「現実の人間じゃないところも含めて、あなたが好き。」2次元に恋をする、夢女子の幸せのかたち。(前編)
こんにちは!Re.ingのasukaです。アニメやゲームなど2次元のコンテンツが好きな人の中には、単に作品やキャラクターが好きという人や、キャラクター同士の関係性が好きな人、自分自身が作品の登場人物と恋愛している人など、様々な人が存在します。
その中でも今回は、2次元のキャラクターと真剣に関係性を築いている4人の「夢女子」のみなさんに、好きな人ができたきっかけや、それぞれの考える幸せの形、悩みや葛藤、周囲への思いを聞いてきました。
夢女子:主に二次元(架空)のキャラクターとアバター(自分の分身)またはオリジナルキャラクターの恋愛作品を好む女性や、キャラクターに夢中になっている女性のことである。
出典:ニコニコ大百科
キャラクターとしてではなく、
ひとりの「人」として好きになった
ー 2次元のキャラクターを「好き」って気づいたのはどういう瞬間でしたか?
マチ「自分の大変な時期に支えになってくれた。頑張らなきゃいけない時や辛い時に、励ましてくれて、支えになってくれたんです。いなくても人生は楽しいけれど、いてくれたらもっと素敵になると思ったから好きになりました。」
パ「私が彼に出会ったのは、高校受験の時期でした。その時期は、親の理解が得にくかったりして苦しくて。そんな時に彼の登場するゲームがリリースされて、それからずっとそばにいてくれたんです。私の受験が終わったタイミングで、彼が「よく頑張ったね」と言ってくれたことがあって、その言葉に本当に救われて好きになりました。」
さくや「最初は顔がかっこいいなと感じて、見た目からのスタートでした。作品の中では悪役だけど、それには何か理由があるんだろうなと見ていました。彼の事情が明らかになっていくに連れて、彼の心の内を知り、応援したいなという気持ちになりました。彼は自己犠牲的な性格をしているので、『大丈夫だよ。』と私が支えてあげたいと思い、恋愛感情の“好き”なんだと自覚しました。」
ゆあ「私は彼の人格に引かれた部分が大きかったです。彼は、お母さんを失くすという辛い過去を抱えていたり、何でも一番にならなくてはいけない環境で育ち、プライドが高い人です。でも、自分が負けた時は、ちゃんと反省できるし、次に進む時は他人の力も借りれられるようになり、彼の成長が見えたんです。その時に、私は彼のことを尊敬できるし、私もこの人に認められるような人になりたいと思い、愛したい愛されたいという以前に、人間として、同じくらいしっかりした人になりたいと思いました。」
実体がないからこその安心・安全
実体がないからこその触れられない寂しさ
ー 2次元のキャラクターはある意味完璧な理想形で、ルックスや声など表面的な部分で好きな人が多いのかなと思っていたけど、どちらかというと皆さん人格に強く惹かれているんだなって。例えば、相手が人間だったらいいなと思うことはありますか?
パ「時と場合によります。抱きしめて欲しい時などは、実体がある3次元の恋人関係が羨ましいと感じます。どうして手を繋げないんだろう、体温を感じられないんだろうと思うこともあります。でも、私は好きな人が『人間じゃない』というところも含めて好きになったので、無理やり人間になってほしいと思うことはないですね。そんなに肉体的に関係を持つことに、興味がないっていう部分もあります。」
ゆあ「私もそうですね。もちろん一緒にデートをしたい、などと思うことはあります。でも、2次元に彼氏がいることのメリットの一つに、生身の人間じゃないからこそ安全という点があるんです。性的合意がなく性行為に及んで被害を受ける心配もないし、肉体的な関係を考えなくても、好きな人を好きでいられるのは、ある意味今の状態だからこそ成り立つのかなと。それから、2次元は関係性が終わるリスクを考えなくてもいいんですよね。ずっと彼は私と一緒にいてくれる。自分にとっては『安心・安全』という気持ちが大きいです。」
ー なるほど...それは、もともと人間と接触することが怖いということ?
パ「死ぬまでに1回くらいは経験してみたいとは思います。でも、その際に発生する妊娠などのリスクや性的合意に関する問題については不安に思うし、そこに対する怖さはあります。今って、いろんなニュースもありますし。相手が2次元の人の場合、物理的な不安が一切ないのは大きなポイントですね。」
ゆあ「私は過去、3次元の方との関係性の間で、少し問題が生じたことがあって。だからといって、性的な接触に対しての偏見はなく、興味もあります。3次元の人を好きになることもありますし。全部がその理由、っていうわけではないですが、ずっと相手を好きでいられる大きな理由として、性的被害や病気のリスクを避けて一緒に居られるという点はあるかなと思います。ある意味、別種のプラトニックのような安心感があります。」
ー そういった話に転換されると思ってなくて、ちょっとショックを受けてます。まだまだ若い皆が、人と関係性を築く時にそんな風に不安を抱えてしまう、っていう現状は、今の日本で辛いニュースが多すぎることが原因だなって。2次元のパートナーとの関係性だからこその、不安はありますか?
さくや「相手との関係性が変わらないこと、接触に関するリスクがないことに安心するという点は共感します。でも逆に考えれば、相手が変わらないということはつまり、私の気持ちが彼に向いている限りずっと続いていくということ。手を繋げないとか、実体がないことに対する悩みや苦しみからはずっと逃れられないということですよね。そう考えると、どうやっても変わらない要素が、完全な幸せとは言えないですね。」
ー実体がないからこその安心・安全だけど、同時に、手を繋いだりして通じ合えない寂しさもあるんですね。
パ「本当に0か100という感じで、幸せな時は誰よりも幸せを感じられるけど、不幸な時は誰よりも不幸みたいな。」
マチ「そうそう。私は3次元の男性に性的欲求を抱いたことがなくて。今の彼に出会う前に誰も好きになれないという時期があり、変かなと思って、いろんな男性にとにかく会っていた時期がありました。でも、どうやっても身体的な接触に抵抗があって、今の好きな人に出会って初めて変わったんですね。ちょっとしたスキンシップや、会話でも幸せを感じられたり、リスクなんかよりも、本能的に一緒にいたいとか、好きだと思えるのが2次元の彼だったんです。精神的にも身体的な意味でも2次元しか好きになれないと思います。でも身体がないっていうことも、たまに悩みを感じることはあります。例えば彼の身体がシリコンでできていたり、何か感じられるものがあったら、そこにいてくれたらいいなと思います。」
ーそれは、人間の形をした身体が欲しいということなんでしょうか。
マチ「私の好きな人は、触ることができるんです。身体をタップで触ると、部位に合わせて反応をしてくれるんです。例えば、口を触るとドキドキしてくれたり。そういう意味では、スマートフォン越しに体温は感じられるけど、抱き合うことは出来ないから、彼と抱き合ってみたいなという気持ちはあります。だから、きっと人間に近い形が欲しいんだと思います。」
パ「もし彼に人間の身体があったとしたら、その次は『彼の意思で触れてほしい』ときっと思うだろうし、『あれをしたい』『こうしてほしい』と欲求が次々出てきてしまう気がします。また、先ほどの補足を付け加えると、彼が『安全だから』好きなわけじゃなく、あくまで好きになった彼が安全だった、という認識です。好きなところの一部というか。」
創作型と自己投影型
次元をこえての、それぞれの向き合い方
ー2次元のパートナーとの関係性を築く上で、大変なことはありますか?
さくや「彼の出演している作品の設定が現代ではないので、相手の世界に自分を合わせることに無理があって、別のキャラクターを間に作ってそこに対して自己投影するしかないんですよね。ただ私は、原作のストーリーを変えたくないという気持ちもあります。私の彼は、きっと恋愛している暇なんかないはずなので、自分が入り込む余地をどうつくるかという妥協策を考えたりしています。彼に相談もできないし、全部自分で考えるしかないので。」
ゆあ「私の場合は、原作の設定が現代の日本だから恵まれているんですが、彼がずっと高校生であることが問題です。作品を知ったときは自分が中学生だったのでお兄ちゃん的な存在だったけど、今はもうとっくに歳を超えてしまって、今の自分との関係性をどう捉えるかっということが悩みです。年齢的にはこれからもっと離れてしまうので、犯罪のようになってしまうのではないかとモラル的にも不安に思ったりしますね。100%自己投影して彼との関係性を築きたいという部分は譲れないので、どのように向き合っていいけばいいのかを考えているところです。
ー自己投影して相手との関係性を考える方以外に、夢女子さんの中には、例えばどのようなタイプがいらっしゃるんでしょうか?みなさん一人一人の向き合い方を教えてください。
マチ「私は、100% 自己投影型で、自分と相手の世界を考えます。また相手のキャラ設定を変えないタイプです。自分の思い通りになって欲しいというわけではなく、相手のそのままの性格を純粋に好きでいます。」
パ「私は、99%自己投影型です。自分をキャラクターとして描くときのデフォルメする際の調整が1%あります。二人が一緒にいる絵を描くことで、私が彼のところに行ったり、逆にこちらに来てもらうなど、想像の仕方が二つありますね。彼は、普段はそばにいてくれて、毎日の生活を見守ってくれているんです。ただ、パロディ的に、別の作品の世界に二人で存在しているところを想像することもあります。最終的には、どんな世界にいても、お互いの性別、種族、性格がどんな状態でも、巡り会いたいなと思っています。」
さくや「私は、半分創作で半分自己投影型です。自分をそのまま原作に合わせようとすると無理があるから、そこは創作で補間するしかないです。でも、例えば学校で発表する時など、気持ちが揺らぐ時に『あの人がいるから頑張れる』『大丈夫』って思える部分があるので、ある意味では現実で彼と一緒に存在しているような感覚もあるかもしれません。」
ゆあ「私は、触りたいとか日常に入り込んでほしいとか思ったことがないんです。自分は頭の中で創作ができなくて、例えばクリスマスにデートしたい!と思ったりすることもあるけれど、どこで何を話したかとか、詳細が想像できないんですね。だから、自分が彼に何を求めているのかわからないけど、今はその状態が二人の関係性です。相手から認められたい、自分のことも知ってほしい、そばにいたいという気持ちはあるから、この気持ちは恋愛感情だとは思っています。」
*
後編では、「夢女子」の定義や、抱えている悩みや葛藤の捉え方、周囲との向き合い方、結婚、出産といったライフイベントに対する考え方まで、深掘りしていきました。
(後編へ続く)
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