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ラグジュアリーのその先"表参道 GYRE FOOD"

MOMAデザインストアやHAY TOKYOが入っていて、定期的にチェックしておきたい表参道のGYRE。CHANELやメゾンマルジェラなどハイエンドなブランドも入っていて表参道を彩る建物のひとつだ。
この建物は2007年に竣工、オランダの建築家集団MVRDVがデザインを手掛けた。MVRDVの建築はダイアグラムがそのままに形作られているものが多く、内側から用途やボリュームが膨張して、結果的に印象的な表層を生み出している。
オランダの集合住宅「オクラホマ」は、カラフルなバルコニーが飛び出した特徴的なファサードでCMなどでも使われることがある。
GYREも5つの箱体のフロアが少しずつ回転してずれながら積み上げられ、その隙間にテラスなどが設けられている。
メンバーの数人がレム・コールハース率いるOMA出身ということで、なるほどその片鱗も感じさせるつくりだ。
竣工当初はテナントにブルガリカフェが入っていたが、2020年入れ替えに伴い約1000平米のフロアに「GYRE FOOD」として生まれ変わった。このレストラン、バー、セレクトショップなどの複合スポットのデザインを田根剛氏が手がけた。

店内の様子
テラスからの眺望

1.土から生まれ土へ帰る、を体現

カウンター
店内の様子

GYRE FOODのテーマは「循環」。田根氏が遠い未来を考えた時に、全てが土に帰りそこから緑が生えるという世界をこのフロアで体現している。
フロアに辿り着くと屋内か屋外なのか何とも言えない異様な雰囲気に包み込まれる。フロアを構成するフレンチレストラン、オールデイダイニング、バー、グロッサリーはそれぞれが緩く繋がりながらひとつの村のような一体感がある。
店内の床、壁、カウンター、家具類の多くが土で作られている。床と壁の境目がなく土が隆起しているような感覚を覚える。その他の材料も極力自然界に存在するもので構成されている。これらマットでソリッドなマテリアルは現代人の思考にフィットするうえに、自分が食べるものや使うものはこれら土から作られているんだといるだけで考えを巡らすことができる不思議な場所だ。

2.使い方を委ね、完成する空間

からまつのひな壇
からまつのひな壇

このフロアで圧倒的な存在感を放つのが天井目一杯まで活用したからまつでできたひな壇だ。田根氏はピラミッドのような古代遺跡をイメージし作ったという。椅子かテーブルか階段か、規則正しく積み上げられたブロックにその明示はなく、使い方は使う人に委ねられている。訪れた日もひとつのブロックに腰掛けコーヒーを飲みながらぼーっとしてる人がいたり思い思いに過ごす様子が見られた。

3.緑はそこに生えているかのように

店内の植栽
店内の植栽

現代のインテリア空間においてグリーンは欠かせない要素のひとつだ。飲食店もオフィスも緑が枯渇する都心において特に重要視されている。限られた面積の中でそれは天井から吊るされたり壁面緑化として設られたりする。
ここではコンセプトを貫き、土で作られたカウンターから結構なボリュームの植栽が姿を表している。それはあたかもそこに生えているかのように植えられている。

カレーライス

その日は開店と同時に訪れたため、人はまばらだった。ランチにカレーライスをいただいたが、土のありがたさを実感するカレーはまたひと味違った。
ちなみにここではデザインだけでなく生ごみをコンポストで堆肥にする取り組みも行っている。

ハイブランドが集う表参道の一等地で、煌びやかなものを一切排除してこうかもしれない未来を問うていることに意義がある。
ラグジュアリーが行く先のサステナビリティがここにある。


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