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そうとしか見えない"small MUJI展-日常のたのしみ方"

毎回面白い企画で見る人を楽しませてくれる銀座のATELIER MUJIの展示会。
前回投稿の「愛すべき日本のお菓子展」と同時に開催されていたのが、この「small MUJI展-日常のたのしみ方」だ。今回は多くを語らずとも見ればわかる、展示会。
ミニチュア写真家・見立て作家の田中達也氏がジオラマ用の人形と無印良品の商品を組み合わせ、日常の風景に見立てた作品とその写真を展示している。
さらに4階スペースには、歌舞伎座や老舗菓子店舗など銀座の街並みを無印良品の商品を使って表現した巨大なジオラマが展示されている。
街並みとしても、銀座の各時代や建築様式が競うよう乱立した様子がよく現れていたし、近づいてみるとジオラマの人形がよい演技をしているし、小さな文房具やサインがよい仕事をしている。


会場の様子
4階open MUJIスペース

今回の展示会での一番の醍醐味はどんな無印の商品を別のものに見立てるかのアイデアだ。
無印良品の商品は使いやすくシンプルね形状のものが多い。そのため別の事象に見立てるのに形状を象徴的に表すのに適している。
そして、そのシチュエーションにクスッと笑ってしまえるユーモアが盛り込まれる。

1.銀座の名所が身近な商品で忠実再現

和光ビル
歌舞伎座
三愛ドリームセンター

銀座の街並みを表現するのに、私も長く利用して見慣れたポリプロピレンの収納ボックス、籐編み、ワイヤーメッシュのカゴたちが所狭しと並んでいる。ひとつひとつを見ると商品そのものだが、その組み合わせや文房具や細かい日用品、それからジオラマ用の人形、車の演出によって銀座の街並みそのものになっているのに驚く。

そしてひと目見ただけでわかる銀座の名所の数々。
交差点のランドマークとなる和光ビルは、屋上の時計塔が置き時計と鉛筆により忠実に再現されている。何故か全体的に気品さえも感じる。歌舞伎座の屋根は開いたノートで再現されていたり、交差点のよく見る丸いビルへスピーカーが置かれていて、あーあの角のビルね、とすぐわかる。
さらに所々に登場する銀座の名店のロゴ。風月堂や三笠会館、ウエストや木村家など全国的に知られる老舗店から提供された展示品が、見つける楽しさを増幅させる。こちらもよく見慣れたロゴだこらこそ気づくわけだが、これらの老舗店が全て銀座を起点としている事実がまたすごい。

2.そうとしか見えない商品の別の顔

オール電化の街
釣りプロピレン
料理を急げ。"ハリー"アップ

6階ギャラリーでは、日常の風景に見立てたミニチュア作品を楽しむことができる。
見ているうちに、商品であると分かっていても段々そのシチュエーションを構成する要素にしか見えなくなってくる。
幾重に建ち並ぶコンセントタップは建物に見えるし、プラグの差し込み口は窓そのものだ。
「釣りプロピレン」と名付けられた作品ではポリプロピレンの材質が透ける氷上に見え、手がけの穴は釣り堀の穴にしか見えない。その他ホッチキスの針が、業務用キッチンに変身したり、思わぬかたちで素材や形状の共通点が生かされているのが面白い。

3.ディテールと人形の演技が圧巻

旅は人生のスパイス
MUJI HOTEL
アイシャドウのアイスはどう?

今回の展示で見逃せないのがディテールだ。
無印良品のヒット作のレトルトカレーの海に浸かる人々ほ思い思いにバカンスを過ごす様子が伺えるし、ナンで構成された海辺では海に入ろうとしない人がいて、桟橋にはバックパッカーもいる。ひとつひとつに物語が思い浮かぶし、このミニチュアでそこまで表現できるのがすごい。
無印ホテル内の各客室で過ごす人々の人間模様や、買うの?買わないの?とやや威圧感のある表情を見せるアイスクリーム店の店主。

ここまでそれぞれのシチュエーションを表現できるのは、やはり無印良品のデザインの秀逸さによるところだろう。今後の新作も楽しみだ。

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