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音楽の聴き方を広げるブックとサイトのリスト ーー知らない世界を広げるために


初めに 音楽は必ずしも自己表現ではない ――坂本龍一と米津玄師の言葉から


今回は音楽についてのちょっとしたエッセイである。

4カ月ほど前に緑仙のアルバム『パラグラム』についてnoteを書いた。そこでは、ベーシストのミートたけしさんの言葉を借りて、音楽における「ストーリー」を描くことの大事さについて書いた。
しかし、ここ最近、知り合いからDTMに誘われたりカラオケが極まってきた中で感じたのが、音楽家の苦しみである。

おそらく、音楽家の中には人の世界が苦手で、綺麗な音だけで出来た世界にあこがれた人も少なくないだろう。ミートさんが言っているのは、プロとして音楽をやる場合、観客の人を考えるための心得に近い。
ポピュラー音楽の場合、音楽を聴く人の耳はプロとは限らない。そこにはひとつ、説明書きとしてストーリーが必要になる。
では、音楽を音楽として楽しむときに、まずは何が必要だろう。

昨年亡くなった坂本龍一は上記の東京大学講義の中にもあるように、もともと「自己表現ではない」音楽を志向していることを言明されていた。さらに、歌や音楽をあくまで物理現象として考え、自分ではないものを探しているという。
あるいは、米津玄師は自らの音楽は、これまで作られてきた音楽の「型」を自分はなぞっていることをハッキリと掲げ、『BOOTLEG』というアルバムを作った。BOOTLEGとは海賊版という意味であり、自分は何かの偽物であることをハッキリ肯定的にとらえている。

坂本教授と米津玄師は共通して、
①多くの音楽の系譜や型を知ることの大事さ
②自分自身を表現するのではない音楽の存在
を繰り返し説いている。
それは、知識でマウントを取るためではなく、知らない景色に積極的に触れて、新しい自分を見つけるために大事だからであろう。


前提 音楽史や音楽知識は必須ではない。ただし・・・ ――音楽理論は「言葉」である

一方で、音楽のインタビューを見ると、実は音楽理論や音楽知識がなくて音楽をつくれたという人は少なくない。例えば菅原圭さんは、音楽理論も何も知らないところからすでに曲を作っていたという。さらに2011年に夭折した音楽家レイ・ハラカミは、ローランド・SCシリーズの音源しか使わずに後世に残る音楽を作り続けていた。
これらの話を聞くと、米津玄師や坂本龍一のように多くの音楽を聴き、多彩な音源を知ること、あるいは音楽理論を深く掘る以外の道があるのは間違いないことだろう。
音楽史や音楽知識は困ったときの杖であって答えそのものではない

しかし、これらの素晴らしいミュージシャンたちに共通しているのは、自らの音源や周りの音一音一音をよく聞き、それらの自分なりの言葉で解釈していたことである。そして、繰り返し音を聞いて実験をした結果が、むしろ音楽の理論に新しい風を吹かせることがある。

ここで音楽理論が必要かどうかについての最良の例を見てみよう。
ビートルズだ。


「ビートルズは音楽理論を知らなかった、だから音楽理論を知る必要はない」という言葉はよく聞かれる言葉である。そこで、ビートルズや有名なポピュラー音楽の理論を分析するチャンネルの「David Bennett Piano」さんは、ビートルズのありとあらゆるインタビューを探し、彼らがどこまで音楽理論に精通していたかを調査した。
結果として、ビートルズは「ある程度の音楽理論は知っていた」が、楽譜を読むような必ずしも演奏に必要な要素は習得していなかった。あるいは、プロデューサーで音楽理論に詳しいジョージマーティン氏が、ビートルズのメンバーが言いたいことを理論でコミュニケーションができるように翻訳していることが多かったのだという。

こうした分析から、David Bennettさんは音楽理論を「音楽をよりもっとよく見るための道具」であり説明であると結論付けた。そして、ビートルズが音をよく聞くことで音楽理論にのっとった(あるいは音楽理論を乗り越えた)音楽を作れたように、音楽理論の存在が創造的に音楽を作る邪魔になっていなかったことを強く強調した。

音楽理論は、これまでの人々が「音をよく聞いて」考えた共通言語の塊である。そして、ビートルズも音楽をよく聞いて考えた。
どちらも根本は、音をよく聞いて、その洞察を深めていたことである。
ことはシンプルである。


今回は、まず、音楽理論として信頼できるリソースについてまとめてきた。
最近私はDTMをやり始めたので、これらのリソースを触りながら、何かができたらいいなと考えている。




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