おたくダマシイ全開の『ヒッタイトに魅せられて』
『ヒッタイトに魅せられて』(著者・大村幸弘&篠原千絵)を読んだ。
相互フォローしている麻鳥asatoriさんが以前書かれた紹介記事を読んで、ぜひ読みたいと思っていた1冊だ↓。
著者のひとり、大村幸弘さんはトルコのアナトリア考古学研究所長の考古学者。若い頃にトルコに渡り、長年さまざまな発掘調査に携わってこられた日本におけるトルコ古代遺跡研究の第一人者だ。2019年には世界最古級の鉄(人工鉄)を発見したことで話題になった。
一方の篠原千絵さんは、ヒッタイトを舞台にした『天は赤い河のほとり』という作品で小学館漫画賞を受賞された著名な漫画家。
以前妻がこの漫画を読んでいて、そのとき私も1冊借りたのだが、少女漫画を読み慣れていないせいか、ちょっとついていけなかった記憶が…。
本書の構成自体は、漫画家の篠原さん(素人)が考古学者の大村さん(プロ)に質問するという、よくある内容なのだが――、
読み始めてすぐに気づくのは、会話の中にカマン・カレホユック遺跡とか、ミタンニとか、オルトスタットとか、シュッピルリウマ一世とか、タワナンナとか、初めて耳にする単語が随所に散りばめられていることである。
恥ずかしながらひとつも知らなかった!
では難解な本かといえば、さにあらず。
ヒッタイトの獅子門が稚拙すぎて「あれは猫です(笑)」という話や、トルコのハチミツや水牛のヨーグルトが抜群においしい話など、ユルくて楽しい話も多くて飽きさせない。
さらに現地にわざわざ日本庭園(三笠宮記念庭園)を造った話や、最初は「日本人は2、3年続けばいいほうだ」と小馬鹿にしていたヨーロッパの学者たちが、手のひら返しをするまでになったりとか、日本人として胸のすく話もあって、思わず「頑張ってください!」と応援したくなる内容だ。
個人的には、6章の古代の製鉄に関するくだりが非常に興味深かった(これ以上のネタバレは自粛します)。
この《古代史超おたく漫画家 vs. アナトリア考古学の巨人》の真剣勝負の一冊、過去に『天は赤い河のほとり』を読まれた方はもちろん、古代製鉄のルーツに関心のある方にも(かなりいい加減なくくりですが…)、ぜひ一読をおすすめしたい。
★見出しの画像は、yellowseppiさんのトルコ・イスタンブールの風景写真を使わせていただきました。ありがとうございます。
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