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知的財産関係の権利侵害の警告をするときどうしたらよいか

自社が有している知的財産権を侵害している企業を発見した場合、どのように対応すべきか、社内体制が十分に整っていない企業は悩まれるかと存じます。

そこで、今回は、侵害品をみつけ、権利侵害の警告を送ろうと思った際にどうしたらよいか、どのようなことを考えて行動すべきか、私が思うところを簡単にお伝えします。

1 顧問弁護士にまずは相談

顧問弁護士がいるのであれば、まずは気軽に相談しましょう。
顧問契約を締結しているメリットとしては、「すぐに信頼できる弁護士に連絡を取ることができる」ことであると思いますので、連絡をすべきです。

顧問弁護士がどのように対応すべきなのかアドバイスをされるでしょうし、専門外ということであれば、適任者を紹介してくださるでしょう。

2 適任の弁護士を探す

顧問弁護士がいなかったり、知的財産権の侵害関係について明るい弁護士が知り合いにいない場合、どのように弁護士を探せばよいでしょうか。

まずは、自社が出願を依頼した弁理士がいれば、その弁理士に紹介してもらうとよいでしょう。弁理士は知的財産関係に明るい弁護士と知り合いであることは多いかと思います。
また、友人知人で連絡を取りやすい弁護士がいれば、その弁護士に紹介してもらうということも考えられます。

それでも難しい場合、ネットで探すことになると思いますが、多くの人がヒットしてしまい、絞り込めないということもあろうかと思います。
そのときは、弁護士知財ネットの相談窓口で、弁護士を紹介してもらうとよいでしょう。

3 弁護士に依頼せず自社で対応する場合

弁護士費用を抑えたい、自社で対応可能等考えて、弁護士に依頼しないケースもあるかと思います。

個別の事案で検討しなければいけないことは多々あるのですが、相談を受ける中で、基本的なところでよくお話をすることがあるポイントをお伝えします。

(1) 送り先、文面の検討

ひとたび警告を送れば、対立関係が生じます。
後述する通り、相手から反論・攻撃を受けることが考えられ、取引関係・ビジネスにも思わぬ影響があるかもしれません。
また、送り先を考えずに送ると、不正競争防止法2条1項21号の問題が生じ、競業他社から警告を受ける可能性があります。

二十一 競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為

例えば、A社が、競業であるメーカーB社が製造する製品Xが、A社の特許権を侵害していると考え、そのXをB社から購入しているC社に対し、「B社が製造する製品Xは、当社の特許権を侵害しているので、取引しないことを求める。今後は、当社から購入されたい。」と警告した場合において、後に、B社がA社の特許権を侵害していないことが判明した場合です。
こういったケースでは、B社に直接警告をすることが望ましいです。

(2) 落としどころの検討

ご相談の中には、最終的な落としどころを決めていらっしゃらないケースもございます。
しかしながら、送る文面の内容に大きく影響するのでしっかり検討しておくべきです。

相手が止めてくれればそれでよしとするのか、損害が発生している以上お金をきちんと回収しなければいけないと考えるのか、既に出ている商品について猶予期間を設け売り切りを認めるのか、あるいは、ライセンス料を求めるのか、刑事罰まで求めるのか様々です。
そういった場合に、相手方の心理的な影響を踏まえ、どこまで記載するか、検討する必要があります(例えば、差止だけできればよいと考えていても、損害賠償も併せて請求しておく等)。

また、相手が回答しなかった場合、相手が争ってきて膠着状態となった場合、訴訟までするのか、訴訟までは避けたい場合は譲歩できる部分はどこまでなのか等、検討してから警告書を作成すべきでしょう。

(3) 相手方からの反論や攻撃の検討

相手から様々な反論・攻撃(無効審判・訴訟等)をしかけられることがあります。
警告をした結果、相手から権利侵害を警告されれば藪蛇です。

ですので、警告を送っても想定される反論や攻撃に十分対応できるのか、そのリスクを理解したうえで警告を送るべきでしょう。

例えば、相手が保有する権利を調べたり、自社の権利が無効にされるものではないか検討しておくべきでしょう(とはいえ、すべてを調べきることはできないと思っておいた方がよろしいです。)。

自社の権利が、他社にライセンスをしている権利であった場合、その権利が無効となれば、そのライセンス契約にも影響を及ぼします。
事案、権利内容ごとに考えることも異なり、非常に難しい部分かと思います。
ですので、もしこのリスクを減らしたいのであれば、やはり弁護士や弁理士に相談し、依頼を検討することを考えたほうがよいと思います。

(4) 侵害品を購入できるのであれば購入しておく

侵害品や侵害しているサービスを購入し利用するなんて。。
と思われるかもしれませんが、(金額的に)購入できるものは購入し、実際にその物・サービスを見て検討しましょう。
警告を送る以上、できる限り検討して慎重に対応すべきです。
また、購入時のレシートを保管しておくことで、争いになった場合に、その時に販売していたことの立証ができます。
弁護士に相談する際にも、購入している場合は侵害品を示して検討してもらうべきです。

4 結び

どの案件でもある程度共通する、知的財産関係の警告をする場合に考えてほしいポイントをまとめました。

個別具体的な事案においては、様々な事情が絡むので各々考える必要があります。
知財関係に人的リソースを十分にかけられない場合、そういったケースを自社で考えることは難しいように思われます。

そうすると、結局のところ、日ごろから、知的財産関係に明るい弁護士と連絡を取ることができる関係性を築いておくことがベターでしょう。他の事も相談して会社の事情にも精通してもらって信頼関係を築いておくのであれば、顧問契約がベストだと思います。

もし、私や私の事務所に相談してみたい、と思われた企業のご担当者がいらっしゃいましたら、下記にある弊所のお問い合わせページから、お気軽にお声掛けください。

弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
所長 弁護士 弁理士 西脇 怜史(第二東京弁護士会所属)
(お問い合わせページ https://nipo.gr.jp/contactus-2/)


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