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みなさまのたなごころ撰集

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これは私だけの、と云いながら、その宝箱とやらをどうしても人の目前でぱっと開けて見せたくなるというのは、どうやら生来人間に根を張っている欲求らしい。たなごころ撰集だなんて、それっぽ…
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2019年6月の記事一覧

【掌編小説】ヒーロー

【掌編小説】ヒーロー

公園のしげみの裏に座りこんで、だんごむしをころして遊んでいた。
それを父親に見つかったとき、彼は、
「かみさまのところへ返してあげたんだ。えらいね。」
とぼくの頭をなでて微笑んでくれた。
「ぼく、えらいの?」
「そうだ、きみはヒーローだ。」
彼は、ぼくが小学生になるころには、もう家からいなくなっていた。

      ***

ある日、おなじ行為を目にした母親は、こわい顔をしてぼくに怒った。
「そ

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