中、何となく記憶の片隅にあったPassCodeの名前を検索してみて楽曲を本格的に聴き始めたら、ただただ圧倒されてしまった(語彙力)。

単純に、曲のカッコ良さに胸を打たれたのである。


出自がバンドだろうがアイドルだろうが、音楽的に良い曲はあるものだ。
しかし、楽曲を聴いただけでアイドルグループとは思えない、最早ロックバンドのような個性を纏っていた楽曲には、私の人生の中で今まで御目にかかった事が無かった。


「1回、生でライブを観ておきたいな」

今年秋頃、何となくそう考えていたタイミングでSpotifyに掲載されたライブスケジュールを見たところ、近々に都内でワンマンライブを控えているではないか。


興味を持った私はライブのチケットを押さえて、現地に向かうことを決意したのであった。

以下は、しがないプヲタが初めてPassCodeのライブに行って抱いた感想の列挙である。


アイドルの皮を被ったラウドロッカー

迎えたライブ当日。


前日にSNSのフォロワー様でPassCodeファンの方から会場内の声出しが解禁されていると知り、かつ私自身ラウドロック系のライブは初鑑賞ということもあり、取り敢えず後ろで控えて大人しく観ることに…。

会場の観客は男性が殆どであったが、よく見ると、若い男性達の中に外国人やロックバンドのライブにいそうな風貌の観客も混じるなど、ステレオタイプで想像してしまうアイドルの現場とは一致しない客層がそこにはあった。


ほぼ定刻通りにライブが始まると、会場中のボルテージも一気に上昇する。

9月に行われた海外ツアーから凱旋帰国を果たしたグループのオープニング曲は、ツアータイトル名にも使われた『GROUNDSWELL』。


恐らく、この一曲だけでもオープニングパフォーマンスを見た人達は、PassCodeというグループが、世間一般で想像し得るアイドルグループのイメージと大きくかけ離れている事に気付くのではないだろうか?

そのように感じてしまうほど、アイドルというよりは、アーティストないしロックバンドのパフォーマンスだったのである。

(ダイブやモッシュは禁止されているものの)フロアの観客達の中には観客の上をサーフィンする者も現れたが、「ステージ上にいる彼女達に近づこうとしている」というよりは、「激しい曲の高まりに抑えきれず飛び込んでいった」という表現が適切かつ正しいように私には見えた。

私自身、現存している好きなバンドはGRAPEVINE、TRICERATOPS、ストレイテナー、the band apart、Nothing's Carved In Stone、フジファブリックなど、モッシュやダイブとは無縁のバンドばかりだったので、生で初めてサーフィンの光景を見たことに対する驚きの念も幾らかはあったと思う。
ただ、それ以上に、アイドルのライブにおける盛り上がりとは明らかに一線を画す光景の数々に、私は度肝を抜かれ続けた。


しかし、曲間のMCコーナーでは、観客からメンバーの名前が叫ばれ、MCの雰囲気もどこかほんわかとしていた。
(リーダーが社長と『北斗の拳』を打ちに行って10万円負けた話とか、ステージ上に扇風機が無い話だとかが個人的に面白かった。)

そんな可憐な見た目やMCの雰囲気から一転して歌われるラウドロック調の楽曲というギャップの大きさで殺してくるところは、見た目は可愛かったり綺麗だったりするのに、技や内容は玄人やプロレスを知らない人をも唸らせてしまう今の主戦級の女子プロレスラーと共通項があるんじゃないかと感じてしまったのは、しがないプヲタの宿命か…(苦笑)。

瑞希(東京女子プロレス・写真右)
岩田美香(センダイガールズプロレスリング)


しかも、凄かったのは楽曲だけではない。
激しい曲をやりながらも、メンバー全員がダンスパフォーマンスまで並行して行っていたのだから驚かされる。

(バックバンドも含めた)【ツインボーカル+ツインギター+ベース+ドラム】編成のロックバンドとしての面と、アイドルとしての面を、ライブでキッチリ両立させていたのだ。

ボーカルは常にオートチューンで加工された状態ではあるものの、ボーカルの特徴を消して色を統一させている事で主に3人で歌を回す際にも楽曲としての違和感はなく、かつ【踊りながら歌う】という難易度の高いミッションもクリアしていた様を見てしまうと、私自身オートチューンに対して抱いていた抵抗感も不思議と無くなっていた。
ある種、必要な道具じゃないかとプラスに感じたし、オートチューンの有無云々でパフォーマンスの高さそのものが否定される訳でも無いなあ、と。この辺りは実際に聴いてみないと分からなかった事である。


観客の盛り上がりっぷりも特筆すべきものがあった。

ライブが始まる否やフロアの中心地に集結するファン達は、皆手拍子とコールを曲ごとに適切かつ確実なタイミングで実行し、10月初旬にもかかわらずフロア内は真夏のような熱気になるよう絶えずアシストしていた。
この献身性と連帯感の高さは、良い意味でアイドルグループファンの強みなのかもしれない。

特に私自身印象に残ったのは、私の隣にいた40代くらいの外国人男性の反応だった。
ライブ中に盛り上がるフロアの中心地やステージ上のメンバーを見る目は暖かく、表情も笑顔。何より曲のビートに乗って体を動かす様を見て、「音楽に国境は無いんだ」ということを改めて実感させられたのである。


まとめ

大盛況のうちに幕を閉じた、今回のPassCodeワンマンライブ。


正直なところ今回のライブは、ここ最近私が身銭を切って観に行ったプロレスや音楽といったエンターテインメントの中でも、今後の人生における価値観だとか自分の常識に影響してくるほどの影響や衝撃を私に与えてくれたと感じている。

今回のライブ鑑賞を振り返った時に、個人的にアイドルに対して抱いていたイメージは(良い意味で)丸っきり変わったし、「ラウドロックのライブっていいな!」とも思ったし、とにかくもう、様々なポジティブな感想が込み上げてしまったのだ。


SNS上のハッシュタグを検索して観客や関係者の反応を見ていると、ここ最近行われたPassCodeのライブの中でもかなり高評価な内容だったそう。
ライブ初観戦でこういう回に当たったのは、運が良かったのかもしれない。


冒頭にも記したように、私がPassCodeを知ったのは、フォロワー様のSNSの投稿がキッカケであった。
もし私がその投稿に気付いていなければ、このグループを知る機会は無かったor知るのが遅くなっていた事だろう。

何気ない投稿が、誰かの"好き"に繋がっていくことがもしかしたらあるのかも知れない。

そう考えただけでも、ファンの発信や積み重ねで変わっていく可能性は僅かでもあるのではないだろうか?
そんな事を考えた、今回のライブ鑑賞なのでした…。


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