入江茂弘は『歩くディズニーランド』である。
はじめに
入江茂弘は『歩くディズニーランド』である。
プロレス好きの端くれが、勝手にこんな事を断言してしまうのも、いささか失礼な事かもしれない。
ただ、このフレーズで例えたくなるくらいには、プロレスラー・入江茂弘の持つ唯一無二の存在感に私は強く心を惹かれてしまうのである。
どの団体に上がったとしても変わらない、人の心をワクワクさせる期待感。
そして、その期待を裏切らない満足度の高さ。
本家・ディズニーランドのアトラクション同様、迫力がある多彩な技の数々。
そして、彼の持つ愛らしさ。
入江茂弘は、存在そのものがテーマパークであり、マスコット。
何より、人の心を飽きさせないし、チケット代を払って見に行く喜びを全身で感じさせてくれる稀有な選手だ。
Epilogue
私が入江茂弘という選手を好きになったのは、2016年2月11日の事だ。
当時、SNSすらやっていなかった私は、レンタカーを借りて、当時住んでいた千葉から、DDTプロレスリングの地方大会が行われた茨城県まで足を運んだ。
水戸駅から徒歩25分ほどの位置にある、水戸市青柳公園市民体育館サブ競技場で、入江はDDTの両国ビッグマッチに向けた重要な闘いに身を置いていた。
当時、団体最高峰のKO-D無差別級王者・木高イサミに挑戦する権利を賭け、『HARASHIMAvs入江』の挑戦者決定戦を控えており、2月末の本戦まで、その前哨戦が組まれていたのである。
試合後、会場の撤収作業と並行して、入江のサイン会が行われた。
売店で色紙を購入し、入江の列に並んだ私。
順番が回ってきたタイミングで、私はこう伝えた。
入江は、1度握っていた手を強く握り返し、満面の笑みでこう返したのである。
私自身、売店に出向く回数は少ないと自認しているけれど、強く握手を握り返してくれた選手は、後にも先にも入江だけだった。
ほんの些細な事だけど、これが、私が入江茂弘という選手を好きになったキッカケである。
苦難の時期を経て確立した個性
しかし、前述した挑戦者決定戦では、入江が惜しくも敗戦…。
その後、KO-Dタッグ王座戴冠や、海外遠征でブライアン・ケイジとシングルマッチなどで実力を高めていった入江だが、本人の積み上げる実力や実績は、DDT内で中々評価されていなかったようにも感じる。
その悔しさから、私もツイートやブログで不満を爆発させたことも多々あった。
だけど、推しの選手にそうした感情を抱いた事の少ない私が、気付けば推し以上に力を込めて、入江の試合を見ている事に気付いた。
2018年秋にDDTプロレスリングを退団後は、フリーランスとして日本国内や海外で国境を越えて活動。
日本国内では、2019年にCIMA率いるユニット『#STRONGHEARTS』に加入。
入江個人としても、全日本プロレスのGAORA TV王座、2AWのシングル王座(2AW無差別級王座)などを戴冠するなど、活躍の場を拡げていった。
私自身、最近の入江で印象に残っている試合が2つある。
1つ目は、2022.5.18にGLEATで行われたGLEAT後楽園ホールのメインイベント・『エル・リンダマンvs入江茂弘』
2つ目は、2022.8.13ガンバレ☆プロレス後楽園ホールのメインイベント・『今成夢人vs入江茂弘』
2試合とも、入江が団体王者に挑戦して敗れた試合なのだが、王者を圧倒するほどの強い攻撃の数々に、磁場を狂わせてしまうほどの衝撃を受けた。
個人的に、「敗者が、王者の格も実力も圧倒し尽くして負けた」という点で、2022年に産み落とされた大問題作だったと思っている。
敗者が印象に残る試合はプロレスを観てきた中で数多く出くわしたが、このような試合にお目にかかれた記憶なんて、私にはない。
まとめ
もしも私が他人から、「初めてプロレスを見る人にオススメの選手は誰ですか?」と聞かれたならば、私は真っ先に入江茂弘の名前を挙げる事だろう。
何故ならば、プロレスを知らない方にも伝わる入江茂弘の視覚的効果と迫力には、言葉や知識を必要としない説得力が込められているから。
2023年に入ってからは、海外に長期滞在しながら試合を行っていたこともあり、日本で試合を見る事が中々叶わない時期もあった。
それでも、久しぶりに見た入江は相変わらず規格外だった。
(2023.9.9 DDTプロレスリング大田区総合体育館)
メインイベントのKO-D無差別級王座戦で王者のクリス・ブルックスに挑戦して敗れたものの、強烈な存在感は寧ろ以前よりも増していた気がしたのだ。
正直なところ、今回の冒頭で述べた『歩くディズニーランド』という表現も、今回の記事の原案自体も、私がnoteを始めた2021年11月頃には既に構想していたのだが、入江の存在を文章全体で表現することが私自身中々思い浮かばず、記事が遅々として進まない状況が2年近く続いていた。
でも、今回の大田区で入江の試合を久々に生観戦して、そうした悩みのようなものは一気に消し飛んでしまった。
そんな文章表現なんて無くとも、「『入江茂弘はスゴい!』で集約できてしまうじゃん!」と。
入江茂弘はスゴい。
出したチケット代を1人で回収してくれる魅力と存在感が、彼には夢のようにして詰まっているのだから。
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